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連載

#100 #父親のモヤモヤ

「名もなき家事と育児」に名前、共有したかった「圧倒的リスペクト」

梅田悟司さんが名付けた「タッパーのフタと容器を正しく組み合わせる家事」は「タッパー神経衰弱」=イラスト・ヤマサキミノリ、サンマーク出版提供
梅田悟司さんが名付けた「タッパーのフタと容器を正しく組み合わせる家事」は「タッパー神経衰弱」=イラスト・ヤマサキミノリ、サンマーク出版提供 出典: 『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

「タッパー神経衰弱」「他人の尿ぬぐい」「手料理スルー」――。名もなき家事や育児に名前を付けて出版したコピーライターの梅田悟司さん(41)は、家庭のあれこれを「見える化」するねらいがあったと話します。しんどさはもちろん、「圧倒的リスペクト」も共有したかったそうです。
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悲哀や「あるある」に名前

梅田さんは、広告代理店に勤めていた2016年11月から4カ月半、第1子が生まれたタイミングで育休を取得しました。

その経験を元に出版したのが著書『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)です。

「タッパーのフタと容器を正しく組み合わせる家事」は「タッパー神経衰弱」。

「スーパーで買い物しているとき、子どもが欲しがりそうなキャラクターの描かれた商品に気づかれないようにほかのものに注意を逸らせようとする家事」は「大げさな声かけ」。

「他人の尿ぬぐい」は、他人がつけた便器の黄ばみを掃除することで、「手料理スルー」はスーパーの総菜に加えて手作りした一品に手をつけられないことです。

本書では、家事や育児にまつわる悲哀や「あるある」に名前がつけられています。

育休に入るまで、家事とは「料理」「洗濯」「掃除」「買い物」のことだと思っていました。

でも、お風呂を掃除していても、流そうとしたら子どもの泣き声が聞こえ、対応しているうちにまた何かが発生します。そうして流すのを忘れ、お風呂が洗剤でカピカピになる、みたいなことが起きるのです。

「掃除」や「料理」といったメインの家事が手につかないのは、無限に存在する名もなき家事や育児が原因であることに気づいたのです。「解像度」が高まったのだと思います。

僕の職業はコピーライターですから、そうしたひとつひとつを言語化したいと思いました。

同時に、社会の風潮として、男性は仕事で女性は家庭みたいなところがありますよね。男性の立場で「家庭もかなり大変ですよ」と伝えることも大切だと思いました。
ロボット掃除機を動かす前に片付ける家事を「道づくり」と名付けた梅田さん=イラスト・ヤマサキミノリ、サンマーク出版提供
ロボット掃除機を動かす前に片付ける家事を「道づくり」と名付けた梅田さん=イラスト・ヤマサキミノリ、サンマーク出版提供 出典:『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)

家事や育児に「圧倒的リスペクト」

梅田さんは育休中、家事や育児の困難さを感じた一方で、「圧倒的リスペクト」を抱いたそうです。1カ月間ほどは新鮮な体験と感じたそうですが、その後は「いつまで続くんだ」という感覚に。部屋が片付いていたり、食事ができていたりすることを「奇跡」と感じるようになり、妻や家事、育児を担う人たちに対する敬意があらためて生まれたといいます。

育休明けで出社した日。会社のデスクにたどり着いたら、気絶するように眠ってしまったんです。

子どもがちゃんと息をしているのかな、という緊張感。命を預かっているという感覚。そこに家事も加わって、張り詰めていたんだと思います。

家事については、終わりが見えないのが圧倒的につらいですよね。「家事を手放そう!」というのは賛成もしますが、手放せない人もいるでしょう。だからこそ、少しでもクスッとしてほしいという思いを込めました。「タッパー神経衰弱」なんかはそうですね。

ロボット掃除機を動かす前に片付ける家事を「道づくり」と名づけました。便利さの上に新しい家事が生まれているんだ、ということも示したかったです。

子育てでは、「今日は絶対に怒らない」と固く誓った直後に叱ってしまって自己嫌悪に陥ることを「アンガーフルネス」と名づけています。

「完璧な育児なんて無理」はその通りです。ただ、やっぱり「こうありたい」といったイメージはあります。でも、実際は難しい。理想と現実の落差。僕自身は、そこにも子育てのつらさがあると思いました。

子育ては、本当にままならないです。だから、ベビーカーで子どもが寝た時って、貴重な自由時間ですよね。子どもを起こさないようにそっと前輪を浮かして段差を乗り越えることを「ぷちウィリー」と命名しました。

そうして入ったカフェで飲んだコーヒーが、人生で一番うまかったコーヒーです。
梅田悟司さん
梅田悟司さん

育休「基本賛成派」がやっかい

世の中全体では、家事や育児の負担が偏っているのが現実です。

僕は、育休を取る前、妻と家事トレーニングを行いました。それは一般的な家事でなくて、家庭なりのやり方を身につけるためです。一般的な家事と「我が家」の家事って、雲泥の差だと思います。

家事や育児をもっとシェアしようと思ったのに、やり方が違うと言われた――というケースもあると思います。「よかれと思ってやったのに」と反発するのも分かりますが、一般的なルールと、家庭のローカルルールが似て非なるものだと知っておかないとシェアは進まないと思います。

そして、根本的に大切なのは、育休の取得でしょうか。

僕の場合、妻が「育休取るよね?」と、取得前提だったことがありがたかったです。

会社には「基本賛成派」がいることもあります。「ちょうどプロジェクトが動いている」「いま君は大事な時期だから」といった具合に引き留めてくる人たちです。こうした基本賛成派のロジックを乗り越えるのは大変です。

それを考えると、まず家庭の方針を決める。その上で報告する。その順序が育休取得のためには、よいのだと思います。


『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)

リアルな声、お寄せください

「#父親のモヤモヤ」企画では、これまで仕事と家庭の両立に葛藤する男性の姿を描いてきました。子育てや家事をめぐるモヤモヤは、女性が直面した困難の「追体験」とも言える部分が大きいと、取材を通じ、あらためて考えさせられています。梅田さんの著書に、「そうそう」と共感し、「私だけじゃなかった」と思える父親も少なくないはずです。

ただ、社会全体を見渡せば、まだまだ女性に負担が偏っているのが現実です。総務省の調査では、共働き家庭でも育児に携わる時間がゼロという夫は7割を占めます。

5月9日は母の日です。この日に、終わりなき家事、ままならない子育てのひとつひとつに名前を与え、もっと光を当てませんか。よろしければ、「#家事リスペクト」「#育児リスペクト」のハッシュタグをつけてツイートしてください。

記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(dkh@asahi.com)で、朝日新聞「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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