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連載

#23 凸凹夫婦のハッタツ日記

「特別扱いは求めない」 発達障害の僕が考える障害者への「配慮」

決めつけることで「すれ違い」を生んでいるように感じます

ADHDの西出光さん(右)と妻でASDの弥加さん
ADHDの西出光さん(右)と妻でASDの弥加さん 出典: 画像はいずれも西出夫妻提供

目次

発達障害について少しずつ理解が進んできました。時折、当事者への「配慮」が話題になります。YouTubeなどで発信している注意欠如・多動症(ADHD)の西出光(ひかる)さん(26)は、「特別扱いを求めているわけではなく、同じ土俵に立つための最低限の配慮をしてほしい」と考えているそうです。(聞き手・西出弥加)

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配慮する側とされる側の「ズレ」

近年、多様性のある生き方が広まると同時に、配慮についても考える機会が増えたように感じます。電車内ではヘルプマークの説明が貼られたり、企業では男性の育休やLGBTに関する研修などが推進されるようになったり、時代がどんどん変化しています。

あまり目を向けられなかったという点においては、発達障害もその一つだと思います。各種メディアで「見えない障害」として積極的に取り上げられ、日常生活でもADHD、ASD(自閉スペクトラム症)という単語を耳にすることも多くなりました。

僕自身が当事者ということもあり、こうした世間の動きはとてもうれしく、ありがたいと感じています。

しかし中には、そうした広まりに対し疑問の声をあげる人もいます。

それは配慮する側、すなわちマジョリティの人々から出ることが多いように感じます。具体的には「また新しい配慮をしなくてはいけないのか」「配慮されるのが当たり前と思うのはいかがなものか」「努力はせず周囲に理解しろと押し付ける当事者もいるから困る」などです。

実際僕の連載記事でも、上に挙げたような感想や意見を頂くこともあります。しかし僕から伝えたいことは、「配慮されるのが当たり前」「理解して」と思ったりしたことはなく、そのような発言もしたことはないということです。

このズレは、配慮に対する考え方の違いから生まれているのではないかと感じました。ちょっとしたズレが大きくなり歪みができてしまうと、いじめやトラブルの原因にもつながりそうです。

ADHDの西出光さん
ADHDの西出光さん

必要な配慮やケアは異なる

発達障害を例にすると、配慮を求める声に対して、「甘えるな」と返されてしまうことがあります。

求めている配慮とは、例えば耳が聴こえづらいので、会話するときは直接よりもメールでお願いしたいというものだとか、逆に文字を読むことが極端に苦手で、情報が抜けてしまうので、電話をしてほしいというようなことです。

ただ、これは甘えに思われてしまうときもあり、当事者である友人は「障害者だからなんでも許されると思ってるのか」という発言をされて傷ついていました。

決して「発達障害者を特別扱いしてくれ」と言っているわけではありません。同じADHDでも電話が苦手だけど文字を読むことは得意な人、文字を読むことが苦手だけど電話はできる人、と本当に様々です。その人それぞれが困り感を抱えていて、していただきたい配慮、ケアも異なります。

あくまで僕は、自分の苦手な部分は避けて、周囲の皆と足並みをそろえて生活がしたいという思いがあります。甘えたいわけではないのです。

また、配慮をしようと率先してくれた場合でも、「発達障害者はこういう人だ」という一つの枠組みで判断されてしまう場合もあります。僕が過去に受診したクリニックでは、発達障害と知的障害を混同されたり、「走り回らないならADHDではない」と医師に言われたりしました。

当事者の僕からしたら「そういう人もいるけれど僕はそうじゃない」と感じました。しかし医師がそう思っている以上、言い合いにしかならないし良い結果にはならないと思うので、黙って受診をやめました。

実際、僕は走り回りませんが、結構度合いの強いADHDです。その人が思う「発達障害者」というカテゴリーに分けられてしまい、個人である僕のことを見てもらえず、正しく認識されないことも非常に多かったです。

「見た目が普通だから重度じゃない」と言われたことも多々ありました。見た目と発達障害は関係しているようで、していないように思うのですが、それも言及しませんでした。自分の中身を見てくれて、本当に理解してくれる人に出会うことは難しいのだなと感じます。

このようなことを踏まえて僕が思ったことは、「発達障害の人は全員こういう傾向だ」と無意識に決めつけてしまうと、何か予想外のことが起こったときに、一体どこまで配慮をしたらいいのか分からなくなるということでした。そのストレスの積み重ねが、配慮へのすれ違いを生んでいるようにも感じました。

人と人がいたら、予想外のことが起きるのは当たり前ですし、あくまで自分の目の前にいる人がこういうことに困っていて、こういうことを求めているんだと、互いに理解できたら良いのかなと感じました。

ADHDの西出光さん
ADHDの西出光さん

当事者も周囲の人に配慮を

そして周囲との関係を円滑に進めるためには、当事者も歩み寄る必要があると僕は思いました。人によって苦手な部分も得意な部分も全く異なるので、人と人で付き合いたいと思います。配慮してほしいと感じたときに自身の性質や苦手な部分を理解し、伝えることも大切だと考えています。

例えば僕は言語性IQが高く、動作性IQが低いのですが、その差は約50です。人と対面で話す時は障害が生じませんが、その一方で複数人での行動や準備の部分で障害が起こります。

大勢でキャンプをすることになったら、状況を見てどう行動したらいいか判断することがほぼできなくなってしまいます。動作がとても遅いですし、頭がフリーズして棒立ちになってしまいます。

同じADHDでも、このような場でテキパキ動いて皆を笑わせ、最後に締めのスピーチまでする人がいます。僕には到底できません。一人ひとり、本当に違うのだと思いました。

また、僕は自分の発達障害のことを積極的に伝えることはありませんが、「苦手なことはありますか」と聞かれた際には、できるだけ細かく伝えるようにしています。

このとき、自分で行ってきた対処法や周りにしてほしいことも伝えています。

そして職場であれば周りの人も仕事を抱えているので、一緒に仕事をすることのメリットを感じてもらえるように得意なことも話すと、相互で助け合える第一歩になります。

支援者や周りも、ひとりの人間なので、「さぁ配慮してください」という姿勢では、どうしても腰が重くなってしまうと思います。

できることとできないことを自分で把握して、それを伝えて周りも動きやすくするというこちらからの配慮も必要です。

実際に頭で思い描いている理想だけでは、うまくいかないこともあるかもしれませんが、こちらからの働きかけ次第で状況が好転する可能性は大いにあると思います。

結婚したころ、妻・弥加さんが描いて光さんに贈ったイラスト
結婚したころ、妻・弥加さんが描いて光さんに贈ったイラスト

特別扱いされたいわけじゃない

マイノリティや障害者の方が発達障害のことや配慮の種類などを発信をすると「特別扱いをしろというのか」「表にでないでひっそりと生きればいいだけ」という声がありますが、悲しい気持ちになります。

僕自身は特別扱いをしてほしいわけではなく、あくまで皆と同じ土俵に立つための最低限の配慮をしてほしいというだけです。

ケガをした人に席を譲るのは誰も反対しませんが、発達障害の人が必要最低限の主張をするだけで「甘えだ」と切り捨てられてしまう状況が、残念ながらあると思います。

例えばASDの奥さんであるサヤカさんが、考えつかない事態が起きて静かに脳内がフリーズして体が動かなくなったとしても、外見は健康に見えるので、とっさに気づいて席を譲ってくれる人はいないと思います。

ぱっと見は健康な若者に見えるサヤカさんが席を譲ってほしいと言ったら、甘えに見えてしまうかもしれません。そのようなことがあるからか、サヤカさんが率先して積極的に大勢いる場に出かけるところを僕は見たことがありません。

目に見えない障害に対しての配慮は、とても難しいことだと思います。難しいからこそ、僕は狭く深く、周囲の人と意思疎通をとっていきたいのです。

そしてそのような状態がもっと広がり、発達障害の人も、そうではない人も働きやすくなると良いなと思っています。そうなるとおのおの、色々な人が社会でより働きやすくなるのではと考えています。お互いの適切な配慮の積み重ねが、今後様々な人の生きやすさを生むように感じます。

ADHDの西出光さん(左)と妻でASDの弥加さん
ADHDの西出光さん(左)と妻でASDの弥加さん

西出 光(にしで・ひかる)

1995年生まれ。発達障害の一つ「注意欠如・多動症(ADHD)」の不注意優勢型と診断される。2019年に「自閉スペクトラム症(ASD)」のグラフィックデザイナー・弥加(さやか)と結婚。当初は家事が極端にできず、仕事も立て続けに辞めていたが、妻の協力の末、現在はホームヘルパーとして勤務。当事者の視点から、結婚生活においての苦悩や工夫、成功について伝えていきたい。
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