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立憲民主「SNS戦略」次の手は? 危機管理・参加感…お手本のよう

候補者の街頭演説をツイッターに投稿する立憲民主党の支援者=2017年10月20日
候補者の街頭演説をツイッターに投稿する立憲民主党の支援者=2017年10月20日 出典: 朝日新聞

目次

 衆院選から1カ月。公示前勢力から約40議席増の54議席を獲得し、野党第1党となった立憲民主党は、まずツイッターなどによる情報発信で注目を集め、支持を広げました。専門家は「タイミング」や「参加感」、そして「危機管理」など、お手本のような「SNS戦略」があったと言います。ツイッターで存在感を示した勝因と今後の課題について分析してもらいました。(朝日新聞さいたま総局記者・増田愛子)

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「タイムリーに求められていることを発信」

 話を聞いたのは、企業や自治体広報に詳しい、ビーンスター代表取締役で自己演出プロデューサーの鶴野充茂さんです。鶴野さんは『頭のいい説明 すぐできるコツ』(三笠書房)などの著者で社会情報大学院大学の客員教授をつとめています。

 鶴野さんは「マスコミ報道だけではカバーしきれない情報を求めているたくさんの人に対し、タイムリーに求められていることを発信した。まずそれが、この『コミュニケーション』の成功の要件です」と指摘します。

 9月末に誕生した希望の党への合流を巡り、民進党が分裂。その結果、立憲民主党は誕生しました。10月2日夕の結党会見直後には、ツイッターの公式アカウントを立ち上げ、街頭演説の日程や枝野幸男代表の発言内容をつぶやき始めます。

 フォロワーは2日余りで自民党を抜き、政党トップとなりました。

 鶴野さんは「希望に対し、無党派層は、少なくともネット上では冷めていた。それでも『対安倍政権』ということで支えなくてはいけないのでは……という論調もあり、迷っていたと思う」。そこに、いわば「崖っぷち」状態で登場した立憲の動向や主張に対する無党派層の関心は、当初から高かったと見ます。

「立憲民主党」の設立について記者会見後、党名の書かれたプレートを掲げる枝野幸男氏=2017年10月2日、東京都千代田区、葛谷晋吾撮影
「立憲民主党」の設立について記者会見後、党名の書かれたプレートを掲げる枝野幸男氏=2017年10月2日、東京都千代田区、葛谷晋吾撮影
出典: 朝日新聞

あえて「弱み」をさらけ出す

 その上で、支持の拡大には、他にも幾つかの要因があったと言います。

 一つは、有権者の「参加したい」意識を刺激するムードづくりです。

 枝野代表は、選挙期間中の演説で「国民の皆さんが背中を押して立ち上がらせた政党」「私には皆さんの力が必要です」と、立憲と国民を一体化するフレーズを多用。これらは公式アカウントを通じ、拡散していきました。

 「ソーシャルメディアは感情を刺激するメディア」と鶴野さん。人材や資金が不足しているという、「弱み」をさらけ出すことで「みんなで送り出す雰囲気を盛り上げていった」。そのコンセプトは、街頭演説会を、枝野代表を取り囲み全方向から撮影できる「広場」で開く……といった、リアルな場での運動においても一貫していたと言います。

 実際、動画撮影や演説の文字おこしを立憲支持のフォロワーが「自発的」に行い、公式アカウントがそれを紹介する、といったことも頻繁に見られました。

「SNSや加工・編集アプリの普及で、情報発信が『習慣』となった国民の力なしに、躍進は説明できないと思います」



※ツイッターで発信した「国民の皆さんが背中を押して立ち上がらせた政党」のメッセージ

アカウント購入疑惑で見せた危機管理能力

 鶴野さんがもう一つ重要と指摘するのは、「中の人」のツイッターの特性を理解した振る舞いと、高い危機管理能力です。

 活動や主張の発信が目立った他党のアカウントに比べ、フォロワーのつぶやきも小まめに、時にコメント付きでリツイートする、双方向的な姿勢。アカウント購入疑惑がネット上で流布された時には、偽アカウントを調べるウェブツールで検証し、反論しました。

 「ソーシャルメディアでは、注目を失ってから正しいことを説明しても届けられない」と鶴野さん。「忙しくて大変なタイミングでも対応したのは、大事なことだったと思います」


※アカウント購入疑惑に反応したツイート

「新たな工夫」出せるか?

 選挙後、一部メディアに立憲アカウントの「中の人」のボランティアメンバーの1人として、28歳の女性が登場しました。

 鶴野さんは「日本の選挙は『おじさん』が牛耳ってきた印象が強い。今回、SNSが注目され、若者が個人で選挙の重要な役割を担えると伝えられたことは、大きい。そこに注目した人が声をあげることで、若者が参画する機会を増やしていけるのではないか」と言います。

 選挙から1カ月経ち国会での論戦も始まった今、立憲アカウントは、委員会審議での主張を紹介したり、質問時間配分問題について積極的に発信したりと「次のフェーズ」に向けて動き出したように見えます。鶴野さんは「政治活動としても、コミュニケーションとしても、引き続き『みんなが応援したい党』であり続けられるかが、見られています」。

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