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2019年05月30日

「個性だから」で片付けないで 共感しづらい「誰かの悩み」を考える


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共感しづらい「誰かの悩み」を考える(写真はイメージ)

共感しづらい「誰かの悩み」を考える(写真はイメージ)

出典: PIXTA

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「恥ずかしがり屋」「引っ込みがち」など、一見、「個性」に見えるものに、当事者が深く悩んでいるとしたら……? 場面緘黙(かんもく)という症状の人は、言いたいことがあるのに声が出なくなることに苦しんでいますが、はたから見ると、個性だと片付けられがちです。「個性」を尊重することは大事です。たくさんの個性が認められる社会は、誰もが望んでいます。しかし、本人も変えたいと思っている悩みは個性と言えるのでしょうか? 多様性が認められつつある時代、個性との向き合い方について考えます。


「本人の問題」というニュアンス

「個性」とは、それはその人がその人であることの証しです。しかし同時に、「他人とは違う」という意味で”短絡的に”使用される恐れもあります。場面緘黙(かんもく)という症状の取材のなかで、そんな考えが芽生えました。

場面緘黙とは、言葉を発することを求められる特定の場面で、話すのが難しくなる状態が1カ月以上続く症状です。家の中などでは思い通りに話すことができます。しかし、人に注目されることに非常に敏感になり、例えば学校の授業で先生にあてられたときなど、本当は言いたいことがあるのに、声を出せなくなってしまいます。

写真はイメージ

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出典: PIXTA

取材した当事者は、物心ついた頃には家の外では話すことができませんでした。長い間「恥ずかしがり屋」「引っ込み思案」など、本人の「性質」「個性」としてみなされていたといいます。そして、生活に支障が出ているのに、「本人の問題」として適切な対応をとられていませんでした。

結果、当事者は「他の子はできるのに、どうしてできないのだろう」と自分を責め、年を重ねるごとに人とのコミュニケーションへの不安が強くなっていました。「場面緘黙」という症状であることを知るまで、人とつながれる実感を得られないまま、それは自分の「性質」のせいで、努力不足だと感じていたのです。

出口があるトンネルであるとわかったのは、当事者が大人になってからでした。

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出典: PIXTA

前提の問題として、「場面緘黙」という症状の認知が十分に広がっていないことがあります。しかし、当事者が困っているのが「見えている」のに、私たちは見過ごしてしまうことができる、という別の問題が潜んでいると私は感じています。

「自分としては『話せない』のに、周囲に『話さない人』と決めつけられていたのがつらかった」と当事者は語ります。

もしかしたら、私たちは「違いに寛容になる」ことが目的になってしまい、誰かのわかりにくい、共感しづらい悩みを、「個性」という便利な言葉で片付けてしまっていないでしょうか。

学校に行かないことも「個性」?

私は中学1年の途中から卒業まで学校に行けなかった、いわゆる「不登校」でした。

いじめを受けた訳ではないですが、小学校の6年間ずっと同じクラスだったからか、中学生になって、突然増えた友だちの数に戸惑い、その関係に悩みました。学校に行くと1時間目の途中で決まってお腹が痛くなり、朝も起きられなくなり、次第に学校から足が遠のいていきました。

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出典: PIXTA

当初は周囲の反発もありましたが、行けないことが習慣になると、徐々に不登校の状態が許されるようになりました。

しかし私自身は、行きたいのに「行けない」という思いと、学校は苦しい場所なので「行かない」という思いの狭間で揺らぐ日々が続きました。

そんなとき、「学校に行かないことも個性だから」と言われたことがあります。声の主が私を肯定し、はげまそうとしてくれたのはとてもよく理解しています。実際、不登校を受け入れてもらえたことで私の肩の荷は少しおりました。

でも、どうしても心にひっかかるものがありました。私が困っていることは「この先私はどうなってしまうのか」「もう勉強にはついていけないんじゃないか」という不安でした。でも、「個性」という印籠を出されると不思議と口出しができません。「それが私なのだから」、できないことには、あがかない方がいいのだと。

自分でも受け止めきれないのに、これは「個性」なのでしょうか。

「個性」で片付けてしまわないで

もちろん、不登校と場面緘黙には違いがあり、当事者によって苦しみも変わってきます。同時に、「個性」という言葉で、ふさいでしまっている誰かの口があるかもしれないことを、気づかせてもくれます。

個性を認めることは目的ではなく、他者と関わり合うための手段のはずです。そして、本当の多様性とは、異なる者同士が関わり合える接点を探すこと。

そのために重要なことは、それが「個性」かどうかを判断することではなく、目の前の人の「困り感」にどれだけ想像力を働かせることができるかだと思います。その一助となるために、記事を書きました。

写真はイメージ

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出典: PIXTA

「個性だから」「そういう人だから」と思う前に、そう話す前に、一度手を止めてみてもらいたい。

常には難しいかもしれないけれど、「関わり合いたい」と思う気持ちを、少し底上げしてみてほしい。それが、わかりづらい「誰かの悩み」や、共感されづらい「私の悩み」をそっと軽くしてくれると思うのです。

 

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「ぼくはがっこうへいっていない」 不登校の子の気持ち、描いた漫画
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漫画「学校へ行けない僕と9人の先生」より
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