連載
#1 相席なま田原
「炎上は応援歌」田原総一朗がTikTokerに託した言葉「好きを大事に」
「次世代を担う人材」と異色の対談! 「相席なま田原」始めました。
多くの政治家たちに切り込んできたジャーナリストの田原総一朗さん(86)。withnewsでは、そんな田原さんもこれまで接点がないような「次世代を担う人材」と向き合う動画企画「相席なま田原」の配信を始めました。初回のゲストは、動画投稿アプリ「TikTok」などで発信しているマルチクリエイターのうじたまいさん(22)です。田原さんが「こういう世界をまったく知らなかった。すごいね」とうなった異色の対談。「好きなことをやる」が共通点で、世代を問わず響くメッセージがありました。
田原さん:学校に行かなくなったのは何年生の時?
うじたさん:4年、5年のころです。
田原さん:本当に嫌になったきっかけはなんですか?
うじたさん:仲良くしてくれる友達が、気の強いタイプの女の子が多くて、いろいろ言われてしまいました。ドジじゃないですけどおっちょこちょいなところがあったので、そんなこともできないの? みたいな感じで笑われて。
田原さん:先生に言いつけなかったの?
うじたさん:できなかったですね。仲良い友達だと思っていて、嫌いじゃないので。
田原さん:家で何をしていたの?
うじたさん:家で自分の世界を作るんですけど……自分が社会に出たときの夢を考えて、1人でごっこ遊びをしていました。現実がつらいので。
田原さん:僕が若かったころは、SNSもツイッターもなくて、発信するとすれば新聞かテレビかラジオに入るしかなかった。学校を卒業していろいろ受けたけど、朝日新聞、NHK、TBS、東京新聞、全部落ちました。あなたは初めから個人でやろうとした。僕なんて個人でやる自信はないんだけど、どうしてあなたはあるんだろう?
うじたさん:自分で発信してきた経験があって、SNSだけで成功している子たちも出てきた時代です。周りに成功者がいるのが大きかったかもしれません。
田原さん:それはすごい! 僕なんてまったくわからないので、踊ったり歌ったりするのはどこかのプロダクションに入るんだと思ったけど、SNSで個人でできるわけだ。世界がまったく変わったんだ。新聞はとっている?
うじたさん:とってないです。小さい頃に祖父母が読んでいて、それを見ていたくらいです。
田原さん:なんで新聞を読もうと思わないの?
うじたさん:スマートフォンでなんでも見れてしまうので、必要ないというのが……。テレビも見ないですね。テレビよりYouTubeを見ている時間の方が長いと思います。
田原さん:YouTubeのどこがおもしろいんだろう?
うじたさん:テレビはチャンネルによって、この時間にこれが放送されていると決まっています。YouTubeは好きな時に好きなものを見られる。それぞれの好きなものを極められるようなツールになっていると思います。
田原さん:あなたはなんでTikTokで不登校の時のことを発信しようと思ったの?
うじたさん:気軽に投稿したものなんです。不登校がテーマというわけではなくて、9月の新学期始まる時に、学校に行けなくて死を選んでしまう子がいるというニュースを見ました。自殺という文字を見ると苦しくなるし、寂しくなるじゃないですか。だから、もうちょっと前向きな意見があるといいなと思って、具体例を出したのがあの歌ですね。
田原さん:なんで歌に?
うじたさん:私自身が、言葉がちょっとへたくそだなと思っていて……。
田原さん:あの歌はすばらしいと思うけどね。
うじたさん:言葉だけで伝えられないものがあると思っているんです。メロディーをつけることで誰でもまねができるじゃないですか。「キャッチー」という言葉を大事にして活動しているんですけど、覚えてもらえるようなフレーズや、共感を生むような音楽にして届けたいという思いがあります。
田原さん:発信した後の反応がすごかったみたいですね。
うじたさん:ありがたいことに、たくさんの方に歌っていただきました。私以上に発信力がある方たちが歌ってくださったことがきっかけで広まったのが大きいと思います。新しい広まり方だと思うんですけど、それで私のことも知ってくださったというつながりがありますね。
田原さん:こういう世界があるのは僕はまったく知らなかった。すごいね。
うじたさん:(「September調子はどうだい」には)「大人は楽しいぞ」という歌詞があります。私はまだ22歳なんですけど、励ましたくて言っている言葉でも、「大人は楽しくない」「そんな甘ちゃんなガキに言われる筋合いない」「無責任なこと言わないでください」と言われたりしました。
田原さん:そういうことを言われて、どう思いましたか?
うじたさん:最初は傷つきました。こういう反応をされるんだと。私は自分の好きなことを発信しているだけなので自分の甘さもあるんですけど、価値観の違いは出てきてしまいます。
みんな個人個人が正義感を持っていて、それが悪い方向に行ってしまうと人をたたいたり悪口につながったりするのかなと。
田原さん:SNSで悪口を言うのは社会の大きな問題。あなたはそういうこと言われて平気ですか?
うじたさん:結構心に刺さるタイプです。最近、誹謗中傷について出した動画が燃えてしまいました。
田原さん:僕も批判されます。この年だからね、炎上は応援歌だと思っている。問題にされないよりは問題にされた方がいい。スタッフたちも、「田原さん、これは応援歌ですよ」と言ってくれる。
うじたさん:どういう風に受け入れているんですか。
田原さん:悪口を言っている人も、あなたが本当に心から「自分はこういうつもりで言った」と言えば、だいたい理解してくれる。僕は政治の世界で、安倍(晋三)さんの批判もするし、立憲や共産の批判もする。でも、心から日本の国をよくしたいと言うとだいたい理解してくれる。だから、あなたも勇気を持って頑張ってほしいと思う。
<田原さんは、これまで取材をしてきた経営者たちが「世界が大きく変わることはわかっているが、それに対してどうしていいかわからない」と頭を悩ませている、と話します。そこには次世代への期待がありました。>
田原さん:うじたさんと話していて、本当に新しい時代が来たと思った。大人たちは、その時代にどう対応していいか分からない。そんな大人はどうでもいいんだから、うじたさんたちが新しい時代を作ってください。とにかく作ればいい。どう作るか、僕らには想像がつかない。僕らが想像できる世界はつまらないんだよ。
うじたさん:昔はテレビやラジオで、少ないコンテンツの中で好きなものをみんなと共有することがあったけど、これからは自分の好きなものだけを探究できる時代です。いろんな専門家が出てきて、好きなものも多様化してくる時代だと思うんですね。それを大事にしていきたいです。
田原さん:大事なことだと思う。好きなことをやるのは素晴らしい話です。僕は86歳だけど、若いときから好きなことしかしなかった。好きなことばっかりやってきたから今も現役なんです。
田原さん:好きなことをやっていたら仕事は絶対なくならない。会社の言うことを聞いていたら仕事はなくなる。60歳で終わりなんだよ。本当にうじたさん期待していますよ。どんどん好きなことを広めてほしいと思います。諦めるのは一番よくないからね。
うじたさん:私が田原さんと同じ年になったときに、同じことを言いたいなと思いました。前向きな気持ちになりました。ありがとうございます。
田原さん:好きなことをやる。嫌なことはやらない。全部攻め! 楽しくていっぱい発見があった。どうもありがとうございました。
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