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新型コロナ患者の対応率先、自衛隊中央病院とは 河野大臣もツイート

自衛隊中央病院の感染症病棟=昨年5月、東京・世田谷。藤田直央撮影(以下同じ)
自衛隊中央病院の感染症病棟=昨年5月、東京・世田谷。藤田直央撮影(以下同じ)

目次

「新型コロナウイルス感染症等の患者さんを受け入れる病院」。HPでこう周知するのが東京都心にある自衛隊中央病院です。有事に備える自衛隊の医療機能の中核。首都直下地震に備え訓練を重ねてきましたが、今は新型コロナ対応に欠かせない存在です。ある意味「日本最強」の病院の生かし方をめぐり、考えておくべきことは多そうです。(朝日新聞編集委員・藤田直央)

自衛隊中央病院や陸上自衛隊衛生学校がある陸自三宿駐屯地の正門。病院は左奥の白い建物
自衛隊中央病院や陸上自衛隊衛生学校がある陸自三宿駐屯地の正門。病院は左奥の白い建物

想定外の対応率先

世界を揺るがす新型コロナ。自衛隊関連の病院も患者への対応を担っており、河野太郎防衛相は3月15日までの対応をこうツイートしました。

その中心となるのが自衛隊中央病院。東京都世田谷区の住宅街に囲まれた陸上自衛隊の三宿(みしゅく)駐屯地にあります。隣には各地の部隊で救護や治療を担う衛生科隊員を育てる陸自衛生学校もあります。

自衛隊中央病院が新型コロナの患者を受け入れられるのは、感染症に備える政府の方針に沿って、院内で他のエリアとは隔離された感染症病棟が設けられているからです。私は昨年に見学していて、接触や空調に細心の注意を払う感染症患者専用の病室はこんな様子でした。

自衛隊中央病院の感染症病棟の病室
自衛隊中央病院の感染症病棟の病室

自衛隊の医官約1200人のトップでもある上部泰秀病院長は年明け、HPでこう挨拶を述べました。

「今年はいよいよ東京オリンピックが開催されます。大変楽しみな1年になりそうです。しかしながら、わが国を取り巻く安全保障環境は一段と厳しさを増しつつあり、首都直下や南海トラフ地震、台風豪雨等の発生や新型インフルエンザの流行も強く懸念されています」

想定外だった新型コロナへの対応を、いま自衛隊中央病院は率先しているわけです。

震災訓練で能力実感

自衛隊中央病院は1956年、自衛隊員と家族の診療や、自衛隊の医療技術の訓練の場として開院しましたが、93年から一般の人も利用できるようになり、2016年には東京都の二次救急医療機関に指定されました。地域の医療を支える存在でもあるのです。

自衛隊中央病院の1階ロビーにあるエンブレム。山と桜・錨・翼は陸・海・空、杖と蛇は医療を表す。
自衛隊中央病院の1階ロビーにあるエンブレム。山と桜・錨・翼は陸・海・空、杖と蛇は医療を表す。

私が昨年5月に病院を訪れたのは、最大震度7の首都直下型地震に備える訓練の取材でした。

想定はこうです。一般の人も訪れる通常診療をしていたところへ発災。翌日にかけ活動を続ける態勢を整え、大量のけが人の受け入れを始める――。けが人を治療の優先度で仕分けるトリアージや、病院屋上にある大型ヘリポートから都心外の病院への搬送など、訓練は半日かけて行われました。

医師や看護師のほとんどは、隣の衛生学校で自衛官として戦場での応急処置も学びます。緊迫した訓練を目の当たりにして、震災が起きた時の病院として、自衛隊中央病院は「日本最強」かもしれないと思いました。

「むちゃ高いサバイバビリティー」

設備面でも、過酷な状況で機能するよう造られた自衛隊中央病院の強さを感じました。

「この病院はサバイバビリティーがむちゃくちゃ高い。日本有数です。だから震度7想定の訓練ができる」と幹部は言います。サバイバビリティーとは軍事的には、攻撃を受けても任務遂行能力を保てる能力といった意味です。

2009年の改築の際に免震工事を終えており、世田谷で震度5弱だった東日本大震災の最中も手術に支障がなかったほどです。自前の発電機用の燃料5日分、患者用給食5日分、上水道3日分、下水槽3~5日分を確保しています。

もともと自衛隊の組織として即応を重んじることもあり、医師110人、看護師300人を含む職員約900人のうち6割が2時間以内に出勤できるそうです。職員らはこの日の訓練で午前にそうした初動を確認した上で、午後のけが人受け入れに臨んでいました。

「日本最強」故の不安

この訓練の様子は「首都直下地震に備える『日本最強』自衛隊病院 その能力『むちゃ高』」というタイトルの記事にしました。ただ、首都直下地震への対処を具体的に考えていくと、中央病院に安易に頼るのは考えものだとも思いました。記事ではこう指摘しました。
中央病院がしっかりしているからといって、首都直下地震の際にあれこれと頼られると、「最後の砦」として機能しなくなるかもと考えたからです。

今回の訓練は、重傷者の救命に治療が重い役割を果たす発災72時間までを想定し、「医療機関」として従来の入院患者をケアしつつ大量のけが人を受け入れるというものでした。

ただ、首都直下地震で中央病院が直面するのはそうした事態だけではないでしょう。集合住宅も多い都心で住む場を失い生活に困る被災者が、震災に強い中央病院のある三宿駐屯地という「公的施設」を頼って集まりそうです。
自衛隊中央病院での首都直下地震対応訓練で、担架を持ち正面玄関を出る陸上自衛官
自衛隊中央病院での首都直下地震対応訓練で、担架を持ち正面玄関を出る陸上自衛官

病院長が語る「難しさ」

対応の難しさについては、上部病院長も語っていました。

「首都直下地震が起きたら、何といってもまず職員自身と家族が大丈夫か、そして病院の機能は大丈夫かを確かめます。通院患者もいたらどう対応するかも考えないといけない」

「発災から72時間が重要です。速やかに地域の医療機関などと連携して大量のけが人を受け入れる態勢をつくる。人やものを官民一体でうまく調整することがこの訓練の難しさです」
自衛隊中央病院で首都直下地震対応訓練の合間に取材に応じる上部泰秀病院長
自衛隊中央病院で首都直下地震対応訓練の合間に取材に応じる上部泰秀病院長

震災とコロナ、似たジレンマ

震災訓練を取材したその記事を、私はこんな風に締めくくりました。

自衛隊中央病院がその強靱さ故に都心の被災者の駆け込み寺になり、病院自体にかかる様々な負担を「トリアージ」できずに機能不全になっては元も子もない。住民自身が防災意識をより高める一方で、それでも震災がすさまじく都心でまともに機能する大病院が自衛隊中央病院などわずかしか残らないといった事態に備え、政府は首都直下地震の際の中央病院への自衛隊内外からの支援について検討を進めるべきだ――。

新型コロナ対応では、自衛隊中央病院は3月12日付で、病院長からのこんな「皆様へのお願い」をHPに載せました。首都直下地震対処と似たジレンマをどうすればいいのか、考えさせられました。

「当院は感染症指定医療機関として新型コロナウイルス感染症の確定患者、疑似症患者の診療を担当する役割を担っており、その役割を果たすためにも、行政検査として適応がないと判断される検査については当面実施しない方針です。当院の果たすべき役割と上記方針についてご理解をお願いいたします」

新型コロナウイルスについての対応方針が掲載された自衛隊中央病院HP
新型コロナウイルスについての対応方針が掲載された自衛隊中央病院HP 出典:自衛隊中央病院

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