連載
#130 ○○の世論
「原発再稼働」世論に変化、反対が半数割り込む 30代以下はさらに…
チェルノブイリ知っている世代も〝容認〟に
「今停止している原子力発電所の運転を再開することに、賛成ですか。反対ですか」。東京電力福島第一原発事故から11年になるのを前に、朝日新聞社は2月19、20日、全国世論調査で原発再稼働への賛否を質問しました。賛成は38%(21年2月調査は32%)、反対は47%(同53%)でした。16年7月から調査方法を変更しており、単純には比べられませんが、同じ質問をしてきた13年6月の調査以降、初めて反対が半数を割り込みました。最近の5回の調査を中心に、どのような変化があったのか詳しく見てみました。(朝日新聞記者・四登敬)
再稼働に反対と答えた人の割合が最も多かったのは18年2月の調査で、61%です。
この調査から今回までの全体結果をみると、反対は18年が61%で、19年、20年は共に56%、21年は53%でした。徐々に反対の割合は減っています。ちなみに17年以前の調査では、反対が53~59%の間を行ったり来たりしていました。
次に、賛成です。18年は27%で、19年は32%となりますが、翌20年は29%に下がり、21年は32%に戻っていました。17年以前の調査では、賛成が25%まで落ちることもありましたが、基本的に3割前後でした。
このように、全体としては反対が賛成を上回るものの、18年以降は賛否の差が縮まる傾向にあります。
次に、男女別の変化を見てみます。
再稼働に対しては、女性の方が常に男性より厳しい目を向けています。同じ質問をしたすべての調査で、再稼働に反対する割合は、女性が男性を上回っていました。逆に、賛成は毎回、男性が女性を上回ります。
男性は、20年2月の調査は賛成38%、反対52%で、同じ質問をした13年6月の調査からこの年までは、毎回、反対が賛成を上回っていました。しかし、21年は賛成45%、反対44%でほぼ並び、今回は賛成が48%で、反対の42%を上回りました。
女性は、今回までのすべての調査で反対が賛成を上回っています。ですが、18年の調査から今回まで5回の調査を見てみると、賛成は18年の17%から今回は28%に増え、反対は18年の70%から今回は52%に減っています。
年代別では、2011年の福島第一原発事故のほか、1986年のチェルノブイリ原発事故が起きた時のことを覚えている人も多いと思われる、50代と60代の変化が目を引きます。
どちらの世代も、再稼働に反対の人の割合が賛成を上回っていますが、18年と今回の調査を比べると、50代は反対が63%から46%に減り、賛成は27%から41%に増えました。60代は反対が68%から50%に、賛成は20%から38%になりました。
賛成が反対を上回った世代もあります。
18~29歳は、18年は賛成34%、反対60%でしたが、19年には賛成51%、反対41%になりました。20年は賛成、反対とも44%で並び、その後は賛成が反対を上回っています。
30代も、20年までは反対が賛成を上回っていましたが、21年には賛成と反対が43%で並び、今回の調査では賛成44%、反対40%になりました。
今回の調査では、食料品や光熱費などの値段が上がったことで、生活への負担を感じるかどうかも質問しました。
この質問への回答と再稼働の賛否の回答を重ね合わせると、負担を「感じる」層で再稼働に反対と答えた人は49%で、賛成の37%を上回りました。
光熱費の値上げによる負担を感じる人の間でも、原発の再稼働に反対する人は賛成する人より多いと言えます。生活への負担感について「それほどでもない」と答えた層でも、再稼働賛成は41%、反対44%です。
ただ、全体として再稼働の賛否の差は狭まる傾向にあるほか、ロシアのウクライナ侵攻の影響も加わって原油価格の高騰が長引けば、再稼働の意識に影響を与える可能性もあります。
原発の建設から廃炉までのコストや使用済み核燃料の保管、福島第一原発のような事故発生のリスクと、目の前の様々な値上げを見比べた時、原子力発電所の再稼働はトータルとして高くつくと考えるのか、安いと感じるのか。有権者の意識が今後、どのように推移するのか注目していきたいと思います。
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