お金と仕事
国際ロマンス詐欺で逆にもうかった…定期解約しかけた危なすぎるLINE
連絡断つとアプリから通知「グルだ」
「国際ロマンス詐欺」に引っかかるも、逆に1万5千円もうかってしまった。マッチングアプリで出会ってから5日後、投資話を持ちかけてきたジェイソン。まんまと振り込まされたものの、逆に利益が出た。次に来たLINEで要求されたのは「50万円」。そこが運命の分かれ道だった。(ライター・千絵ノムラ)
韓流ドラマ俳優似のジェイソンは、イギリス育ちで母親が日本人。しかも今は埼玉に一人暮らししているという。日本語が不慣れでも外国にルーツがあるならしょうがない。そうやって信じ込んだ私に彼が誘ってきたのが外国為替投資だった。
聞いたことのないアプリを言われるがままスマホにインストール。金融系の会社を経営しているという姉のデータに基づき、最初に振り込んだのは5万円だった。結果、15238円のもうけが出た。かかった時間は1時間。ジェイソン(のお姉さん)すごい。
ところが、次に来たのが「50万円用意できる?」だった。まだ会ってもいない2人。しきりに勧めてくる強引さに、「これは詐欺かもしれない」という思惑が生まれはじめていた。さっそくGoogleで“マッチングアプリ・詐欺・投資”と検索。すると“国際ロマンス詐欺”という言葉がヒットした。
「国際ロマンス詐欺!? なんだこのうさんくさい甘い言葉は」
初めて聞くその用語を必死になって検索すると、大体の概要が分かってくる。
マッチングアプリもしくはSNSのメッセージで知り合った異性とやりとりだけで恋仲になり、会ってもないのに投資の話を持ちかけられお金をだましとられる。「まさにこれじゃん!」私は国際ロマンス詐欺にあっていたのだ。
しかし頭で理解したものの心は追いつかなく、まだ信じたくないという思いから、同じ状況の人をTwitterで探す。被害にあったという女性を見つけ、DMを送るとすぐに返事が来た。
女性からはいくつかの手口を教えてもらった。具体的には、最初の2回くらいまではこちらに実際に儲けさせ、3回目からは高額を要求してくること。LINEのやりとりはフォーマットがあること。写真はどこかの俳優かモデルのものを勝手に使っていること。
私の状況を説明すると、確実に国際ロマンス詐欺だという。ただ私は実際にお金を損失していない。しかし彼女はお金をだましとられたうえ、エッチな画像なども送りあい、何よりもショックなことは相当入れ込んでいたので心のダメージが半端ないという。
彼女は警察署に被害届を出したが、お金が戻る可能性はほぼないらしい。私は被害はないのだが、運転免許証の写真を送ってしまっているので住所が割れている。銀行口座も教えている。
彼女に国際ロマンス詐欺緊急窓口のある弁護士事務所を教えてもらい、さっそく無料の電話相談をしてみる。一連の流れを伝えると、ほぼほぼ心配はないとのこと。免許証を悪用すると足がつくので、そのリスクを負うことまではしないだろうし、家まで来ることはまずない。
弁護士からは、今後、どんな流れになるのか興味があるなら続けてみたらと言われた。
実はこの電話まで、詐欺と気づいてから1日くらいあったのだが、その間もジェイソンは私に情熱的なLINEを送ってきていた。2回目の投資を見送ることになったあと、仕事に行ってくるというLINEを最後に私は返していなかったので、返事がないことを心配するLINEもたびたび来ていたが、もう返していなかった。
確かにこのまま相手がどう出るか、興味本位でLINEを続けてみるのもありだとは思った。しかしかなりの嫌悪感が生まれていたので、無視し続けることに決めた。
もちろんその後もジェイソンから心配のLINEが来た。しかし断固として無視し続けていると、驚くことにジェイソンの指定するドル資産収益アプリからLINEがきたのだ!
「こんにちは、尊敬するID26239投資ユーザー! すみません、こちらはあなたの投資ユーザーの友達ですか?」
ジェイソンのLINEプロフィル写真とともに来たこのメッセージ。
「グルだ」
ジェイソンが詐欺だと分かった時から薄々気づいていたが、もうこれは決定打である。投資アプリからわざわざこんなLINEが来るわけがない。この投資アプリもジェイソンと仲間が作ったものなのだ。怪しすぎる。
それからはもうジェイソンからもアプリからも何のLINEも来なかった。連絡がとれなくなった私に時間を割くよりも、新たなカモを探す方が大事なのだろう。ちなみに弁護士さんいわく、私のようにもうけて終わった人もたくさんいるという。
以上、私の体験談は終わるのだが、もしあの時50万円が手元にあって暇だったら投資していたのでは、と思うと身の毛がよだつ。しかも定期預金解約いつ行けるかな、なんてこともちょっと考えてしまったのだ。恐ろしい。
国際ロマンス詐欺は200万や300万の被害にあった人もいるし、もっと大金をだまし取られたケースもある。ちなみにTwitterで知り合った女性は3万円ほどだった。
私がこの一連で思ったのは、事前に国際ロマンス詐欺を知っていたら、もっと違っていただろうということ。少しでも知識があったら、せめて「国際ロマンス詐欺」という名前さえ知っていたら予防はできたはずである。
これを踏まえ、マッチングアプリの運営会社へ注意喚起だけでもして欲しいと問い合わせをしたのだが、定型文のメールが返ってきただけだった。
私が詐欺にあった12月上旬は国際ロマンス詐欺がとても増えていたらしい。クリスマスに会おうという甘い言葉が、いかにも効果を発揮しそうだ。あるいは、詐欺師の方もクリスマスもしくは年末年始までにお金が欲しかったのかもしれない。
その後もマッチングアプリで国際ロマンス詐欺と思われるアカウントをちらほら見つけた。いずれも経歴がハイスペックなうえ、日本語が不慣れで、写真もどこか盗用している感がある。
私は幸いにも1度目の投資だけで損にはならず、逆に得をしたが、被害者の多くは傷ついた上にお金まで失っている。彼ら彼女らは、ただ人を愛し一緒に幸せになろうとしただけなのに。
人の好意や善意を踏みにじる行為は実に腹立たしい。一刻も早く、多くの人に国際ロマンス詐欺の存在を知ってもらい、被害が出ないことを願うとともに、この世から国際ロマンス詐欺を抹消したい。
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