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連載

#6 凸凹夫婦のハッタツ日記

1日2千円節約、8キロ減量…自炊しない夫を変えたASD妻の料理法

方法さえつかめば、誰でも楽しく料理はできる。

ASDの妻・弥加さん(左)とADHDの夫・光さん
ASDの妻・弥加さん(左)とADHDの夫・光さん

目次

こだわりが強いASD(自閉スペクトラム症)で視覚優位の妻。抜けもれが激しいADHD(注意欠如・多動症)で聴覚優位の夫。西出弥加(さやか)さん(31)・光(ひかる)さん(25)夫妻は共に発達障害です。まるで「妻が先生、夫が生徒」のような関係で、凸凹を補っているという2人。食事に関しても、妻が夫に教える形で改善しました。妻・弥加さんの視点でつづります。

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【夫の視点】「ひと煮立ち」も分からないADHD夫が、自炊を始めて感じた変化

大量の弁当容器と1本のネギ

出会ったばかりの旦那は、自炊をせず既製の食品や弁当を大量に買い、買った分だけ一気に食べるような人だった。旦那の一人暮らしの部屋に行った際には、玄関に90リットルのゴミ袋があり、その中に弁当容器が大量に捨ててあった。そして冷蔵庫には、いつ買ってきたか分からないネギが1本。ミイラ化していた。

90リットルの大きなゴミ袋が置いてあった理由は、小まめにゴミ出しをしなくて済むからだろうし、弁当を買う理由は、自炊する時間を使わずサクッと食べるためだろう。これはこれで、便利かつミニマムな生活だ。

ただ私は、たまには自分で作ったら良いのではと思い、同居してからは自炊好きの私に合わせて手伝ってもらうことにした。

旦那はADHDで、家事や書類の事務処理など特定の行動で抜けや忘れが出る。だからといって料理ができないわけではない。方法さえつかめば誰でも楽しく料理ができると私は思っている。

料理が難しいと思うならうまく作ろうとしないで、作れそうなものを一品だけ作るところから始めたら良い。

自炊をしたら8キロやせた

今まで料理をしていない人が急にしようとすると「すごく膨大な時間がかかるのではないか」と思うかもしれない。その不安を消すのは簡単なことで、膨大な時間がかかるメニューを避けたら良い。旦那とまず一緒に作ったものは一つだけ。それはみそ汁である。

旦那は野菜をひたすら切るところから始めた
旦那は野菜をひたすら切るところから始めた

1:米を炊く
2:具だくさんのみそ汁を作る

米を洗って炊飯スイッチを入れる。みそ汁はにんじん、シイタケ、キャベツ、油揚げを切って煮てしょうゆを入れる、煮立ったら火を止めてみそを溶かす。これで終わり。具だくさんなのでだしを取らなくてもおいしいし、調理時間は30分だ。

面倒に思うときは、簡単なことから始めたら良い。食材を多めに買って煮るだけでも、焼くだけでも良いし、無理に手の込んだ味付けもしなくて良い。料理が楽しくなってきた頃には、気づけばあれもこれもと色々工夫したくなっているはずだ。

旦那は以前から疲れやすく1日ずっと寝ることもあったが、自炊を始め菓子パンや揚げ物をやめて野菜、タンパク質、玄米を増やしたら、疲労感が減ったようだった。そして、旦那は半年で8キロやせた。

毎日のようにみそ汁を作った
毎日のようにみそ汁を作った

1日2000円節約できた

1日の食費は3000円を超えていた旦那が、自炊にしたら1000円で済むようになった。内訳は野菜500円、鶏肉300円、ヨーグルト200円、果物 150円だ。

米は20キロをまとめて買っておき、調味料は量が多く入っているボトルやパックを買う。少ないものや小さいものは高くつくから、大きなものをいつもそろえている。

そして視覚から入る情報を減らすためラベルをはがし、お手製のシールをつけた。

このラベリングは、視覚からの情報を受け取ることが苦手で耳からの情報で考えることが得意な聴覚優位の旦那にも、目で見た情報を受け取りすぎる視覚優位な私にも良かった。情報過多をなくし、正反対の特性を持つ両者どちらにとっても楽な方法だった。

調味料のラベルをはがし、お手製のシールをつけた
調味料のラベルをはがし、お手製のシールをつけた

とにかく汁物を作った

料理をしたことがない旦那に、私は段階を踏みながら「汁物」の作り方を教えた。レシピ本を読んで1人でやれとは言わないようにした。それができるのであれば、とっくに本を読んでやっていると思う。

私が思う最も難しい料理は「お菓子」だ。たった1gの違いでも形になってくれないお菓子がある。その逆で、最も味の調整がきくものは「汁物」だ。1gミスしたところで味が台無しになることはない。濃かったら水を足せば良いし、薄かったらしょうゆか塩を少量ずつ足していけば何とかなる。

旦那には野菜を毎日切ってもらった。そして鍋で煮て最後に味付け。とにかく「汁物を作ること」を繰り返した。みそ汁、お吸い物、カレー、ミネストローネ、クラムチャウダー……。徐々に具材と味付けを変え、汁物マスターになってもらった。

週に2、3回ほど汁物を作ると「汁物で失敗しないようにするにはどうしたら良いか」がわかってくる。かき混ぜ方や火の調節が体に染み込んで慣れてきた頃、最初に覚えたみそ汁を作るところへ戻る。

様々な種類を作ってから最初に作ったみそ汁を作ると、それがとても簡単に感じる。今日は違うだしを取ってみようとか、具材を変えてみようとか、色々と考えられるようになる。

色んな汁物を作ったら、次は他の一品、卵焼きや煮物などを作れるようにする段階だ。

旦那がスーパーで1日に買う、だいたいの量
旦那がスーパーで1日に買う、だいたいの量

汁物、おかず、お菓子など、一気に違うカテゴリーを一つずつ教えるのではなく、まずは1カテゴリーでたくさんのレパートリーを作れるようにした。

初めてみそ汁を作った日から2年が経つが、今旦那は全て自分で料理を作り、野菜と果物の栽培までするようになった。

自炊をしたことがないとまで言っていた旦那がまさか自炊して栽培までするとは思っておらず、教え方と教わり方の相性によりここまで変わるのだなと実感した。

【夫の視点】「ひと煮立ち」も分からないADHD夫が、自炊を始めて感じた変化

西出弥加(にしで・さやか)

1988年生まれ。「自閉スペクトラム症(ASD)」の当事者。2019年に「注意欠如・多動症(ADHD)」不注意優勢型の光と結婚。会社組織に所属するのは苦手で、フリーランスのグラフィックデザイナー・画家として文具などを作成している。描く絵は動物が多い。寝る時間が定まらないのが悩み。
Twitter:https://twitter.com/frenchbeanstar
ブログ:https://ameblo.jp/frenchbeanstar/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCSBIRwRWRQJ8apL48KEO8tQ

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withnewsでは、西出弥加さん・光さん夫妻のエッセイ凸凹夫婦のハッタツ日記〜先生と生徒になってみた〜を原則隔週火曜日に配信します。先生と生徒のような夫婦関係について、妻と夫それぞれの視点で描きます。

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