連載
#222 #withyou ~きみとともに~
家に帰れば、おじからの暴力 地獄のような日々を経て伝えたいこと
負けないで。諦めないで。
同居していたおじからの暴力で、一時、自宅を離れて生活をしていた男性がいます。当時の思いを、イラストレーターのしろやぎ秋吾さんがマンガにしました。いま、家族からの暴力を受けている子どもたちに男性が伝えたいこととは。
男性からのエピソード投稿を受け、しろやぎさんがマンガに描いた内容はこのようなものです。
男性は、祖父、母、おじ、姉、男性の5人で同じ家に住んでいました。母は朝から晩まで働きづめだったため、姉と男性が料理や掃除などの役割を分担して生活していました。
母の兄にあたるおじは、パチンコをしながら過ごしていましたが、家に生活費を入れることもせず「やりたい放題でした」。
さらに、食事の時間に準備が間に合わなかったり、掃除ができていなかったりすると、その度に男性と姉は、おじから暴力を受けていたといいます。
中学生になった男性の門限は午後5時半。町内に鳴るチャイムが合図でした。
部活動の終了が遅れ、門限を5分オーバーしてしまったある日。
自宅に帰ると、おじが待ち構えており、30分ほど男性のことを殴り、気が済んだところで部屋に戻っていったといいます。
そして男性は、この日のことを友人の親に打ち明けます。
友人の親が男性が話したことを外部に相談したことで、男性は児童相談所に保護され、半年間、施設で過ごすことができました。
ただ、自宅に戻るやいなや、またおじからの暴力。
「殺される」と感じた男性は、とっさに刃物をおじに向けました。
その現場に居合わせた母親が止めに入りましたが、おじはその母親も殴ろうとします。
男性は「母さんを殴るなら、僕がお前を殴る」と間に入り、そのとき初めておじの手が止まりました。
男性にメッセージを通じて、改めて話を聞きました。
男性は、関西地方に住む29歳のかずきさん(仮名)。SNSのメッセージ機能を使い、経緯や、現在、かずきさんと同じように暴力のある家庭の中で生きている子どもたちへのメッセージを聞きました。
――おじさんがいるときの自宅の様子はどのような感じだったでしょうか。
自宅の雰囲気は、僕と姉にとっては最悪でした。騒いだりすると怒られるので、テレビもつけず暗い部屋で二人で静かに過ごしていました。
――おじさんの暴力に、母親や祖父は気付いていなかったのでしょうか。
暴力を受けていたときの絶対条件は、母親がいないときでした。
だれかがいるときはそのようなことが一切無かったので母は知りませんし、僕たちも母が心配すると思っていたので伝えませんでした。
祖父は気付いていたかもしれませんが、なにも聞いてこなかったし、僕たちもなにも言いませんでした。
おじさんのことは、友だちの親に相談するまで誰にも言っていませんし、家族の中での話し合いにもなりませんでした。
――友だちの親に相談をしたということですが、このときの様子を教えてください。
家出をして、友だちの家に泊まりに行ったときのことです。
友だちの親からは「ちゃんとうちに来てるって電話しなさいよ」と言われましたが、電話をかけることはありませんでした。
お風呂を借りたあと、風呂上がりの僕の下着姿を見て、全身がアザと布団叩きで叩かれて出来たミミズ腫れなどがあるのに気付いた友だちの親が「どうしたんそれ!」と聞いてきて、初めて相談しました。
部屋に閉じ込められて殴られたりしていることも、そのとき初めて打ち明けて、「帰りたくない」と言いました。
それから警察に電話をしてもらい、そのまま児童相談所のお世話になりました。
――その後の生活はどうでしたか。
児童相談所で過ごしたあと、とある施設で半年間を過ごしました。
そこでの生活は、暴力から解放されて過ごせる安心感があり、先生方も優しかったです。数人の友だちと一緒に過ごし、色々と話をして過ごし、退屈しませんでした。
その間、母親が何度か面会に来ましたが、帰りにくいという気持ちや、そこでできた友だちと別れることが嫌な気持ちがあり、なかなか帰れませんでした。
ただ、姉にも心配をかけると思い、帰ることを決めました。
帰る日、みんながおやつのプリンをくれたことを覚えています。嬉しかったし、寂しかったし…色々と経験できたといまは思います。
――自宅に帰ったあとはどうでしたか。
母親と一緒に帰り、家につくと、姉と祖父は何事もなかったかのように「おかえり」と一言言ってくれました。気を遣ってくれたんだと思います。
おじさんとも顔を合わせましたが、僕が無視をしました。その後、僕が廊下を歩いているときに怒られ殴られました。
それを止めに入ったお母さんとおじさんとでけんかになりました。
おじさんが母親を殴ろうとしたので、僕が前に入り、「殴るなら俺もおじさんを殴る」と言って口論になると、そのままおじさんが家を飛び出しました。
――その後の家での暮らしはどうでしたか。
後日、祖父がおじさんに「二度と帰ってくるな」と言ったきり、おじさんは帰ってきませんでした。
――いま、おじさんや家族に思うことはありますか。
おじさんに思うことはなにもありません。母親には苦労をかけたなと思っています。
祖父には、息子(おじさん)を出て行かせてでも孫の僕を救ってくれたことをうれしく思う反面、申し訳なくも思います。
また、相談を聞いてくれた友だちの親に感謝しています。
――かずきさんと似たような境遇の子どもたちにメッセージをお願いします。
負けないで。諦めないで。
いやなことをされた分、人にはしないで。
おびえないで相談しなさい。そうじゃないと、その人も、自分も、取り返しのつかないことになりうるかもしれない。
現に僕もおじさんをあやめてしまおうかと悩んだくらいでした。
だから、早く相談して。
それがお互いのためになる。
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