連載
#120 #withyou ~きみとともに~
天パはつらいよ 前髪クルクル、何が悪いの!癖毛の仕組み調べてみた
天然パーマに悩まされてきた記者が、そもそも、どのようにして髪が曲がるのかのメカニズムを調べました。
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#120 #withyou ~きみとともに~
天然パーマに悩まされてきた記者が、そもそも、どのようにして髪が曲がるのかのメカニズムを調べました。
思春期の時から天然パーマに悩まされています。湿度の高い時期になると、午前が終わる頃には前髪がクルリン。「縮毛矯正」もありますが、それでも癖毛は気になるもの。特に中高生ともなると死活問題ではないでしょうか。そもそも、どのようにして髪が曲がるのかのメカニズムを調べました。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)
私が中学生だった15年ほど前、周りでは前髪をストレートにする髪形が流行していました。男女問わず目指していたのはサラサラの直毛。湿気を帯びると曲がる私の前髪を見て、心ない同級生が「ワカメ」と言ってきたことを今でも覚えています。
高校生になると、中学校ではできなかった縮毛矯正をかけ、前髪だけがピンと浮いていたことを思い出しました。今思うと恥ずかしい髪形ですが、そのような同世代は街中にあふれていました。私の地元・福島だけでしょうか。お隣の仙台でも見かけた気がします。
そもそも縮毛とはどういう意味なのでしょうか。コトバンクによると「ちぢれ毛のこと。ニグロイドなどに特徴的な形質であるが、これとは別に、直毛の多いモンゴロイド、波状毛の多いコーカソイドにもみられることがあり、遺伝性があると考えられている」。ちぢれた癖を持つ地毛が縮毛で、それを矯正するのが縮毛矯正なのですね。
同じように天パに苦しめられた人に話を聞きました。東京都豊島区に住む会社員男性(34)は「私は本当にクルクルだったので『鳥の巣』とか『ボンバヘ(ボンバーヘッド)』とか呼ばれていました。これに関しては親の癖毛を苦々しく思ったこともありました」と話します。今は全体に縮毛矯正をかけているためストレートですが、今度は全体がペタッとしてしまう状況。
「髪は個人の自由なので何を言われても気にはしませんが、なりたい髪形になれないという点では天パはつらいです。維持にもお金がかかりますし」
なぜ髪にあれだけ苦しめられたのか。その答えはいまだに出ません。癖が出る仕組みだけでも知りたい、と調べました。2009年6月17日付の朝日新聞夕刊によると、癖毛の構造は以下のようになっているそうです。
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癖毛は、毛の中にある2種類の繊維状の細胞が偏って分布して起きていることを、花王の研究グループが画像化して明らかにした。癖毛を直す製品の開発につながる可能性がある。
髪の毛は表面を覆うキューティクルの下に、微細な繊維状のコルテックスという細胞が縦方向に束になって並んでいる。コルテックスは構成するたんぱく質の違いでオルト、パラという2種類の細胞があることが知られており、研究グループは蛍光色素で染め分ける方法を開発。約230人の日本人女性の癖毛と直毛を調べた。
すると、直毛では両者の細胞が同心円状に並び、大きな偏りはなかったのに対し、癖毛では曲がった部分の外側にオルト細胞が多く、内側にパラ細胞が多いことが画像で示された。
どのように遺伝しているかは分かっているのでしょうか。こちらも2007年11月25日朝日新聞朝刊にQ&A形式で上記の記事よりも分かりやすいものがありました。
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Q.人間って髪の毛も人それぞれですね。
A.髪の毛の特徴は、遺伝子が決めています。DNAに、どんな髪にするのかが記録されているのです。まだ詳しいことはわかっていませんが、髪の毛の形と色を決める設計図は別々にあって、それぞれいくつかの遺伝子が関わっているようです。
Q.自分の髪はまっすぐ。でも、母は少しカールしています。親子なのに似ていません。
A.子の遺伝子は両親の遺伝子がミックスしたものですから、父母のどちらかとそっくりになるとは限りません。兄弟や姉妹で違うこともあります。
Q.どうして、私のお母さんの髪の毛はカールしているのでしょうか。
A.髪の毛の太さは0.03~0.1ミリくらい。断面を電子顕微鏡で拡大すると、太巻き寿司のような形をしています。具にあたる中心の「メデュラ」のまわりにご飯の「コルテックス」があって、いちばん外側を海苔の「キューティクル」が巻いています。
Q.細いのに複雑ですね。
A.キューティクルは髪の表面を魚の鱗のように覆っていて、つやを生みだしています。癖毛とかかわっているのは、その内側のコルテックス。長さ0.1ミリほどの細胞で、髪の毛の先から根元までの8割ほどを占めます。これに含まれている繊維質には、まっすぐに並んだものと、ねじれたものの2種類があります。まっすぐのほうがねじれたほうを取り巻くようにきれいに並ぶと直毛になって、かたよって並ぶと癖毛になります。
Q.癖毛の人は、死ぬまでずっと癖毛のままなのでしょうか。
A.年をとるにつれて癖が強まり、細くなってツヤも減ってきますが、大きくは変わりません。
最近は縮毛矯正の技術も進化し、ストレートになりすぎない自然な仕上がりもあります。ただ、かけてしばらく経つと癖とまた対面することになります。だいぶ昔の記事ですが、2002年6月28日付朝日新聞朝刊に、仲間の気持ちを代弁する話が載っていました。
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「何よりも嫌な雨の日の毛髪」23歳大学生(神戸市)
雨が降ると、癖毛の私の髪は水分を含み、こわばる。靴がぐしょぐしょにぬれるより、じめじめと湿気を感じるより、普段に比べて自由が利かなくなるより、そして、ナメクジを思わず踏んでしまうより、私にとっては嫌なことだ。
髪の毛をブローしても、外に出れば元のもくあみ。我慢できない私は、早速、ストレートパーマをかけてもらうために美容院に行く。「昨日は雨で大変だったでしょう」と美容師さん。気持ちを察してくれたことにうれしくなり、いつになくべらべらと美容師さんとしゃべる。
梅雨のシーズンはストレートパーマがキャンペーン価格となる店が多いようだ。傘と同様、このパーマは季節商品なのである。
癖は根深い問題です。テレビなどで活躍する芸能人はどのように天パと向き合ってきたのでしょうか。後編では、最近テレビでよく見かけるずんの飯尾和樹さんに、天パに対する考え方を聞きました。
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