だとしても正直すぎ


前回、美術科クラスの副担任「新米くん」に、教師になった理由を聞いた男子くん。新米くんから笑顔で「お金のため」と答えが返ってきたところで、前回の話は終わりました。
今回は、男子くんがその答えに「いや、そうだとしても正直すぎるだろ」とツッコミを入れるところから始まります。
男子くんが何を期待してその質問を投げかけたのかは、作者のしろやぎ秋吾さんの解説を待ちますが、「お金のため」という答えに、男子くんは「それだけですか!」「そんなの教師じゃなくたって何の仕事でもいいじゃないですか」と声を大にして訴えます。
そんな男子くんの気持ちを知ってか知らずか、新米くんは「俺はね、世界一の画家になる男なんだよ」と諭すように話し始めます。
「だから一日中美術のことだけ考えていたいし、力をつけたいの」と、とつとつと語り続けます。
「お金のため」と答えたときは、どこかフリーハンドで破天荒な気配すら感じさせた新米くんでしたが、実は色々考えた末で出た一言のようにも思えてきました。
なんだろう、このがっかり感


「このまえ、お前の作品みてさ、俺も負けたくねーって思ったんだ」
新米くんがこれまで登場したときは、自分の将来を決めかねておどおどしていたり、生徒との向き合い方に戸惑っていたりして、どこかつかみどころのない存在でした。
しかし、男子くんにまっすぐに伝えたこの一言は、いままでの新米くんの言葉の中でも特に、熱量を感じます。
ところが、その言葉を聞いた男子くんは「あれ…なんだろうこのがっかり感」「ちょっと期待しちゃったじゃん」。
てっきり新米くんの熱い思いを受けて二人ともやる気をみなぎらせる展開になるかと思いきや、「やっぱりこの人も自分とはちがうんだ」と感じる男子くん。どうやらそんな簡単ではなさそうです。
そして男子くんは口を開きます。
「夢って必要ですか?」
「なにその生徒と教師みたいな質問…」

「夢って必要ですか?」と質問された新米くんは、「ゆめ?ゆめ~~?」と腕を組んで考え込みます。
「別にないといけないもんじゃないと思うけど…」「なにその生徒と教師みたいな質問…」と、だいぶ悩んでいる様子。どこか頼りない悩み方をする新米くんです。
「ゆめ…目標…」と逡巡していた新米くんですが、人さし指を立てて、「そうだ!」とひらめいたようです。
「ライバルになれ!」が答え?


考えた結果、新米くんが男子くんに伝えたのは、「じゃあお前、俺のライバルになれ!!」でした。
どうやらこれが、男子くんの「夢って必要ですか?」という質問に対する新米くんなりの答えのようです。
よくわからない展開に男子くんは「は?」とポカンとしています。
それでもなお、新米くんは続けます。
「俺はお前に負けないようにするから、お前は俺に負けないようにしろ!!」
そして男子くんはつぶやくのです。
「割と真面目に相談したオレの気持ちかえせ…」
夢に裏付けられた自信なら…なんか嫌
「なんで教師になったんですか?」「夢って必要ですか?」――。男子くんから新米くんへの問いかけは、人生や仕事観についての根本的な問いのように思えます。
「夢が必要か」という問いへの答えは十人十色。新米くんも悩みながら答えますが、どうも男子くんの納得いく答えにはたどり着けないようです。「夢」がなくて悶々としているいまの男子くんは、もしかしたら「夢なんて必要ない」と言ってほしかったのかもしれません。
夢や目標を語り出した新米くんに、男子くんが感じた「がっかり感」の理由を、作者のしろやぎさんに聞きました。
「お金のため」と予想外の返事をされて一旦引いてしまう男子くんですが、実はなんとなくしっくりきています。「働く理由なんてそんなもんで十分だよな」とさえ思っています。「なんか教師っぽくないし能力も全然足りないんだろうし場違いに見えるけど、『お金のため』って割り切って堂々と言える…そんな生き方ってなんかいいよな」
他の同級生がキラキラとした夢を語っている中で悶々としていた男子くんは、新米くんに対して勝手に「場違い同士」と親近感を覚えます。
ところが、「一日中美術のことだけ考えていたいし、力をつけたいの」と語り出す新米くんに、また勝手に突き放されたような気がして距離を感じてしまう男子くんなのでした。
男子くんは、新米くんが「お金のため」と躊躇なく言えてしまうのが、「あんまりカッコよくない理由なのに自信まんまんに言ってるように見えてちょっとかっこいい」と思ったのに、その自信がもしかして夢とかそういうものに裏付けされたものなんだったら、なんか嫌だなと感じているのです。
【次回予告】
「男子くん編」の最終回です。新米くんから「ライバルになれ!」と言われた男子くん。果たして「夢」を巡るモヤモヤは解消されるのでしょうか。
◇
withnewsでは、しろやぎさんの「あなたそれでも教師ですか」を毎週日曜日に配信予定です。新米くんを軸とした教育現場を描いていきます。
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