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魚の消費量、20年で半減…「逆出世魚」でスナック発売、消費拡大へ

イベントで水産物の消費拡大を訴える水産庁の職員
イベントで水産物の消費拡大を訴える水産庁の職員 出典: 朝日新聞社

目次

近年、日本人の魚の消費量が急激に減っています。統計上、20年前と比べて半分近くになっているほどです。そんな状況を打破しようと、水産庁が官民協働で水産物の消費拡大に取り組んでいます。参加団体は1千を超え、斬新な新商品も生まれています。気候変動で獲れる魚が変わってきたことに伴い、これまで食べられていなかった「未利用魚」の活用も掲げています。

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いつの間にか進んでいた「魚離れ」

農林水産省の統計によると、魚(魚介類)の消費量は21世紀に入ってから右肩下がりに減っています。2001年度は1人あたり年間40.2キロでしたが、2023年度は21.4キロです。この20年間で47%減少しています。

サンマの水揚げ
サンマの水揚げ 出典: 朝日新聞社

なぜ、「魚離れ」が起きているのでしょうか。昨年度の水産白書は、様々なアンケートなどで「骨をとるのが面倒」「ゴミ処理が面倒」といった声が挙げられていると指摘。「魚介類の価格が高いこと、調理の手間がかかること、調理後の片づけが大変なこと、調理方法を知らないことが弱みとなっていると考えられます」と分析しています。

水産庁は、こうした状況を変えようと、2022年から魚の消費拡大に向けた運動を始めました。毎月3~7日を「さかなの日」に制定し、運動に賛同するメンバーを募っています。

気候変動「未利用魚」に活路

水産庁が魚の消費拡大をめざす背景には、魚を食べることが持続可能な社会づくりにつながるという考えがあります。

水産庁加工流通課の高地裕太郎さんは、「適切に管理すれば、魚は持続的に利用することが可能な資源です」と話します。

鉱物資源や農畜産物は、基本的には使ったらなくなってしまいます。しかし、水産資源は漁獲しても、親魚がある程度残っていれば、食物連鎖の中で産卵と成長を繰り返し資源が回復する持続的な資源です。このため、適切に管理すればずっと食べ続けることができます。

また、魚を食べ続けるためには、魚を捕り、消費者に届けてくれる水産業界が元気でなければなりません。

市場で行われている水産物の競り
市場で行われている水産物の競り 出典: 朝日新聞社

最近の水産業界が大きな影響を受けているのが気候変動で、漁獲量が減ったり、魚の分布域が変わったりする事例が出ています。これまでたくさん網にかかっていた魚が捕れなくなってしまったケースもあります。

こうした事態に対応するためには、食材としての価値が低く、網にかかっても売れなかった「未利用魚」も活用していく必要があります。

高地さんは、「魚の消費量をV字回復させることは難しいが、まずは右肩下がりの状況に歯止めをかけたい」と話します。

誰も食べない「逆出世魚」でスナック

水産庁の活動に賛同してメンバーに加わった企業の中から、魚の消費拡大に向けた今までにない新しい商品が生まれ始めています。

ベビースターラーメンで知られるおやつカンパニー(本社・三重県津市)は10月27日、「コノシロ」という魚を使ったスナックを発売します。

健康新規ブランド・企画管理課の中村陽介さんは、「私の知る限り、コノシロフレーバーのスナック菓子はおそらく世界初だと思います」と話します。

逆出世魚「コノシロ」を使ったスナック菓子
逆出世魚「コノシロ」を使ったスナック菓子 出典: 朝日新聞社

コノシロは出世魚です。寿司ネタで人気のシンコが成長するとコハダになり、さらに成長するとコノシロになります。

シンコやコハダは寿司店からの需要があり高値で取引されますが、コノシロは人気がありません。小骨が多く加工に手間がかかるため、網にはたくさんかかるものの、ほとんど値段がつかないそうです。成長するほどに値段が下がるので、業界では「逆出世魚」という不名誉な呼ばれ方をする場合もあるそうです。

コノシロ
コノシロ 出典: 朝日新聞社

しかし中村さんは、「コノシロに小骨が多いのは事実ですが、食べてみると味はおいしい。とてもポテンシャルの高い魚だと思います」と話します。

おやつカンパニーではこれまでも、イワシやサバを生地に練り込んだスナック菓子「素材市場」シリーズを手がけてきました。今回、コノシロを練り込んだ素材市場の新商品を開発。しょうゆの風味を生かした竜田揚げ味に仕上げました。

「おやつにも晩酌にもぴったり。カルシウムなどの栄養素も摂取できるヘルシー感覚のスナックができました」と話します。

養殖場を荒らす厄介者も食材に

水産庁が消費拡大に力を入れている魚のひとつが、海水温が上昇したことで分布域が広がっているクロダイです。近年、養殖カキやノリがクロダイに食べられてしまうという食害が各地で問題になっています。

クロダイはチヌとも呼ばれ、釣りのターゲットとして釣り人にはなじみがありますが、一部の地域を除いてあまり食べられていないそうです。

チヌ
チヌ 出典: 朝日新聞社

クロダイを食べてもらうことで漁業被害を減らそうと、水産庁は漁漁被害の多い府県や研究機関と協力して「クロダイのおいしさ認知向上プロジェクト」を立ち上げました。

活動の第一弾として、都内のデパートで開催されたイベントで、クロダイのなめろうを乗せた海鮮丼「岡山海の幸ブラック丼」を販売したところ、完売したそうです。

魚料理のハードル下げる新商品

キユーピーも水産庁の運動に賛同し、野菜と魚で健康な食卓を目指す「やさかな」という取り組みを進めています。その中で今夏、新商品「アクアパッツァの素」を発売しました。

キユーピーは消費者の魚離れの原因の一つに、魚は調理が面倒だと思われている点があることに着目。今回の新商品は、フライパンに水とアクアパッツァの素、魚の切り身と野菜を入れてフタをして加熱し、沸騰後5分で本格的なアクアパッツァができあがるというものです。電子レンジでの調理もできます。

新発売のアクアパッツァの素
新発売のアクアパッツァの素 出典: 朝日新聞社

調味料戦略部の担当者は、「従来の複雑な調理工程を一気に解決し、フライパン一つで本格アクアパッツァが完成します。日本人の魚離れを救う商品になれば」と話します。

今後も、旬の魚と旬の野菜を使った「魚おかず」のアイデアレシピを提案したり、料理教室を開いたりして、魚の消費拡大に向けて活動していくそうです。

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