連載
「仲間外れにしてほしかった」 蛭子さんが群れなかった理由
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ひとりぼっちの生き方をすすめる漫画家・蛭子能収さん。学生時代、友達のグループが苦手でした。「俺は仲間外れにしてほしかった」「グループから離れられなくなるのは本当につらい」。そこまで嫌がるのはなぜなのか? 蛭子さんに聞きました。
――学校の友達グループは、蛭子さんにとってどういうものですか
そういうグループの中に入って活動するのは、俺は好きではないです。無理して人に合わせて、その中にとどまっているほうが、後々窮屈な思いをすると思います。
――嫌になったきっかけはありますか
中学時代のいじめを受けたことが大きいです。「蛭子、来いよ」って、不良グループからよく誘われました。だいたい俺が手下みたいにいろいろ買ってくるとか、使い走りでした。
行っても全然おもしろいことないんですよ。行かないと呼び出しくらって殴られるんですよね。
――学校では仲良しグループができます。仲間外れを怖がる人もいます
俺はむしろ、仲間外れにしてほしいって思っていました。群れないほうがいいに決まっていますよ。
――それはどうしてですか
グループとか群れでは、強そうな人が一番上になります。大将格か、家来格か、そういう風に分かれていくもの。得するのは命令する立場になる力の強い人ですね。自分の性格はだいたい命令されるほうでした。
俺は一番下っ端の使い走りなのに、先生から真っ先に怒られていました。よく教室で立たされていましたね。本当、この学校を辞めたいと思っていました。
――今は、スマホなどのSNS上でグループができて、そこでいじめられることもあります
俺ね、そこからはじかれたほうがいいと思っているの。今はネットでやり取りするので、すごい簡単に呼ばれると思うんですけど、あまりそれに乗っかるとね。グループから離れられなくなるのは本当につらいと思う。
もし、そのグループのリーダーみたいな人の言うとおりについていくようなグループだったら、即刻抜けたほうがいいと思う。一人でさびしくても、そのほうがましです。
――もし自分が抜け出したいグループにいたら、どうしますか。ひとりぼっちは勇気がいることです
たしかに、勇気がいります。だけども、この人のいうままに動かされているって察知したら、断ってほしい。
窮屈だと思ったら早め早めに抜けたほうがいい。離れたいんだということを、少しずつ行動で示しておいたほうがいいです。「僕は今日はいけない」って、2日にいっぺんとかやって少しずつね。そしたらあいつはダメだと仲間が勝手に思ってくれます。
――居心地のいいグループもあるのではないですか。主従関係が強くなく、趣味で結びついているとか
趣味で合うグループならいいですね。(自分が好きな)絵を描くグループとかなら。
でも、そういうのがね、ないんですよ。こっぱずかしいじゃないですか。絵を描くグループって。馬鹿にされるかもしれないですね。ちょっと強いグループからさ。
でもね、そう思われても微動だにせず、絵を描いておけばいいんですよ。俺はそうでした。
――蛭子さんのひとりぼっちの哲学は、いつ育まれたのですか
性格ですね。自分自身、我慢強いと思います。嫌なことも割とずっとやるタイプでした。いじめられながらも学校に通い続け、高校卒業後に看板屋に就職した時も嫌だ嫌だと思いながら続けていました。それがよかったかどうか、自分でもわからないですけどね。
とにかく俺は自由なほうがいいな。苦しい思いをしてまで、人に合わすことはないんですよ。
「ひとりぼっちだっていい」。そのシンプルなポリシーは、終始一貫していました。一見気の弱そうな蛭子さんに、孤独を恐れない強さを垣間見ました。
蛭子さんの中高生時代は半世紀以上も前。けれど、蛭子さんが語られた友達やグループが抱える問題は、今も通ずるものがあるはずです。
蛭子さんのような生き方は難しくても、彼の本音の言葉が、少しでも心の足しになってくれればと思います。
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