連載
#11 相席なま田原
「え、何で肌荒れ?」一人の高校生を環境活動家に変えた「化粧品」
露木志奈×田原総一朗、気候変動を考える

多くの政治家たちに切り込んできたジャーナリストの田原総一朗さん(87)。withnewsでは、田原さんもこれまであまり接点がないような「次世代を担う人材」と対談する企画「相席なま田原」を配信しています。今回は気候変動の問題について全国の学校で講演をしている環境活動家の露木志奈さん(20)と、環境問題、そして将来の展望について語り合いました。対談の一部を紹介します。
ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経てフリー。「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)の司会を務める。87歳。
環境活動家。2001年生まれ。横浜市出身。インドネシア・バリ島のインターナショナルスクール「グリーンスクール」卒業。帰国後に慶應義塾大学環境情報学部に進学。現在は休学して、全国の学校で気候変動についての講演の日々を送る。20歳。
英語が苦手だったからこそ
露木さん:中学3年生のときに英語の成績が1と一番低い評価だったんです。でも英語はすごく好きだったから、いつか話せるようになりたいなと思って、お母さんに留学したいと伝えたんですよ。
私は4人きょうだいで母子家庭です。お母さんはすぐには応援してくれなかった。「英語の他に何か学べることがあるんだったら、留学をしていいよ」と言われました。
グリーンスクールは偶然webサイトで見つけました。学校の写真を見たときに、建物が全部竹でできていたんです。「ここに行きたい」と一瞬で思って、一人で留学しました。
田原さん:留学はお母さんが薦めたと思ったら、違うんですね。
露木さん:そうなんですよ。自分で見つけてきました。

授業も「作れる」
露木さん:はい、行く前に知っていました。ただ、入学前にそこまで関心があったわけでなく、私が選んだ理由は、そこに集まっている先生や生徒はもちろん、勉強できる環境、建物や授業のスタイルがおもしろいなと思ったからです。
田原さん:授業はどういう特徴が?
露木さん:グリーンスクールは、幼稚園から高校まであります。私は高校から参加しましたが、日本の大学のように基本は選択制の授業なんですよ。しかも、授業は選ぶだけでなく、自分で「作る」こともできます。グリーンスクールが掲げている目標がいくつかあって、それに沿っていれば、授業を作っても大丈夫なんですよ。
田原さん:自分で授業を作れるんですか。
露木さん:そうなんです。正式な単位として、認められます。あとグリーンスクールは、学ぶことと、行動することが半分ずつなんですよね。
田原さん:行動するというのは、どういうことですか。
露木さん:例えば、環境問題について学んで「こういう問題がありますよ」と知ったとき、今の私たちに何ができるのかを考えて、実際に行動するんですよ。
田原さん:具体的に何をやったんですか?
露木さん:私は実際に、授業を作ったんです。
きっかけは化粧品
露木さん:妹のために化粧品をつくることを授業にしました。
私は4人きょうだいの上から2番目で、2歳下に妹がいます。日本で買った、「ナチュラル」と表示された化粧品を使ったときに妹の肌が荒れちゃったんですよ。
そのときに私は「え、何でだろう」と思ったんですね。ナチュラルということは肌に良い、安全だと思っていたから。でも、どんどん調べていくと、必ずしもそうでなくても、ナチュラルとかオーガニックって使われてしまう世の中なんだと初めて知りました。そこから、妹のための化粧品を作りたいなと思いました。
田原さん:一般に売られている化粧品は必ずしも安全じゃないから、安全な化粧品を作ろうと思った。そういうことですか?
露木さん:そうです。最初は作り方がまったくわからなかったので、手作りの仕方を紹介した本を見ながら、研究しました。
研究を続けていくと、化粧品に使われているプラスチックの容器や、中身の材料にパームオイルという、熱帯雨林が燃やされて作られるオイルが入っていることを知りました。なので肌に安全なだけでなく、地球にやさしいことも目指しました。
(注)露木さんが天然素材でつくった口紅は、持ち手もプラスチックではなく、竹を使用した。

グレタさんと会った国際会議で危機感
露木さん:高校3年生のときですね。でもこれは、グリーンスクールではなく、COPという国連の気候変動会議に参加したときに聞いたんですよ。パリ協定が作られている会議です。そのとき(2018年)はポーランドで開かれ、グレタさんに初めて会いました。
田原さん:ここが一番肝心なんですけど、露木さんは何でそこまで環境に関心を持ったのですか?
露木さん:先ほど話した化粧品作りがきっかけです。容器や中身を調べていったときに環境問題とリンクして、そこから興味を持ち始めました。
田原さん:一般的に言われているのは地球温暖化のことで、世界中が危機感をもって真剣に対応している。露木さんも危機感をお持ちになったんですか?
露木さん:そうですね。私が参加したポーランドの会議では、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略)のレポートで、早ければ「残り12年」と言われていたんですよ。地球の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑える期間が。それは、私が30歳になるときだったんです。
自分が将来大きくなったときに、地球上に住む場所がなくなったら困るなと思い、危機感をもちました。
「CO2ゼロ」、日本はどうする
そのなかで、日本とアメリカの動きは遅かった。日本は何で、地球環境についてこんなのんきだったんですかね。
露木さん:私はそもそも、日本には情報が入ってきていないと思ったんですよ。ヨーロッパでは毎日、毎日、気候変動の話題がニュースで取り上げられるのに、日本ではなかった。そうしたことが、危機感を持てない理由かなと思いました。。それでも昨年、菅首相が「2050年までにCO2ゼロにします」と発言しました。
田原さん:2050年CO2ゼロにするためには、2030年までにどうしなきゃいけないか。2030年にどうしなきゃいけないかってことは、実は、日本政府は今年の夏までに考えなきゃいけない。大問題なんですね。これ、夏までに考えられると思いますか?
露木さん:考えていると思います。環境省も、菅首相の発言に対して、具体的にどういうことをやっていくべきかのスライドを出しています。具体的に実行されるかは別として、一応ありますよね。

学校での講演、一つの希望
露木さん:私は、消費者の選択が世の中を作っていると思っています。消費者の選択を変えていくことができれば、問題も解決していくから、選択の大切さについて、いつも話しています。
田原さん:生徒たちはどんな反応なんですか?
露木さん:若ければ若いほど、環境問題について関心をもっている子は多いです。でも、私が具体的に話す内容を知っている子たちはそこまでたくさんいません。気候変動の問題がどれぐらい深刻か、短い期間で環境が悪化していることや、温室効果ガスの排出量をゼロにしないといけないことなどをすると、本当にびっくりします。
私が全国の学校で講演ができるということは、校長先生がOKしてくれているからです。話をして、生徒の刺激になってほしいと思ってくれているからです。講演ができるっていうことは、一つの希望かなって思ってます。
田原さん:今や露木さんたちの声が本当に広がっていると思いますよ。本当に頑張っていると思います。
【 #相席なま田原 】
— withnews (@withnewsjp) March 27, 2021
ゲストは、20歳の露木志奈さん。
「環境活動家という肩書をなくしたい環境活動家」として、全国の小中学校で講演をしています。
気候変動に立ち向かう次世代に、ジャーナリスト・田原総一朗さん
@namatahara が切り込みます。 https://t.co/AMmsRH2q54