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#187 #withyou ~きみとともに~

とーやま校長「寂しいし後悔も」 10年関わったSOL、退任決めた理由

デザイン・野口みな子、写真はTOKYO FM提供
デザイン・野口みな子、写真はTOKYO FM提供

目次

2005年からTOKYO FMをキーステーションにJFN系38局で、平日毎日放送されている、「SCHOOL OF LOCK!」(SOL)の「とーやま校長」が、3月をもって退任します。2010年に着任してから10年間、10代リスナーと向き合ってきた校長が感じてきたこと、そして見えてきた「生徒」たちの姿を、シリーズでお届けします。1回目は、とーやま校長が感じたSOLという不思議な空間、そして「寂しいし後悔もある」と言いつつも10年も務めた校長を退任する理由について聞きました。

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<SCHOOL OF LOCK!>
2005年からTOKYO FMをキーステーションにJFN系38局で、月~金曜夜10時から放送。番組を「ラジオの中の学校」と位置づけ、パーソナリティーの「とーやま校長」と、「生徒」に見立てたリスナーたちが、電話やネットの番組掲示板を通じて交流。自由に書き込みをすることができる掲示板に登録した生徒は延べ50万人を超え、中高生からの人気を集める。

とーやま校長は2代目。初代はやましげ校長。教頭もいて、やしろ教頭、よしだ教頭、あしざわ教頭が番組を支えた。PerfumeやMrs. GREEN APPLE、サカナクションなども出演し、番組内に授業(コーナー)を持つ。そして、今年4月からは「さかた新校長」、「こもり新教頭」がパーソナリティーとなることが3月5日の放送で発表された。

SOLでは全員が「真ん中」

校長を始めて3~4年目の頃だったと思うんですが、黒板に「全員が教室の真ん中にいる」って趣旨のことを書いたんです。

SOLって、全国で何万人という生徒が聞いてくれている、いわばでっかい教室じゃないですか。
でも、そのメッセージを書いた放送では、生徒全員が、教室の真ん中の席に座っているというイメージを持ったんです。
全員がそれぞれ、「君、真ん中に座っているやつ」っていう感じ。

普通の学校なら窓側でクラスの話題に入れない人もいれば、モテない人もいる。
でも、SOLではそんなのどうでもよくて、全員が真ん中にいる。

ラジオの中に世界がある

SOLは、「ラジオの中の学校」をうたっているだけあって、音だけだけど、ちゃんと世界があります。

放送中、ピアノの音が流れたとするじゃないですか。普通のラジオ番組では「BGM」と捉えるかもしれないけど、SOLではBGMじゃなくて、音楽室のピアノなんですよ。

実態はないんですけど、僕ら次第で、そこにいるようにできるというのがSOL。

だから、生徒たちの姿はそこにないけど、「いる」っていう…いるもんだと思って接しています。

そういう積み重ねで、生徒が何万人いようが、「みんなが真ん中の席にいるんだ」と言えるようになりましたね。
生放送中の校長=TOKYO FM提供
生放送中の校長=TOKYO FM提供

かつての自分「俺がど真ん中で君臨しないと」

いつからか、SOLは、自分が出過ぎたらダメだと思うようになりました。

最初は「校長先生として」という意識が強くて、「俺が君臨してど真ん中に立たないといけない」と思ってたんです。
それがいつからか、自分なんてどうだってよくて、聴いてくれている生徒に自分が持ち得たものを、どれだけ渡すことができるか、という思考になっていきました。

この番組はあくまで、生徒のものです。俺のものでは絶対的にない。
自分の番組だったら、アピールするかもしれないですけど、他の現場で「SOL聴いて下さい」と言ったことはほとんどないんです。
 

その子さえ笑ってくれればいい

SOLをやる中での自分のテーマの中に、「どんなことがあっても、生徒を何とか笑わせたい」というのがあるんです。

今日死のうと思っていた子が番組を聞いて笑って、なんかくだらないからまた明日も聞いてみようかなと思ってもらいたい。

メールや掲示板の書き込みから気になった生徒に、放送中に電話をする「逆電」をずっと続けています。どんなシリアスな電話をしていても、生徒を笑わせたい。その一撃は狙いたいなとずっと思っています。
他の子が笑わなくても、その子さえ笑ってくれればいいという気持ちでやっています。

これも、昔は「校長すべってんじゃん」って思われるのがいやだったんですけど、いまは「この子が笑ってるんだからいい」って思うようになりました。

…めちゃめちゃ良い奴ですよ、僕(笑)。

どんだけ悪口言われても関係ないですもん。その子が笑ってるんだから。

そういう感覚は、子どもの頃からあって、親にも感謝しています。
中1のときにクラスの中に発達が遅れている子がいたんです。みんながからかっている中で、その子を守るという立ち位置にいました。
そうしたら、中2でまた同じクラスになって、担任から「あの子頼むな」って言われた。

あのとき、誰に教わったでもなくそういう立ち位置だったのは、父さん母さんの教育があったからだと思う。その土台があってのSOLだと思います。
インタビューでは悩みつつ答えてくれたとーやま校長=丹治翔撮影
インタビューでは悩みつつ答えてくれたとーやま校長=丹治翔撮影

転ばない方法、わかってしまったから…

退任を決めた理由は、いくつもあるんですけど…。

長くやったせいで、転ばない方法をわかっちゃった気がするんですよ。

SOLの校長は、生徒とひたすら向き合い続けるべきだし、分からないなら「分からない」って言っていい。2時間で終わらなくてもいいし、言葉がでなかったとしても、生徒を思ってのそれだったらそれでオッケー。むしろ、そうじゃないといけない。答えがなくても走り出さなきゃいけないし、生徒と一緒に転ばなきゃいけない。

それがスタッフも思い描いている、15年目に突入しているSOLの校長だと思っています。

サッカーで言えば、校長がFWで絶対にゴールを決めないとならない。そして教頭がトップ下です。教頭が色んなパスを出して、例えばとんでもない所にボールが来ても、がむしゃらに走ってシュートを打たないといけないのが校長です。

着任してからは、その思いでやってきました。

だけど、いつの間にか中盤になることもできちゃったんです。おこがましいですけど。

一般的なラジオ番組のパーソナリティーとしてはそれでいいんですけど、SOLとしてはどうなんだろうということを、6年目くらいから思い始めていました。
「答えがなくても走り出さなきゃいけないし、生徒と一緒に転ばなきゃいけない」
「答えがなくても走り出さなきゃいけないし、生徒と一緒に転ばなきゃいけない」
先日も、放送中の電話で「校長がやめるの悲しい」って泣いてくれた生徒がいたんですよ。

グッときたんですけど、「まずい」って泣かなかった。それに、「泣いたら、放送としてもいいものになるだろうな」と俯瞰で思っちゃったんですよ。
そんなこと一切考えずに、電話だけに集中すればいいのに、どっかで思ってしまった。

1、2年目の俺だったら、つられてすごい泣いてたと思うんですけど。
俯瞰することはしゃべり手としては必要なことなんでしょうけど、SOLの校長としてはどうだろうかと思ったんです。

そんなことを考えていたら、ここ2、3年で安室奈美恵さんとか、著名人の引退のニュースを見ることが増えた。
いままでは「もったいないなあ」とか思っていたんですけど、自分事として考えるようになったんですよね。「自分だったら最後何を言うんだろう」とかって。そういうのを自然に考えるようになって。そういう時が来たのかなと。
 

SOLは「得」をとる番組じゃない

周りのみんなからは「なんでそんなもったいないことするの?」てめちゃめちゃ言われたんですよ。
だって、全国ネットだし、僕も音楽好きなんで、そういう好きな人にも会える。でも、周りに言われて「あ、そうか」と気づいたっていう感じでした。

確かに得は得ですよね。

でも、「SOLは得を取る番組じゃないんだよ」っていうのを教育されちゃったっていうか(笑)。

30歳の時だったら、「やめろ」って言われるまでやり続けていたと思う。

…ここまで言ってて、こいつモテようとしてんじゃねえかって思う(笑)。めちゃめちゃかっこいいじゃないっすか、俺。

あと、10代に向けてしゃべるには、年齢が近い方がいいんじゃないかなというのもあります。新しい校長には自分の思うとおりにやってほしいです。
 
自身のインタビューが掲載されたTOKYO FMのタイムテーブル3月号を手に取るとーやま校長=丹治翔撮影
自身のインタビューが掲載されたTOKYO FMのタイムテーブル3月号を手に取るとーやま校長=丹治翔撮影

10代の本音が聞ける場、他にあるかな

寂しさはめちゃめちゃありますよ。後悔も。
でも、SOLのためだと思っての決断だから、間違いないと思います。

4月からも、10代にはなんらかのかたちで関わり続けたいと思っています。
10代には狙っていない面白さがある。

素の10代の本音が聞ける場って、他にあるのかな…。そう考えると、SOLだなって(笑)。
「SCHOOL OF LOCK!」のパーソナリティーとして2010年からの10年間、10代リスナーと向き合い続けてきたとーやま校長。withnewsでは、生徒たちへの思いや、この10年で得たものについてインタビューをしました。3月17日から3回に分けて、毎週火曜日にお届けします。

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