連載
#6 わたしの中の #健康警察
「客ごとに消毒」は必要?「おもてなしの呪縛」を考える #健康警察
【連載】わたしの中の #健康警察
新型コロナ禍のいま、「他人の健康行動」について、ついつい気になっちゃう人、増えているみたいです。「感染症をうつされないよう、身を守るのは当たり前だろ」という声も聞こえてきそうですが、「見ず知らずの他人」の行動にまでひとこと言いたくなってしまうというのは、不思議なことでもあります。医療ジャーナリストとして10年以上、取材/発信してきた私の中にもある、「他人の行動にひとこともの申したくなってしまう気持ち」。それを自分の中の #健康警察 と名づけて、考えてみることにしました。
第一回:なぜ他人の行動が気になる?クレーム対策の手袋やアクリル板の流行 生きづらい世界を作る #健康警察
第二回:なぜ若者世代は「悪者」にされるのか?カラオケ・飲み会のイメージ…でも背景には「格差」も #健康警察
第三回:ワクチン「説得」は逆効果? #健康警察 、善意の「おすすめキャンペーン」の落とし穴 カギは「共感」
第四回:「ダイエットで若返り」を目指したアラフォーの反省 #健康警察 は自分の行動すら縛るのか?
第五回:「食べ物でコロナ対策」はケシカラン? 自分の身と心を守る「おまじない」への線引きのススメ #健康警察
最近、飲食店などで見かけるようになった光景があります。お客さんが席を立った後、食器を片付けた店員さんが、アルコールで念入りにあちこちを消毒する姿です。テーブル上はもちろん、椅子の背もたれや座面まで拭く姿も。壁には「当店は、お客様の安全を第一に考えています」と貼り紙があったりして――。
新型コロナウイルス感染の経路と言えば「飛まつ感染」と「接触感染」が思い浮かびますよね。感染拡大初期に、ニュースなどでよく取り上げられていました。
飛まつ感染とは、感染した人のくしゃみなどで出る飛まつを吸い込むことによって感染が起きること。
そして接触感染とは、ウイルスを含む飛まつが机やドアノブなどの表面につき、それに触れた手で、無意識のうちに鼻や口に触るなどして感染が起きることを指します。インフルエンザやノロウイルス感染症では重要な感染経路とされています。
新型コロナウイルスの感染拡大が報じられ始めたころ、「どのくらい接触感染が起きるのか?」について注目が集まりました。当時、実験室で調べてみると、机やドアノブなどつるつるしたところの表面では3日間ほど感染させる能力を保つことができる、という結果が報告されたりもしました。
だとすると、接触感染にも警戒が必要なはず。手洗いや手指消毒、さらには不特定多数の人が触れる場所での消毒が推奨されるようになりました。
昨年の春ごろ、アルコールなど消毒剤が店頭から姿を消し、通販サイトで高値で転売される……なんて騒動が起きたことを覚えておられる方も多いかと思います。
それから1年以上が経ち、消毒用アルコールの供給は安定し、入手する上での問題は改善しました。であれば、お客さんの安全のため、お店側ができるだけの消毒をするのは当たり前にも思えます。
実際、現状の飲食店業界の感染対策ガイドライン(『外食業の事業継続のためのガイドライン』)を読むと、原則的に「お客様が入れ替わる都度、テーブル・カウンターを消毒する」ことが推奨されています。
これぞ日本の「おもてなし」の精神! こんなことも守れない店はケシカラン! 私の中の #健康警察 が、ざわ……ざわ……してきました。
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