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連載

#89 #withyou ~きみとともに~

「偏見があった」発達障害、マンガで伝える 始まりは「母のお弁当」

マーブルあやこさんが実体験をもとに描いたマンガ「なずなのママ」
マーブルあやこさんが実体験をもとに描いたマンガ「なずなのママ」 出典: マーブルあやこさん提供

目次

言葉で説明することは苦手だけど、得意なマンガで発達障害を伝えたいーー。そう思い、マンガを描き始めた女性がいます。神奈川県在住のマーブルあやこさん(39)。プログラミングやデザインを学び仕事につなげる、発達障害の人向け就労移行支援施設に通っています。今後は「マンガを仕事にしていきたい」と話します。(withnews編集部・河原夏季)

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<発達障害>
生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチから、生きづらさや困難が生まれる障害
発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?イラストで解説!

「働くのは難しい」

あやこさんは37歳のとき、アスペルガー症候群と診断されました。以前からパニック障害にも悩んでいたといいます。カフェや美術館のスタッフとして働いたことはありましたが、職場で人の入れ替えがあると強いストレスを感じたり、人が怒られている姿を見るのがつらかったり、長続きしませんでした。原因不明の体調不良も重なり、「働くのは難しい」と思うようになったといいます。

<自閉症スペクトラムの主な特性>
・言葉のコミュニケーションが苦手
言葉の裏にある意味をくみとるのが難しい など
・人と関わるのが苦手(対人関係や社会性の障害)
目を合わせない、空気を読むのが苦手 など
・こだわりや興味に偏りがある
予定が変わるとパニックになってしまう、同じ動きを繰り返す など

診断基準によっては広汎性発達障害・自閉症・アスペルガー障害などの名前で呼ばれることもあります。
発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?イラストで解説!

「あなただから描けること」は?

幼い頃からマンガを読むことが好きで、ノートにマンガを描いていたというあやこさん。大学ではアートの勉強をしていましたが、「アートが仕事につながるのは、教授になるとか一握りの人」と思い、仕事にするという選択肢はありませんでした。

でも、無職で何もしていなかった時期に「好きなことを仕事にしたい」と思うようになり、マンガ教室に通いました。

マンガをいくつかの出版社に持ち込んだものの、編集者には「『あなただから描けること』がない」と言われたといいます。そこで考えたのが、母親のことです。

あやこさんの母親も発達障害の疑いがありました。お金の計算ができなかったり、行動が理解できなかったりで、あやこさんはずっと違和感を持っていたそうです。精神科の医師に母親の状況を相談したこともありました。

マーブルあやこさんが実体験をもとに描いたマンガ「なずなのママ」
マーブルあやこさんが実体験をもとに描いたマンガ「なずなのママ」 出典:マーブルあやこさん提供

発達障害疑いの母をマンガに

でも、医師から返ってきた言葉は「もっと発達障害について勉強して、知ってください」。

あやこさんは、恥ずかしさを感じました。「何も知らないくせに、母親を障害者にして自分の気持ちを収めようとしていました。発達障害と分かっても何も変わらないのに。その後、本を読みあさったり、当事者が集まるチャットで話を聞いてみたりしました」

そして、就労移行支援施設に通う直前、中学校時代の母親との体験をもとにマンガを描きました。母親が作ったお弁当がきっかけで、クラスメイトに「臭い」と言われた思い出です。

臭いの原因はニシンのお漬物。マンガでは「もっとフツーの弁当がいいの!」という主人公に、母親は言います。

「フツーフツーって言われても お母さん普通がわかんないっ」

マーブルあやこさんが実体験をもとに描いたマンガ「なずなのママ」
マーブルあやこさんが実体験をもとに描いたマンガ「なずなのママ」 出典:マーブルあやこさん提供

「発達障害」への偏見

施設のスタッフにマンガを見せたところ、「いいね!当事者について描いてみない?」と誘われました。

あやこさんは当初、発達障害をテーマにすることに抵抗があったといいます。母親のマンガでは、発達障害という言葉は出していません。当事者である自分を出すことも気が進みませんでした。

「『発達障害』という言葉に偏見がありました。「障害」は重い言葉だと思います。世間的にも偏見が多いし、誤解も多い。自分が差別される可能性もあって怖かったです。でも、施設で『当事者が描いていることがおもしろいんですよ』と言われて、考えが変わりました」

マーブルあやこさんのマンガ「発達障害実録漫画〜フカタケさんの場合〜」
マーブルあやこさんのマンガ「発達障害実録漫画〜フカタケさんの場合〜」 出典:マーブルあやこさん提供

説明することが伝わる一歩


いま、施設で交流のある人や自身の体験をもとにマンガを描いて、LINEマンガインディーズツイッターなどで発信しています。発達障害を理解し、当事者と話すことで受け止めも変わってきました。

「障害を理解していない人からは、『努力不足』や『だらけている』と言われることもありますが、そうではありません。理由があるということは、『発達障害』と説明しないと伝わらないと思います。説明して初めて『話を聞こうか』と言ってもらえます」

「わたしの母も困った人ですが、『発達障害』のことや行動の理由を知ると許すことができるんです。以前は『なんでこの人から生まれて来ちゃったんだろう……』と思うこともありましたが、今は母のことが大好きです」

あやこさんは、言葉で説明することが苦手で、たまに「言いたかったことと違うことを言ってしまう」といいます。特に、発達障害は「言葉で説明するのには無理がある。マンガを使うとちょっと笑えたり、ソフトに伝えられる」と話します。

就労移行支援施設に通えるのは2年で、まもなくその期間が終わります。就職活動を控えていますが、今後のビジョンは明確です。「得意なマンガを仕事にして、発達障害について発信していきたいです」
 
マーブルあやこさんのポートフォリオはコチラ。


【お知らせ】トークイベントを開きます


10代のハッタツ・トーク!センパイ当事者3人の『ワタシ』的生き方

 11月10日(土)、発達障害がある10代の方々を対象にトークイベントを開催しました。

 発達障害の当事者であり、自分らしく生きていらっしゃる以下3名が、小中学校のころの生きづらさや今について語りました。

動画やSNSなどで発達障害について発信している 彩乃さん
15歳で「HORIZON LABO」を始めたコーヒー焙煎士 岩野響さん
NPO法人AVENGE OF MISFITS 代表理事 池田誠さん  

 「学校生活・友人関係がうまくいかない」「親とどうしても通じ合えない」「このまま生きていって、進路やその先の生活は大丈夫だろうか」など不安に思っている人のヒントになる話・共感できる話がたくさんあります。

 発達が気になる子どもの親向けポータルサイト「LITALICO発達ナビ」さまとの共催です。イベントの詳細は、発達ナビさまのサイトをご覧ください。

 イベントの様子は、ハッシュタグ「#ハッタツトーク」を付けてツイッターで発信しました。2019年5月ごろまで動画でもご覧いただけます。
 
ハッタツ・トーク!イベント動画はコチラ
 
 

 withnewsは4月から、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」を始めました。日本の若い人たちに届いてほしいと、「#きみとともに」もつけて発信していきます。以下のツイートボタンで、みなさんの生きづらさも聞かせてください。


みんなの「#withyou #きみとともに」を見る

 

いろんな相談先があります

・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト
・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト

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