連載
#26 コミチ漫画コラボ
「当たり前をうまくできない」居場所ない人たちが描く、私たちの漫画
「居場所がない」という悲痛な思いを抱える日々の中で、漫画の主人公たちは拾い上げていくのでしょうか。
あの人にはできるのに、私にはできない。みんなそつなくこなしているのに、私は投げ出してしまう……そんな「ちゃんとできない」が積み重なって、あふれそうになる思いが痛いほど伝わります。
病院の先生の「あなたのような人はたくさんいますよ」という言葉で視野が広がり、見えるようになるのは、「あなたはここにいていいんだよ」というメッセージ。そして、ひとりひとりが苦しさを隠し続ける私たちのおかしさです。生きづらさの根源は何なのか、考えさせられる作品です。
仲がいい友達グループと離れ、クラスになじめず学校に行かなくなった中学生の女の子。家にいても、「きょうも行かなかったね」と話しかける親や、封筒いっぱいに入った同級生の「お手紙」に心休まらない気持ちが繊細に描かれています。
後半はその女の子が大人になったエピソード。「学校に行かないことを認めて欲しかったそんなわたしは、」というタイトルの意味が明かされ、「ああ、よかったな」と思わずつぶやいてしまいました。今しんどい人たちにも、こういう「先輩」が社会に確かにいることを知ってもらえたらいいなと思います。
モヤモヤとした気持ちを抱えながら学校生活を送る「ケイちゃん」は、毎日明るく過ごしている(ように見える)クラスメートの「マチちゃん」に、うらやましさを抱きます。しかしマチちゃんは彼女なりの苦しさを抱えています。物語はモノクロのトーンで描かれていきます。
しかしある日、二人がとある場所でいつもと違う時間を過ごすと、作品のトーンは「暖かみのあるオレンジ」に切り替わります。色の切り替えが、ケイちゃんの心の変化のようです。色を取り戻した毎日が、彼女を明るく照らしますように。
クラスのどこにも居場所がない。夏休みは、自室で毛布をかぶり、「新学期」という現実の襲来に備える--。主人公が他人と思えないほど、共感を持つ描写です。
圧巻なのは、終盤に登場する描写です。真っ暗な部屋とは対照的に、淡い色調で描かれた、明け方の街並み。それを眺め、「心は生きている」と知る、主人公の涙の美しさ。言葉よりも、物言わぬ景色に励まされることがある。読み終えた後、他の人にとっての「原風景」を知りたくなりました。
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