連載
#191 #withyou ~きみとともに~
とーやま校長「考え抜いて」 ラジオから声届けた10年、今日で最後
3回にわたってお送りしたとーやま校長インタビュー、最終回です。

2005年からTOKYO FMをキーステーションにJFN系38局で、平日毎日放送されている、「SCHOOL OF LOCK!」(SOL)の「とーやま校長」が、3月をもって退任します。2010年に着任してから10年間、10代リスナーと向き合ってきた校長が感じてきたこと、そして見えてきた「生徒」たちの姿を、シリーズでお届けします。最終回は、普段は声でつながっている生徒たちとの信頼関係、そして未来のカギを握る10代への「ラストメッセージ」です。
<SCHOOL OF LOCK!>
2005年からTOKYO FMをキーステーションにJFN系38局で、月~金曜夜10時から放送。番組を「ラジオの中の学校」と位置づけ、パーソナリティーの「とーやま校長」と、「生徒」に見立てたリスナーたちが、電話やネットの番組掲示板を通じて交流。自由に書き込みをすることができる掲示板に登録した生徒は延べ50万人を超え、中高生からの人気を集める。
とーやま校長は2代目。初代はやましげ校長。教頭もいて、やしろ教頭、よしだ教頭、あしざわ教頭が番組を支えた。PerfumeやMrs. GREEN APPLE、サカナクションなども出演し、番組内に授業(コーナー)を持つ。そして、今年4月からは「さかた新校長」、「こもり新教頭」がパーソナリティーとなることが3月5日(木)の放送で発表された。
真正面から受け取ってくれた生徒たち
退任を発表した昨年10月からは、その総括として、北海道や福島など、全国6カ所に行かせてもらいました。
各会場で100人以上の、普段はラジオの中で会っているみんなと直接会うことができました。
一人1~2分しか話す時間がなかったんですが、僕の顔を見て、涙を流してくれる子たちがたくさんいたんです。
それを見たときに、僕が10代に向けて、自分なりに伝えてきたことを(生徒たちが)真っ正面から受けとって自分の生活や人生に生かしてくれたからこそ出た涙なのかなと、勝手ではありますが、解釈しました。
大人になっても帰って来られる場所
メッセージをくれたその子のラジオネームを見て一気に懐かしい気持ちになったんですよね。
というのも、その子、多分3~4年前によく書き込みをくれていた子なんですよ。電話もしてたかな。
当時も「いい名前だな」って思っていたこととかも一撃で思い出して。
20代に突入していたその子は、flumpoolが帰ってきたっていうことで久々に聴いてくれたみたいです。大人になっても、帰る場所があるんだ、続ける意味ってこういうことなのかなと思いました。
ネガティブの根っこに「ポジティブ」
「ツイッターで言われていた悪口は自分のことじゃないか」とか、SNSでの悩みとかは最近出てきましたけど。
声を寄せてくれる生徒たちから伝わってくる感情で多く感じるのは、「負」です。
もちろん、「こんなくだらないことあったんで聞いてください」っていうのもあるけど、「どうしたらいいっすかね」っていうのがほとんど。
でも、パッと見だとネガティブかもしれないけど、「どうにかしたいと思っているけど、どうしたらいいのかわからない」っていう話。その大元にあるもの・向かいたい先は、絶対的にポジティブなものなのだと思います。
なんで全国ネットに「悩み」?
全国ネットのラジオ番組の中で、誰にもいままで話したことなかった話ができるのはなんでなんだろうって不思議です。
でもそれは、SOLという場所を信じてくれているからだと思うんです。すべての身をゆだねてしゃべってくれているんだと思う。
SOLの職員(スタッフ)やアーティスト講師がつくってくれている雰囲気とか、空気とかを信じてくれているんじゃないかな。だからその空気をつくってくれている全てに感謝しています。
愛くるしくて仕方ない生徒たち
「こいつならとりあえず話聞いてくれるんじゃないか」と思ってもらっているんだと思っています。割と人の悪口好きだし、兄貴分なんて思われる筋合いないっすよ(笑)。友達です。
「閃光ライオット」や「未確認フェスティバル」(10代アーティストのみによるフェス)などでも、生徒に直接会いました。
そんなときに見る生徒たちは愛くるしくてしょうがない。ほんと。
図らずもそうなりましたね。させられたというか。「よく来てくれたなあ」って思います。

とんでもない勇気を持ってるんだぞ!
ラジオも聴いていたけど、電話で曲をリクエストするのすら怖くて、電話番号の最後の2つの数字を押せませんでした。
だから一度も、リクエストしたことないんです。
当然、自分が思っていることをラジオの中の誰かに言う機会なんてなかった。
それなのに、SOLの生徒たちは、まず書き込みをしてくれて、さらに番組からの電話に出てくれて、電話では自分の思っていることをしゃべってくれている。その時点でとんでもない勇気だと思います。
すごいことなんだよ。
生徒たちは「校長ありがとう」と言ってくれるけど、そんな君たちが尊敬してくれているとーやま校長が10代のときにできなかったことを、君たちはもうすでにできているんだぞ。
最後に伝えたいことは
最後に、「SOLリスナーはじめ、10代に向けて伝えたいメッセージを、いつもの黒板に書いてくれませんか…」と、お願いしてみました。

「いつもは『対1人』に向けてやっているからなあ…『10代に向けて』かあ……」と、考える校長。
そして数分後に書き始めたのは…


お!でき…た?

じゃじゃーん!
例えば「ライブが好きだからライブスタッフになりたい」って言ったときに、それだけじゃなくて、深く考えていく事が大事だと思うんですよ。その思いはどこからやってきているのか、思いの先ではどうなりたいのか、というのが大切。
そこを考えて、考えていくと、自分にしかないものが生まれると思うんです。
「音楽が好きでライブで感動した」。そこまでだったら、みんなと一緒。
何で感動したのか、どこで胸を打たれたのか、それを考えていくと、5万人集まったライブでも、絶対に「1人」のできごとになるんですよ。結果、それが個性になる。
なんでもいいんです、毎日食べているお菓子でも、「なんでこれが好きなのか」というのをたどっていくと、それを面白がってくれる人もいるかもしれないし、いつか仕事になるかもしれない。
たどってたどって考えて、自分にたどりついて欲しいなと思います。

シリーズ 「とーやま校長ラストメッセージ」
【退任理由は】第1回 とーやま校長「寂しいし後悔も」 10年関わったSOL、退任決めた理由
【10年の変化】第2回 退任のとーやま校長、「不安だった」生徒からの相談 変われたのは…