お金と仕事
「コロナだから会えない」ジェイソン信じた私…実録国際ロマンス詐欺
生還者が教える〝こんな出会いは要注意〟
「私は詐欺にはひっかからない」。きっと誰もがそう言うと思う。私もそう思ってた。でもまんまと引っかかってしまったのである。そう、あれだ。「国際ロマンス詐欺」。実際にお金を振り込むも、すんでのところで引き返すことができた。そんな貴重な経験から得た〝こんな出会いは要注意〟というポイントを紹介する。(ライター・千絵ノムラ)
事の発端はマッチングアプリである男性と出会ったことである。
某メンタリストが運営しているそのアプリを登録してかれこれ2年。きっかけは「婚活頑張るぞ!」という強い思いからではなく、眠れない夜にTwitterの広告で幾度となく流れてきたので、「そこまで言うなら登録すればいいんでしょ!」となぜか半ギレではじめた。
以降、女性は登録が無料ということもあり、なんだかんだでハマったり放置したり細々と続けている。
2年もあればなにかとドラマが生まれては消えていくが、今回は痴情のもつれなどというやつではない。単純に犯罪である。
それは昨年の12月5日。私はこの頃、ある野望のためにせっせとマッチングアプリに精を出していた。それは“500いいね!がついた人気会員になる!”こと。ゲーム感覚で臨んでいたのだが、そんな時に出会ったのがジェイソン(Jason)だった。
いつものように足あとをつけてくれた人たちをスクロールしていると、ひとり外国人っぽい人がいる。プロフィール画像は韓流ドラマの俳優のよう。「珍しいな」と経歴を見てみると、これがめちゃめちゃハイスペック。
「こんな人が私に“いいね”を押すわけはない」
そう思いながらスルーした。基本、私のモットーは自分から“いいね”はしない。自ら“いいね”をしてマッチングした確率がものすごい低いからだ。これは持論だが、マッチングアプリを使う男性には狩猟本能がある(と思っている)。わざわざ自分のところに来る相手よりも、ちょっと存在をちらつかせてくれる人間を自ら狩りに行きたいのだ。だから私は足あとをつけるのみにする。そこで追ってくれば「やった! 食いついた!」という感じなのだ。
ピコン!
「いいね!がどどきました!どんな相手か見てみましょう」
アプリから“いいね”通知が送られてきた。「さーてどんな人かな」とのぞいてみるとジェイソンだった。
「まぢか!」
まさかの大物に私はおののきながらも即座に“ありがとう”ボタンを押した。さて、ここからがこの物語のはじまりである。
なぜ、プロフィル部分をスクショしなかったのか今でも悔やまれるが、とりあえずジェイソンとの会話がはじまった。最初はアプリ内のメッセージ機能で会話をしていたが、すぐさまLINEへの移行を提案され、私もそれにのった。
他の男性たちはQRコードのスクショを送ってくれるのに、ジェイソンはIDを聞いてきた。
またLINEやりとりで、1時間くらい返事を返さなかっただけで「どうして黙ったの?」というのもおかしいと思えるが、当時の私は「せっかちな人なのかな」くらいにしか思わなかった。
すぐさま自分の職業を伝えてくるジェイソン。調べてみるとシンガポールの不動産会社で、2年前に赤坂にホテルを作り日本進出している。ここで少し信頼してしまった感はある。
ジェイソンはイギリス生まれイギリス育ちだが、母親が日本人でしかも今は埼玉に一人暮らししていることから、希望して日本に転勤となった。
日本にゆかりがあるという安心感。日本にゆかりがあるけれどイギリス育ちのため、日本語が少しおかしい。けれど外国育ちという文化の違いから、少しの違和感など許してしまうし、許してあげたくなる。
「寄り添ってあげたい!」
この時点ですでに私はジェイソンの魔の手に落ちていた。
私自身は実際に外国人とつきあったことがないのだが、外国人とつきあったことがある日本人男性とおつきあいしたことがある。当時は情熱的なアプローチにただただたじろいだ。「Loveyou―!」と力いっぱいハグしてきたり、いろんなところでキスしてくる。個人的な体験からの持論だが「これが鎖国をしていなかった国の愛情表現か」と戸惑いながらも、悪い気はしなかった。
そんなわけでジェイソンの異常なまでの急接近にも、なんとなく「国が違うせいからかな」「日本に来てコロナで友達もできずに寂しいのかな」などと自分で理由をつけて許してしまっていた。
どんな急接近かと言うと、会ってもないし、電話もしてないのに、すぐに恋人を気取り、結婚話が進んでいるのである。しかもけっこう具体的に。家の話、私の親の話、子供の数、私の仕事の身の振り方、などなど。「はえーな」と思いながらも、ちょっと恋愛シミレーションゲーム的なノリで楽しんでいた。
私は基本、「会うまでは信じない」と固く心に決めていたので、ジェイソンにはまず会わないとわからないと何度も言った。会って安心したかったのである。
だが、ジェイソンは職場のホテルでコロナ陽性者が出たため、外部の人と会うのが厳しいのと、ワクチンを24日に打つため、会うのはそれからともっともらしい理由を言ってきた。
そしてここでも「君なら理解してくれる!」と繰り返し言われた。当然、私は理解してあげた。
ジェイソンは逐一写真を送ってくれた。職場の近くのそば屋の写真。自分の写真。部屋の写真。車の写真。そして時々、自分の趣味である外国為替投資のスクショ写真。
毎晩のように投資でもうかった話をし、自分が金融に詳しいことを知らせてきた。
ジェイソンには早い段階で「名前ではなくdearとbabyで呼び合いたい」と提案された。私は名前で呼ばれるのが好きだったし、会ってもいないので、まだ早いと丁重にお断りしたが、この提案は幾度となく続き、ある時押し切られた。
そしてスタンプ。時間帯や、やりとりのターンによってよく使うスタンプが変わるのである。
しかし、当時の私はそんなことに気を止めず、日々、恋人気取りのメッセージを続けていた。次第に、こちらもその気になってしまうのが怖いところ。
そんな中、事件は起こったのである。
【こんな出会いは要注意リスト】
1/7枚