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#11 注目!TikTok
「 #休校チャレンジ 」が生んだ熱狂 TikTokに集まった8千の動画
生徒・学生限定、撮影も家の中のみ。それでも「バズる」動画が続出

「#休校チャレンジ」とは
対象を生徒・学生とし、「自分」をテーマにTikTokで「家の中での撮影限定」で動画を募集。魅力的な動画を作った人には、しんのすけさんが「身を削って」プレゼントをするというものです。

きっかけは、政府が全国の小中高と特別支援学校に臨時休校を要請することを決めた27日の夜。しんのすけさんはTikTokにある動画を投稿しました。
一斉休校に入る子どもたちに向けて「みんなの遊びや勉強はほぼネットでできる」とし、「これを機にTikTok始めたり、Youtubeはじめたり…(中略)…こういう制限された環境の中で思わぬ自分のクリエイティブが発見されます」と休校期間を自宅で楽しく過ごそうと呼びかけたのです。
この動画を紹介するwithnewsの記事が注目されたことも受け、しんのすけさんは知り合いのTikTokerを巻き込んで、3月3日には「#休校チャレンジ」企画をスタートさせました。
投稿された動画は8千件超、「バズる」動画も続出
そして個人で始めたこの企画は、「ほのかな期待」を超えるほどの規模に広がります。TikTokによると「#休校チャレンジ」のハッシュタグに集まった動画は8千件以上。数多の動画であふれるTikTokの中で、100万を超える再生回数、数万件の「いいね」を集める動画が続出。募集開始から約2週間で、動画の総再生回数は驚異の8千万回を超えました。

この企画をきっかけに動画の投稿を始めるアカウントも目立ちました。アニメ「サザエさん」の予告風に1日の出来事を語る動画で人気を集めた大学生Mさん(@pomupomuhurin)は、この企画だけでフォロワーが一気に15万人を突破しました。
@harumiinu__ 今まで描いてきた鉛筆画まとめてみました!過去の栄光にすがるみっともないやつですが頑張ったので...##休校チャレンジ##鉛筆画##橋本環奈##浜辺美波##佐藤健##石原さとみ##広瀬すず##おすすめ乗りたい
♬ アイシテの証明 biz×缶缶 - 缶缶@KANKAN
「神企画だった」絶賛の声

キアヌさんは、企画に賛同した理由を「休校のニュースを知って、単純に子どもたちがかわいそうだなと思いながらも、自分では行動することに結びつかなかった。しんのすけさんの提案を聞いて、乗らない選択肢はないと思った」と話します。
昨年高校を卒業したというamiさんも「自分で参加したいと思ったが、学生という条件に当てはまらなかった。でも同世代だからこそ企画の楽しさがわかるし、協力したいと感じた」と語ります。

企画を通してフォロワーが15万人増え、最優秀賞に決まった大学生Mさんは、自身の動画で「自分の人生が変わったと言っても過言ではありません」とコメント。最終的に、配信には「神企画だった」「休校チャレンジまたやってほしい」などの声が次々と寄せられ、休校という状況下で夢中になれる企画になっていたことが伺えます。

審査員の顔面土砂崩れさんは、企画を振り返って「休校に対して悲観的な意見も多いけど、家の中でできる『#休校チャレンジ』によって、この状況をポジティブにとらえる流れが生まれていたと思う」と話します。
なぜここまで大きなムーブメントになったのか
多くの生徒・学生が参加し、大きなムーブメントになった「#休校チャレンジ」。TikTokというプラットフォームの存在が大きいとしつつも、「どれだけ参加の間口を広げられるかが重要だった」と振り返ります。

そこで、選んだテーマは「自分」でした。「実は言葉のマジックで、結局『自由』って言ってるのと一緒なんだけど、ひとつ設定することで『自分ってなんだろう』『自分の好きなものはなんだろう』っていう考え方をしてくれるんです」
「発信」を自分事にすること
誰でも気軽に動画などを発信できるようになったことについて、「学生の多くは発信することに恐怖感を抱いている」と話すしんのすけさん。
「発信すること、顔出しすることは、叩かれることだと感じている。僕はいわゆる『アンチ』がいることや叩かれることのは当たり前だと思ってほしくないし、誰かを叩いていいわけがないということも伝えたいと思っています」

発信の主体を自分にすることで、発信することの楽しさと難しさも知ることができるはずーー。そんな思いからも、「だからこそ、発信の参入障壁は低ければ低い方がいい」と考えています。「TikTokはバットを振って当たる確率がYouTubeより明らかに高い」という言葉に、審査員のTikTokerたちも深くうなずきました。
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新型コロナウイルスによって、未だ先の見えない「自粛ムード」。ライブやイベントばかり取り沙汰され中止や延期になり、子どもたちの学校が休校になった一方、大人たちは満員電車で会社に向かうなど、対応のアンバランスさへの疑問は尽きません。それは授業を受ける機会や卒業式などを見送られた子どもにとっても、「仕方がない」だけで納得できる状況ではないのではと想像します。
しかし、そんな子どもたちに大人は何ができるでしょうか。学校に代わる居場所だけではなく、失われた学生生活への「不完全燃焼」を残さないためにも、今回の「#休校チャレンジ」はひとつの着火剤の機能を担っていたのではないかと感じます。「最高の企画だった」「またやってほしい」ライブ配信に並んだコメントを読んで、今こそ子どもたちが没頭できるコンテンツが必要だったのだと実感しました。