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「偏見があった」発達障害、マンガで伝える 始まりは「母のお弁当」
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言葉で説明することは苦手だけど、得意なマンガで発達障害を伝えたいーー。そう思い、マンガを描き始めた女性がいます。神奈川県在住のマーブルあやこさん(39)。プログラミングやデザインを学び仕事につなげる、発達障害の人向け就労移行支援施設に通っています。今後は「マンガを仕事にしていきたい」と話します。(withnews編集部・河原夏季)
あやこさんは37歳のとき、アスペルガー症候群と診断されました。以前からパニック障害にも悩んでいたといいます。カフェや美術館のスタッフとして働いたことはありましたが、職場で人の入れ替えがあると強いストレスを感じたり、人が怒られている姿を見るのがつらかったり、長続きしませんでした。原因不明の体調不良も重なり、「働くのは難しい」と思うようになったといいます。
幼い頃からマンガを読むことが好きで、ノートにマンガを描いていたというあやこさん。大学ではアートの勉強をしていましたが、「アートが仕事につながるのは、教授になるとか一握りの人」と思い、仕事にするという選択肢はありませんでした。
でも、無職で何もしていなかった時期に「好きなことを仕事にしたい」と思うようになり、マンガ教室に通いました。
マンガをいくつかの出版社に持ち込んだものの、編集者には「『あなただから描けること』がない」と言われたといいます。そこで考えたのが、母親のことです。
あやこさんの母親も発達障害の疑いがありました。お金の計算ができなかったり、行動が理解できなかったりで、あやこさんはずっと違和感を持っていたそうです。精神科の医師に母親の状況を相談したこともありました。
でも、医師から返ってきた言葉は「もっと発達障害について勉強して、知ってください」。
あやこさんは、恥ずかしさを感じました。「何も知らないくせに、母親を障害者にして自分の気持ちを収めようとしていました。発達障害と分かっても何も変わらないのに。その後、本を読みあさったり、当事者が集まるチャットで話を聞いてみたりしました」
そして、就労移行支援施設に通う直前、中学校時代の母親との体験をもとにマンガを描きました。母親が作ったお弁当がきっかけで、クラスメイトに「臭い」と言われた思い出です。
臭いの原因はニシンのお漬物。マンガでは「もっとフツーの弁当がいいの!」という主人公に、母親は言います。
「フツーフツーって言われても お母さん普通がわかんないっ」
施設のスタッフにマンガを見せたところ、「いいね!当事者について描いてみない?」と誘われました。
あやこさんは当初、発達障害をテーマにすることに抵抗があったといいます。母親のマンガでは、発達障害という言葉は出していません。当事者である自分を出すことも気が進みませんでした。
「『発達障害』という言葉に偏見がありました。「障害」は重い言葉だと思います。世間的にも偏見が多いし、誤解も多い。自分が差別される可能性もあって怖かったです。でも、施設で『当事者が描いていることがおもしろいんですよ』と言われて、考えが変わりました」
学習障害。「読む」ことについて pic.twitter.com/bcglAoo4py
— マーブルあやこ (@marble__ayako) 2018年9月15日
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