連載
#237 #withyou ~きみとともに~
つながらない24時間SOSダイヤル、子どもの気持ちに立った支援とは?
問題は窓口の役割や運営実態が見えないこと
文科省が設置に関わる「24時間子供SOSダイヤル」がつながらない――。そんな調査結果をNPO法人3keysが公表しました。調査した担当者は「誰かを責めることが目的ではない」と言います。その上で、突きつけられたのは「子どもの気持ちに立った支援とは何か」という問いです。コロナによって子どもたちの相談が増える中、私たちに何が出来るのか、考えてみました。
文部科学省の発表によると、2020年に自殺した小中高生は479人で過去最多。特に、女子高生は前年の2倍近くにあたる138人に増えました。
相談件数も増えています。
10代のための相談窓口まとめサイト「Mex(ミークス)」(NPO法人3keys運営)のアクセス件数を参照すると、2016年度のアクセス数は約5万件でしたが、翌年は約14万件、翌々年は約29万件、2019年度には100万件を突破し、昨年度は164万件となりました。サイト開設以降、年々増加していることがわかります。
また、チャットと電話の両方を使って子どもたちの悩みに耳を傾けている「チャイルドライン」の2020年度年次報告によると、2019年度、電話の着信件数が18万件1196件(前年度は18万6363件)、オンラインチャットの対応件数が4630件(前年度は2254件)でした。「『電話で話す』ことが大人も子どもも日常から減ってきていること」などから、電話の着信数が若干減っている一方、オンラインチャットの対応件数は2倍以上に増えています。
そんな中で知ったのが、行政が設置した電話相談に「つながらない問題」。
文科省には、統一ダイヤルを設ければ子どもたちがアクセスしやすくなるという利便性だけを見ず、子どもたちがアクセスした先に、どのような相談体制が整っているのかを公表する必要があると考えます。
今回はSOSダイヤルの運営実態についての言及になりましたが、どの相談窓口にも同じことが言えると思っています。
相談窓口を運営する主体が、運営方針や相談対応の体制を公表することで、子どもたちはどの窓口なら自分の悩みを聞いてくれるか判断する材料にすることができるからです。
また、相談窓口を広く伝えるメディアも当事者として向き合わなければいけません。
いじめや自殺など、子どもたちの命に関わる報道をした場合、多くのメディアはニュースと共に相談先を紹介します。
相談先の一つにSOSダイヤルが入っていることも多くあります。
本当に子どもたちのためを思い、相談先を紹介したいのであれば、それを子どもたちが使う場面まで考える必要があるでしょう。
withnewsで2018年から続けている#withyouの末尾にも、相談先を掲載しています。
#withyouはそもそも、「悩みのある10代に相談先につながってほしい」という思いで始めた企画です。掲載している相談先はいずれも、これまで私が取材をしたことのある団体です。
「この記事を読んで、相談先につながり、すこしでも気持ちが軽くなってほしい」。そういう願いを込めてやっている企画だからこそ、掲載している相談先と顔が見える関係であることは重要だと思っています。
SOSダイヤルの実態を調査した森山さんは、子どもたちが相談窓口を頼ってきてくれること自体が「奇跡的なこと」であると強調します。
「子どもたちが相談をするということには、すごく覚悟が必要です。なにかにちょっと刺激を受けて『かけてみようかな』と思っている可能性もあります。どうにもいかなくなり、やっとかけた電話がつながらないというのはしんどすぎることではないでしょうか」
「電話がつながらなかったり、『相談の対象ではない』と言われることは、その小さな希望を踏みにじることになります」
そして、「対象や範囲など、運営側が責任を持てる範囲をわきまえて広報をしていくことが必要です。そうでなければ、そのゆがみの影響は、声を上げられない子どもたちをはじめとした弱者が受けることになります」と指摘しています。
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