連載
生徒に頭下げ「勉強させてください!」非常勤講師の心、マンガで描く
新米くんの目の奥に力が入ったきっかけは
前回は、あまりの緊張に体育館を飛び出し、下駄箱の隅に隠れてしまった新米くんが、女子生徒から「アンタの話なんか誰も聞いていないから」と言われたところで終わりました。
今回、新米くんはなんとか舞台に上がれたものの、なにやらずっと「ジャガイモ」と言い続けている様子。
確かに大勢の前で話をするときは「目の前の人をジャガイモだと思いなさい」と言われることもありますが、新米くんは目が回るほどに「ジャガイモ」と念じています。大丈夫でしょうか。
「ケツアゴ…」「ジャガイモ…」
当然、新米くんの発言にざわつく生徒たち。体育館内には戸惑いが広がります。
ただそこは柔軟な高校生たち。状況を飲み込んだ生徒たちから笑いが起き始めます。結果、体育館内は爆笑の渦。
前回、緊張に震える新米くんを「ヘタれな先生」と一喝した女子生徒は「アホか」と笑いすぎて涙が出ています。
生徒たちの笑い声に力をもらったのかどうかはわかりませんが、目の奥に力が入った新米くんが、やっと言葉を発します。
「あ…新井米介です…」
「み、皆さんと一緒に…」
「勉強させてください!」
新米くんのあいさつ、ちょっとグッときました。
彼の不器用さと素直さが現れているようにも感じる、真正面からぶつかっていく挨拶。いままで教職に就くことへの踏ん切りがつかずにいた彼の心が固まった瞬間にも思えます。
この挨拶は果たして、彼の覚悟が決まったということなのか…作者のしろやぎさんに聞きました。
(そして、新米くんのフルネームは「新井米介」さんというんですね)
最後の挨拶は結局何を言うんだろう。
上手くできるはずはないだろうし、できたらできたで気持ち悪い気がして、とにかく下手くそな挨拶にしようということだけは決めていました。
「生徒から学べ」という言葉は、これまでの物語の中で大学の先生に教職を勧められた時に受けたアドバイスでした。(参照:画家になるために「教師」、踏み台にする自分にモヤモヤ…マンガで )
当時の新米くんは、「画家になるという自分の夢のために子供から若い発想を学び、教えながら自分の知識や技能を高めていけ」という意味だと考えていましたが、挨拶で出た「勉強させてください」は意味が違います。
顔が見えてきた目の前にいる人のことがもっと知りたい、その人のために自分に何ができるのかわからないから教えて欲しいという気持ちで言っています。
頭で考えても気持ちが後ろ向きになって全然先に進まないので、とりあえず人の前に出て向かい合って走り出す人を、新米くん編では描きたかったのです。
【次回予告】
「新米くん編」は今回で終わりです。次回からは生徒が物語の中心になっていく「男子くん編」へと続きます。どんな生徒が出てくるのでしょうか。
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withnewsでは、しろやぎさんの「あなたそれでも教師ですか」を毎週日曜日に配信予定です。新米くん編に続き、男子くん編など、新米くんを軸とした教育現場を描いていく予定です。
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