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大阪万博の184日間 SNS投稿をポジネガ分析…関心の変化は

万博最終日に打ち上げられた花火=2025年10月13日午後6時36分、大阪市此花区の夢洲、水野義則撮影
万博最終日に打ち上げられた花火=2025年10月13日午後6時36分、大阪市此花区の夢洲、水野義則撮影 出典: 朝日新聞社

2025年4月13日から10月13日にかけて開催された大阪・関西万博。開幕当初は批判的な投稿が目立ったものの、閉幕が近づくにつれ「楽しかった」「万博が終わってしまうのは寂しい」「ミャクミャクありがとう」といった感謝の声や閉幕を惜しむ声が徐々に見られました。184日間の開催期間を通じて、人々の関心はどのように移り変わっていったのか。前半・後半に分けて、SNS上の投稿データを用いて分析しました。(朝日新聞社メディア研究開発センター・山内将吾、野田陽)

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ポジティブ・ネガティブはどのように変化した?

分析ではユーザーローカル社が提供する、Social Insightから入手できるデータをもとに、Xの万博関連の投稿を利用しました。

開幕した4月13日を開幕第1週目とし、10月13日までの全27週を対象に、投稿の中でリポストが多いものの上位1000件を抽出しました。

抽出した投稿を、OpenAI社の生成AIモデル「o3-mini」を使って、その内容をポジティブ・中立・ネガティブに分類しています。また、万博関連の投稿数も同時に集計しました。

グラフは、赤(下部)がネガティブ、青(上部)がポジティブ。黒線(折れ線)は投稿数。開幕から時間が経つほどポジティブ(青)が増えている
グラフは、赤(下部)がネガティブ、青(上部)がポジティブ。黒線(折れ線)は投稿数。開幕から時間が経つほどポジティブ(青)が増えている

投稿数は開幕直後の1週目に約460万件とピークを記録し、関心の高さがうかがえました。しかし2週目以降は急激に減少し、5月以降からは週50万~100万件程度で推移しました。

ネガティブの割合(赤色)は、開幕直後の1、2週目で50%越えでしたが、その後は徐々に低下し、7月14日以降の万博後半では20~30%台に落ち着きました。

一方、ポジティブ(青色)は開幕直後に17%弱、徐々に割合を増やし、5月25日の開幕7週目にはネガティブとほぼ同等、6月15日の10週目には逆転しました。

万博前半ではネガティブが優勢の週が多いものの後半にはポジティブ優勢の結果になりました。最後の27週では10月12日、13日と2日間の集計ですが、40%超となりました。

開幕直後に批判がピークとなった後、批判的なトーンはやや和らぎ、実際に行った人々がパビリオンなどの体験に触れ、徐々に万博を評価する声が増えていった様子がうかがえます。

Instagramではどんな投稿がされた?

次に、万博関連のInstagramの投稿を「いいね」数順に上位1,000件を抽出し、共起ネットワークで可視化してみました。

共起ネットワークとは、投稿内で頻繁に共起する単語をネットワーク図で表したものです。円の大きさは単語の出現頻度を、線の太さは単語同士のつながりの強さを示しています。

同じ色でまとまっている単語群は、似た話題や文脈で使われる傾向があることを表しています。

前半のInstagramの共起ネットワーク(期間は2025年4月13日~2025年7月13日)
前半のInstagramの共起ネットワーク(期間は2025年4月13日~2025年7月13日)

前半期のInstagramでは、大きく2つのグループに分かれました。

左側から中央の赤色グループは、「パビリオン」を中心に、「写真」「動画」「予約」「楽しみ」といった単語が集まり、実際の訪問体験や実用情報に関する投稿が中心となっています。

右側の水色グループは、「osaka」「expo」「japan」「pavilion」を中心に英語表記が目立ち、インバウンド向けの投稿や国際的な文脈での紹介が多いことがうかがえます。

後半のInstagramの共起ネットワーク(期間は2025年7月14日~2025年10月13日)
後半のInstagramの共起ネットワーク(期間は2025年7月14日~2025年10月13日)

後半期のInstagramでは、前半と比べていくつかの変化が見られました。

左側に新たに登場した紫色グループでは、「expo」を中心に「music」「live」といった単語が集まっています。

これは8月12日~16日に開催された「U-NEXT MUSIC FES "LIVE in EXPO 2025"」の影響で、音楽イベントに関する投稿が増加したことがうかがえます。

上部から中央にかけての赤色グループでは、「会場」「開催」「イベント」に加えて「最後」という単語が出現し、閉幕を意識した「駆け込み」の投稿が増えている様子が見られます。

下部から右側の水色グループでは、「パビリオン」「未来」「体験」「好き」「保存」といった単語が目立ち、万博体験を記録として残そうとする投稿が増えたことがうかがえます。

右側の黄緑色グループでは、前半に比べてマスコットキャラクター「ミャクミャク」の存在感が増しています。キャラクターへの愛着や、万博最終日に行われた「ミャクミャクドローン」に関する投稿が見られました。

Xでの関心のトピックは?

Xではどのような関心があったのでしょうか。Talk to the Cityというツールを用いて、様々な関心をクラスターに分けて可視化してみました。

Talk to the Cityとは、ブロードリスニング(広範囲の意見収集)を可能にするツールで、AIを活用して大量の投稿内容を分析し、似たテーマや意見ごとにグループ化して視覚的に表示します。

データは万博関連のXの投稿をリポスト順から2万件抽出し、企業や運営などのPR、ニュース記事などを省いた約1万2千件のデータを使用しました。可視化では、その中の代表点となる約9千件を使用しています。

前半期では主に万博全般での批判が見受けられました。

もっとも多かったのは「運営・管理の実務対応(紫色)」で、予約システムの使いにくさ、メタンガス対策への懸念などの、安全管理体制の不備といった運営面への批判が集中しました。

次に多かったのは「パビリオン施設・サービス(青色)」で、イタリア館やフランス館の展示内容への高評価がある一方、「空飛ぶクルマ」などへの失望といった声も見られました。

「来場者体験と工夫(水色)」では、キャラクター、ライブパフォーマンスへの肯定的な声と、混雑や待ち時間への不満が混在。

「政治・行政運営への不信(黄色)」では、「日本維新の会」や「吉村洋文・大阪府知事」への批判、巨額税金投入への疑問が目立ちました。

このほか「ユスリカ」の大量発生などによる「環境・安全管理のリスク(ピンク色)」、「IR(カジノ)誘致批判(緑色)」といったクラスターも形成されました。

後半期では、前半とは異なる傾向が見られました。

もっとも多かったのは「来場者による体験・感想(水色)」です。花火やライブなどのイベントや、8月13日に電車が止まって帰宅できなかったことを肯定的に受け止めた「オールナイト万博」、最終ドローンショーでのミャクミャク演出などへの感動の声が多数を占めました。

前半で最大だった運営批判から、実際の体験への評価へと関心の中心が移ったことがうかがえます。

次に多かったのは「運営管理と来場体験(青色)」です。各国パビリオンの展示内容への高評価がある一方、チケット抽選や予約システム、8月13日の帰宅困難者への対応への批判も見られました。

「財務・運営・報道への批判(ピンク色)」では、未払い問題への批判が依然として存在。「政治・行政運営への不信(紫色)」も前半と同水準で推移し、「吉村洋文・大阪府知事」や「日本維新の会」への批判は継続して見られました。

このほか、「Survive FES(黄色)」、「インド・インドネシア館(オレンジ色)」など、具体的なイベントやパビリオンへの肯定的な評価が個別クラスターとして形成されました。さらに、閉幕に向けて「体験の共有」「感謝の表明」といったポジティブな声が増加していったことが特徴的でした。

前半期では運営や政治への批判が中心だったのに対し、後半期では実際の来場体験やイベントへの感動といったポジティブな声が大きく増加しました。批判から評価へ、人々の関心が移り変わっていった様子がうかがえます。

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