京王線の始発駅、新宿駅を出発した電車が、地下のトンネルを3分ほど走ると、進行方向右側の窓の外にホームのようなものがうっすらと見えます。その間、わずか3秒ほど。これは駅?
「ブラタモリ」にも登場
この「ホームのようなもの」。一瞬にして走り去ってしまうため、じっくり眺めることはできませんが、1964年から78年まで使われた「旧初台駅」です。2012年3月にはNHKの人気番組「ブラタモリ」が取り上げて話題となりました。
一般には公開されていない「幻のホーム」を10月末、京王電鉄の案内で取材しました。
車両の長編成化に伴い「引退」
現在の初台駅は1978年開業の京王新線にあります。新線が開通する前の1964年から1978年まで、新宿駅から先の旧線が地下化されたときに使われていたのが「旧初台駅」です。
旧初台駅は、18m車両の6両編成の各駅停車だけが停車する短い駅だったため、20m車両の10両編成が停車できる新線初台駅にその役目を譲ることになりました。
「幻のホーム」に潜入してみた
電車の運行が終了した午前1時30分。関係者だけが出入りするビルの入り口から入ります。

古びた扉が雰囲気を盛り上げます。

螺旋階段をぐるぐると降りると…。

おお、これが…。

改札口へ通じる階段は、コンクリートでふさがれています。

水飲み場があります。最近の駅では見かけなくなりました。70年代の面影を感じさせます。

ただ、トンネルの壁を装飾していた化粧板は残るものの、看板は撤去されており、駅だった痕跡を探すのはなかなか難しい…。

暗闇の中を探し回っていたら、ホームは一部撤去されていて、こっちの方もホームだったらしいことが判明。

その柱に、駅名表示板がありました。

原形を留めているものも。

現在は、新宿駅の耐震補強工事の資材置き場として使われているほか、火事や大地震などトンネル内で緊急事態が発生した時に、乗客を外に避難させるための通路としても想定されています。ただ、まだここから乗客を外に出したことはないそうです。

では旧幡ケ谷駅はどこにあったの? というと、地上にあり、トンネル内に廃駅はありません。今は駐車場になっています。駅だったころの面影は見当たりませんが…。

辛うじて当時の柵が残っていました。

銀座線は注目されるけど…
しかし、京王線の「幻のホーム」は脚光を浴びることもなく、車窓から一瞬お目にかかれるだけです。
【関連リンク】銀座線、幻の2駅ライトアップへ 開業90年の「証人」:朝日新聞デジタル