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2018年10月17日

親が夫婦別姓、子どもの本音を聞いてみた「困ることはない。以上」

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 ツイッターなどSNS上で選択的夫婦別姓の議論になると、夫婦の名字が違うことで「いじめられる」「子どもがかわいそうだ」という意見が反対する人から出てくることがあります。本当にそうなのでしょうか? 父母の姓が違う1995年生まれの子どもたち3人に体験を語ってもらいました。出てきたのは「勝手にかわいそうと思わないでほしい」という思いや、説明しやすい制度がないからこその「いじり」の経験でした。

両親が別姓の子どもたち 「当たり前」だったから…

 「家の中って名字で呼ばないし、正直意識したことがなかった」
 そう振り返るのは、弁護士として法律事務所への就職が決まっている日高稔基さん。小さな頃から表札に二つの名字があるのが「当たり前」でした。

 両親は共働きで事実婚。会社役員として活躍する母は、仕事で使ってきた名字に思い入れがあったそうです。

 初めて別姓を意識したのは、学校の連絡網を見て「他の家族の名字は同じだ」と気づいたとき。ただその時も「へー。名字が同じ家族の方が『普通』なんだ」と思っただけだったそうです。

 会社員の松浦将也さんも、両親が別姓です。行政書士の母は自分の姓にアイデンティティーを感じていて、変えなかったといいます。

 日高さんと同じように小学校の頃、連絡網を見てまわりの家庭は名字が同じだと気づきました。さらに、クラスメートから「結婚したら名字は同じじゃないといけないのでは」と言われ、2人がペーパー離婚していたことを知りました。

 「名字よりも『離婚』ということ自体がショックでしたね。マイナスなイメージだったので」と話します。

 大学生の井田凌我さんは、高校3年生の時、不仲だった両親が離婚しました。

 名字をどうするか尋ねられ、「自分が20年近く使ってきた名前。愛着もあり、変える理由がないな」と思い、父の姓を名乗っています。

 「ただ、考え方は母に近かったので、ともに生活するのは母を選びました」。その後、一緒に暮らす母が再婚したため、違う姓となっています。

「子どもがかわいそう」の反対意見 本当にそう?

 結婚の時に、夫婦で同姓にするか別姓にするかを「選べる」ようにする選択的夫婦別姓制度。制度導入を希望し、訴訟を起こしている人もいます。

 名前って愛着のあるものです。制度が導入されても、同姓にしたい夫婦は「同姓婚」を選べばいいだけ。選択肢が増えて損をする人はいないだろうに、なぜ導入されないのだろうと思っていました。

 ネット上で議論を追っていると、反対する意見にも偏りを感じました。「子どもがかわいそう」や「家族の一体感がなくなる」といった指摘には「子どもは本当にそう感じているのだろうか」と疑問を持っていました。

 そこで、今回集まってくれた3人に、自身の体験や名字への考え方、選択的夫婦別姓の議論について感じていることを聞きました。

――ネット上の議論などで、別姓導入に反対する人が「子どもがかわいそうだ」と主張することについてどう思いますか?

 

日高さん

感じたことがないので、「自分たちのイメージで語ってるな」と思います。 名字が違うだけで、あとは周りの家族と同じように過ごしてます。何でそんな考え方が出てくるのか分からないですね。

 

松浦さん

養子縁組とか、いろんな家族がすでにたくさんありますよね。でも、血のつながりがなくても仲良く過ごしている家庭ってたくさんあると思います。

 

松浦さん

父母の名字が違うだけで、仲も悪くない家庭。どうしてそういう考えになるのか、正直分からないです。

 

井田さん

思い込みじゃないかと…。その意識を変えていってもらうしかないのかな、と思います。

 

井田さん

母の姉は外国人と結婚しているので、名字の違う家庭を持っていますが、仲が良いですよ。

――「何で両親の名字が違うの」と聞かれて、嫌な思いをしたことはないですか?

 

井田さん

僕は離婚が数年前ということもあり、母と違う名字について聞かれたこと自体が全然ないですね。

 

日高さん

小学生の頃、自宅に遊びに来た友達が表札を見て聞いてきましたけど、むしろ「違う方がかっこよくない?」と言ってました(笑)

 

松浦さん

私はそんな風にうまく返せませんでした(笑)

 

松浦さん

 軽く聞いてくる人に対しては、「どうせ興味本位で聞いているんだから、ほっといて」と思ってましたね(笑)。こっちが制度について真剣に説明しても、「聞く耳を持ってもらえないしな」と感じていました

――興味がない人には、説明しても意味がないって感じでしょうか?

 

松浦さん

そうですね。こっちの事情を分かろうと思って聞いているわけじゃないと思うので、「聞いてこないで」とは思いました。

――「選択的夫婦別姓が導入されて、父母の名字が違うと子どもがいじめられる」という意見もよく見られます。これについてはどう思いますか?

 

松浦さん

みんなの当たり前が「結婚=名字が同じ」なので、説明するのが大変なんですよね。中学校の頃の先輩には、いじり半分で、母の姓の「百瀬」で呼んでくる人もいました。

 

松浦さん

いじめる人たちって、名字だけじゃなく、人と違う点が何かあるとそこを見つけていじってくる。それはストレスでした。

 

日高さん

選択的夫婦別姓よりも、今の事実婚の方がいじられやすいんじゃないでしょうか。

 

日高さん

法律婚の方がスタンダードだという社会だから、「事実婚」があんまり理解できず、デリカシーなくズカズカ聞いてくる。

 

日高さん

別姓が導入されて「うちの親は結婚して、別姓を選択したんだよ」とストレートに説明できるようになれば、逆にいじられる要素が減ると思います。

――事実婚は子どもには分かりづらいということですね。法律婚に比べてデメリットもありますよね。

事実婚の主なデメリット:
・夫婦の間に相続関係がない(遺言を残しても、相続税が課税される)
・事実婚の子は母の戸籍に入り、父は認知が必要。親権は片方しか持てない
・配偶者控除が受けられない

 

日高さん

両親は、子どもが生まれるたびに籍を入れて、抜いて、を繰り返しました。手続きも含めて大変だったと思います。

 

松浦さん

うちの両親も、僕が生まれたあとにペーパー離婚しました。 そんなに名字を変えたくないという母の思いがあるなら、父が変えてあげたらよかったのにと思いました(笑)。でも、父の家系としても名字は変えづらかったようです。

 

日高さん

選択的夫婦別姓が導入されたら、自分の親には法律婚をしてほしいです。

 

松浦さん

僕もしてほしいです。めっちゃお祝いします。やっぱり事実婚は法で守られている部分が弱い。

 

松浦さん

病院に運ばれたとか、何かあったときに大変だとも聞きますし、法律的にも家族でいたいです。

――別姓だと「子どもの学校行事や親戚の集まりで大変だ」という指摘はどう思いますか?

 

日高さん

親戚が集まったら、名字の違う人はたくさんいますし…。 「困ることはない。以上」ですね。

 

松浦さん

親戚で集まったときは、下の名前で呼び合いますしね。名字で呼びませんよね。

 

井田さん

うーん。今は年賀状も出してないし、新年のあいさつも友人へのLINEで終わりですよね。

 

松浦さん

逆に結婚で名字が変わってしまった人の名前を覚え直す方が混乱しませんか?(笑)

 

松浦さん

うちの母は、野球チームやPTA活動でも。「松浦将也の母の百瀬です」と名乗っていました。将也ママと呼ばれる分にはいいけど、わざわざ「松浦さん」と呼ぶ人もいたそうで、それに母が傷ついているのは見てきました。

 ワタベウェディングが「苗字の日」にちなんで20~40代の400人に行ったアンケートでは、未婚女性の34%が「結婚後も自分の名字を名乗りたい」と答えています。未婚男性の31%、未婚女性の27%が「夫婦別姓を選択したい」と答え、その理由を「どちらかの名字が変わらないといけないのは非合理」「自分の名字に愛着がある」などとしています。

 内閣府の世論調査でも、20代、30代の約半数が「夫婦がそれぞれ婚姻前の名字を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えています。

――多くの人が望んでいるのに、なかなか選択的夫婦別姓が導入されないのはなぜなのでしょうか。

 

井田さん

ただなんとなく「変わるのが嫌」なんじゃないでしょうか。実際に同姓婚になったのは明治以降だったそうですが、「今までもずっとそうだったし」と、とらわれている人が多いのかもしれません。

 

日高さん

法学部なので、飲み会とかで友人から「話聞かせてよ」と言われることはあって、問題が知られてきてはいるのかな、と思います。

 

日高さん

でも、日本って同調圧力が強いじゃないですか。「普通」から外れると煙たがられるというか。変わること、未知への不安はあるのかもしれません。

 

日高さん

あと、反対している人の中には、別姓を望む人をただただ攻撃したい人もいるという気がします。

 

日高さん

「選択的」を、いかようにでも選べる「変動性」「流動的」だと勘違いしている人も多いように思います。「結婚したときに好きな名字にできる」みたいな…。生まれた時の名前がずっと続いていくだけなんですが。

――自分の結婚を考えたときに、名字について感じることや考えることはありますか?

 

井田さん

自分や相手の意志が尊重できればいいなと思います。自分にとっても20数年過ごしてきた大切な名前なので、両親の離婚の時に変えなかったわけですから。

 

日高さん

母が自分の名字を大切にして活躍しているのを見てきて、誇りに思うし、「かっこいいな」と思っています。

 

日高さん

名前と名字って不可分だと思うんです。なので、もし相手が変えたくないと言ったら事実婚でいいかなと思う。

 

松浦さん

日本の家庭は9割以上で、女性が男性の姓に変えますよね。自分自身は名字へのこだわりが薄いので、奥さんが「自分の名字を残したい」と言ったら変えてもいいです。

 

松浦さん

でも別姓の選択があるならなおいいな、と思っています。

 両親が別姓の子どもたちに話を聞きましたが、もちろんこの3人の思いや意見が全てではありません。

 ただ、選択的夫婦別姓の制度を導入してほしいと願っている子どもがいること、他の人と違うという理由で「事実婚の方がいじられやすい」と感じていることは、当事者に話を聞くまで分かりませんでした。

 「かわいそうだから」と勝手に決めつけて反対するのは簡単ですが、こんな声もあることを知ってもらいたいと思います。

漫画「夜廻り猫」が描く家族
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