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2017年11月02日

「理想の貧困」支援者からも求められ…スマホ持つ子は「うわずみ」?

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貧困家庭で育った若者たちに、支援者の誤解について語ってもらった

貧困家庭で育った若者たちに、支援者の誤解について語ってもらった

出典: 朝日新聞

 子どもの貧困を解決するべく、支援に携わる人は、たくさんいます。とても貴重な活動ですが、一部、よかれと思った言動が、当事者の子どもたちを傷つけていることがあるようです。「かわいそうな子を助けたい」という善意に潜む落とし穴を、当事者たちに聞きました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

スマホをもつ子は「うわずみ」?

 集まってもらったのは、首都圏の大学に通う男女5人。

 アオイさん(大学2年)、ミユさん(大学2年)、ユウタさん(大学4年)、ヒカリさん(大学4年)、メイさん(大学3年)。全員仮名です。
 
 5人とも、経済的に苦しい家庭で育ちました。

 世間にある「典型的な貧困像」と自分たちとのズレについて、語ってもらったところ、支援する人たちのことが、話題になりました。

集まってくれた若者たち

集まってくれた若者たち

出典: 朝日新聞

「私が参加する貧困当事者向けの無料学習塾で、勉強を教えるボランティア講師の人が『この子たちは貧困って言っても”うわずみ”だよ。スマホを持ってるから』って言ってて、びっくりした」(ヒカリ)

「いやいや! むしろインフラだから必須だって!」(ユウタ)

「あと、ボランティア講師は全員男性なんだけど、この間、『女子大生が参加する塾だから、これだけ講師が集まったんだよ。男子学生なら来なかった』って言われた」(ヒカリ)

「えー!!!」(全員)

「言った人だけじゃなくて、みんな『そうそう』って感じで……。『これが男なら、”いいね。頑張れ”って言うだけだよ』って。」(ヒカリ)

「まじキモい」(メイ)

「女の子の方が『ひとりでできないんでしょ? 助けてあげるよ』ってなるのかな」(ヒカリ)

 もちろんこれは、一部の体験談です。5人の周りにいる支援者の多くは、そんなことはありません。

5人ともスマホを持っている

5人ともスマホを持っている

出典: 朝日新聞

貧困の子=暗い?

 また、単純に「貧困がどういうものか、知らないだけ」という例もあります。

「私が行ってる同じような学習支援では、ボランティアで来た学生が『貧困の子って意外と明るいんですね』って言ってた」(メイ)

「えええ……」(全員)

「貧困家庭の子は暗いものだっていうイメージにもびっくりしたし、『貧困の子』ってひとくくりにしてることもびっくりした」(メイ)

「貧困だからこそ、明るいっていう子も多いと思うよ」(ヒカリ)

「貧困の子=暗い」というイメージの誤解(画像はイメージです)

「貧困の子=暗い」というイメージの誤解(画像はイメージです)

出典: PIXTA

 ヒカリさんは父子家庭で、姉と3人家族。

 母が家を出て、祖母が亡くなった小学校高学年あたりから、外で急に元気になったと振り返ります。

 「意識的にカラ元気に振る舞っていました。そうしていないと、心が崩れるから。笑っていないと、泣いちゃうから」

 その頃、「理想の自分像」を紙に書き出していたそうです。家に帰れば、つらいことが多い。「理想的な姿になって、せめて自分のことは好きになってあげようと思ったんだと思います」。そして、理想の姿として書いたのも「ずっと笑顔の人」でした。

 「面白くなくても、ニコニコしていました。口角さえ上げれば、笑った感じになるので。そうしたら中3の時、友だちが真面目な話をしているのに、悲しい顔ができなくなったんです。どうしても笑ってしまう。痛ましい顔ができない。人の前で『真顔』ができなくなっていました。そこから、少しずつ修正しました」

 ヒカリさんは、同じ貧困当事者で、笑顔で泣く人に会ったことがあるそうです。過去のつらかったことを話しているのに、無意識に笑ってしまっている。

 「私と同じだと思いました。つらい環境にあるからこそ明るくしているっていう子は、少なくないんじゃないでしょうか」

「泣いてしまうから、笑っている」人もいる(画像はイメージです)

「泣いてしまうから、笑っている」人もいる(画像はイメージです)

出典: PIXTA

「かわいそうな子」がつらい

 暗い顔をしているはず。スマホを持っていないはず。

 こうした思い込みは、「衣食住にも事欠き、常におなかをすかせている」といった、極端な貧困のイメージが世間的に強いという影響もあるでしょう。

 子どもの貧困を支援するある団体のスタッフは、こう話します。

 「極端な事例を出すと支援が集まりやすいという事実はあります。もちろん、大事な支援ですが、支援団体としては極端ではない貧困も理解してほしい。どの団体も、お金を集めるのに苦労していると思います」

「理想の貧困」って、こんなイメージ

「理想の貧困」って、こんなイメージ

出典: 朝日新聞

「以前、子どもの貧困問題を考えるイベントに行った時、食事支援をしている団体の女性が登壇して、『この、かわいそうな子たちを助けたい!』って訴えていて、びっくりした。会場の照明もちょっと暗くなって、しんみりした音楽がかかって」(メイ)

「えええ……」(全員)

「この女性と、この女性を『よし』としているその場の人たちに『まじか!』って思っちゃって」(メイ)

 他の4人も、ドン引きです。

「まじか!」という気持ちを、もう少しメイさんに説明してもらいました。

「『かわいそう』って、上から与えてやるものっていう感じがして。根底で『私はかわいそうじゃない。お前とは違う生きものだ』っていう一線を引かれているというか。お金がないことや、食べ物が十分にないことの背景には、それぞれの子のいろんな人生があって、精神的なつらさとか、難しさとかも抱えている。そういう個別の事情を見ずに、『かわいそうな子』とだけ切り取ってまとめているようで」

支援者について語ってくれた若者たち(1人は撮影NG)

支援者について語ってくれた若者たち(1人は撮影NG)

出典: 朝日新聞

 アオイさんも、こう言います。

 「『かわいそう』というのは、ひとごとで、上から目線。例えば子ども食堂とかで、子どもたちがそういう目で見られると、傷つくと思う」

 ヒカリさんは、不満をこぼします。

 「飢えて草を食べるといった極端な貧困像だけが広がって、『そんなにかわいそうな子たちがいるんだね』って支援をするとしたら、気持ちが悪い。『かわいそう』が行き過ぎることで、飢えるほど極端ではないけれど生活が苦しいというグレーゾーンの子が救われない」

 「子どもの貧困」という言葉は広く知られるようになりましたが、生活レベルや家庭環境、子どもが抱える悩みは様々です。

 再び強調しますが、多くの支援者は、誠実に子どもたちに寄り添っています。ただ、中には、自分が望む、ある種「理想的な貧困状態」の子を助けてあげたい、といった思いをもつ人も、いるようです。

 支援の手は、まだまだ足りません。ある支援団体のスタッフは「はじめは興味本位で参加してもらって構わない。子どもたちを見て、何が問題の本質なのかを理解してもらえれば」と、話します。

「かわいそうな子を助けたい」で傷つく子もいる(画像はイメージです)

「かわいそうな子を助けたい」で傷つく子もいる(画像はイメージです)

出典: 朝日新聞

どうにかしてくれるとか、期待していない

 一方、ユウタさんは、少し冷めています。

 「精神面の支援で『かわいそう』という態度をとるのはダメだけど、お金とかモノの支援の場合、もらえるなら別にいい。知らない人から何か言われても、なんとも思わない。気持ちがなくても、(金、モノという)行動さえあればいい。要らないモノをもらっても換金すればいいし。『気持ちだけ』は一銭にもならない」

 ユウタさんは、母子家庭で、弟と3人家族。

 地方出身で、いまは東京都内で1人暮らしをしながら大学に通っています。生活費は、母の名義で借りた銀行のローン(月5万円)と、3~4種類のバイトを掛け持ちして稼ぐ月15万円で、なんとか回しています。

 「もらえるなら、気持ちはどうでもいい」という発言を聞き、「助けてほしいとか、分かってほしいとか、他人には期待しないということ?」と、聞いてみました。

 「あ、そうですね。助けてくれなくていいから、ムカつくやつを殴りたいです」

 その「ムカつくやつ」って誰? 人? 社会?

 「僕がこういう状況になっている、諸悪の根源に。それが社会なのか、わからないですが」

 殴るだけでいいの?

 「どうにかしてくれるとか、期待してないですから。他人に対して期待していないから、少なくとも自分が愉快になれる行動がしたいなあ、っていう感じです。なので、殴れば気が済みます」

 期待しない。そう決めていると言うユウタさんですが、「ただし」と、付け加えました。

 「仲が良い人は除きます。仲が良い人は、ちゃんと『心』がほしい。分かってほしいし、わかってもらえるとうれしい」

連載「理想の貧困」
「理想の貧困」について当事者、支援者、メディアなど様々な視点から考えていきます。

(1)貧困たたきの理想
(2)支援者の理想(今回)
(3)メディアの理想
(4)「けなげに頑張る子」という理想
(5)現実を見える化する試み

これがリアル貧困家庭で育った若者たち 服は?カバンは?スマホは?
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リアルな貧困家庭で育った若者たち
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出典:朝日新聞
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