連載
#18 ざんねんじゃない!マンボウの世界
マンボウ、90年前に存在した謎の利用法「ここまで跳ねるとは…」
子どもたちが遊んでいたというマンボウの「軟骨ボール」とは!?

きっかけは「探偵!ナイトスクープ」
依頼者の祖父は、幼少期を佐賀県北部の呼子町(現在の唐津市)の漁村で過ごしました。そこの子どもたちはマンボウ類が浜に打ち上げられたり、漁網にかかったりすると、その軟骨をもらい、ボール状にして弾ませて遊んでいたというのです。スーパーボールが普及する前の1920年代後半ごろの話ですが、マンボウの「軟骨ボール」はスーパーボールのようによく弾むものだったと聞いていたそうです。
今回、この依頼から明らかになったマンボウの利用法が、科学論文になったことを機に、改めて取材しました。
食用だけじゃない、マンボウと人とのつながり
澤井さんによると、マンボウの皮膚も例外ではなかったようです。野球ボールが普及する前、漁村の子どもたちがマンボウ類の皮膚を加工して、野球ボールの代わりにして遊んでいたという文献もあるといいます。
マンボウと人は、歴史的にも長いつながりがあります。今のところマンボウが明確に記されている日本最古の文献は、1636年の料理本「料理物語(寛永十三年版)」です。作者は不明ですが、このときマンボウは「うきき」という名前で、食材として登場しています。また栗本丹洲が1825年に著した本『翻車考』には、マンボウの表皮は刀の「さや」や「柄巻」として使われたと書かれています。

スーパーボールの約70%の跳ね返り




また番組の放送後、マンボウの軟骨は水分が多く含まれることが新たにわかり、論文では軟骨ボールは常温で放置すると腐ってしまう可能性や、水分が抜けると変形して弾まなくなる可能性も示唆されています。澤井さんは「子どもたちがスーパーボールの代わりとして遊べた期間は短かったのでは」と話しています。
謎が残る「軟骨ボール」の起源
澤井さんは「軟骨ボールの大きさを変えて実験するとどうなるのかはわかっていないので、継続研究は子どもの夏休みの自由研究にいいかもしれない」とも提案。しかし、ある程度の大きさのマンボウを手に入れる必要があるため、「実際に軟骨ボールを作るのは結構大変だと思う」とのことです。
<さわい・えつろう>
1985年奈良県生まれ。マンボウ研究者。3年前の今日、2017年7月19日に、マンボウ属では125年ぶりとなる新種「カクレマンボウ」を発表、名付け親となる。著書に「マンボウのひみつ」(岩波ジュニア新書)「マンボウは上を向いてねむるのか」(ポプラ社)がある。広島大学で博士号取得後は「マンボウなんでも博物館」というサークル名で同人活動・研究調査を行い、Twitterでも情報を発信している(@manboumuseum)。カクレマンボウの発表3周年を記念して、マンボウ類の総合情報サイト『マンボウなんでも博物館』(https://manboumuseum.com/)を本日オープン。