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〝外国人問題〟で揺れた川口市長選 「変わったチラシ」を配った理由

川口駅前であった選挙演説で、「選挙ヘイトを許さない」などと書かれたプラカードを掲げる人たち=2026年1月26日午後7時4分、埼玉県川口市栄町3丁目
川口駅前であった選挙演説で、「選挙ヘイトを許さない」などと書かれたプラカードを掲げる人たち=2026年1月26日午後7時4分、埼玉県川口市栄町3丁目

先日、投開票された埼玉県川口市の市長選。初めて立候補した6人の争いでしたが、その中に「ちょっと変わった選挙チラシ」をつくった候補者がいました。外国人の多く住む川口市。SNSなどでは、一部の民族の住民を名指しして〝外国人問題〟を訴える陣営もありましたが、その候補者は「恐怖をあおらない」と訴えていました。(朝日新聞記者・浅野真)

選挙チラシに「3カ国語」で公約

川口市内でも外国人が多く住むJR西川口駅近く。市長選の候補者だった松浦玄嗣さん(53)は、ここで20年ほど前からクリニックを開く歯科医師です。外国人の患者も多くいます。

川口市長選に立候補した松浦玄嗣さん=浅野真撮影
川口市長選に立候補した松浦玄嗣さん=浅野真撮影

松浦さんは選挙中、ちょっと変わった三つ折りの法定ビラを配りました。

「Vision for a Multiculutural Kawaguchi」(多文化共生川口ビジョン)と題して、英語、中国語、ベトナム語の3カ国語で公約を示しました。

自らの外国人を含めた市民への姿勢として「逃げない。恐怖をあおらない。現実に根ざした責任あるリーダーシップ」とも書きました。

松浦さんが配ったチラシは、英語・中国語・ベトナム語で外国人住民への取り組みを説明しています
松浦さんが配ったチラシは、英語・中国語・ベトナム語で外国人住民への取り組みを説明しています

選挙中、駅頭でビラを配っていた松浦さんに、3カ国語表記のチラシをつくった理由を聞きました。

「川口には日本国外にルーツを持つ多くの住民がいるが、選挙権がない。それでも、彼らは税金を払い、この街の一員として暮らしています」

「選挙戦でどんな主張をしているか、外国人住民にも知ってほしかったし、候補者には知らせる義務があると思いました」

外国語表記をした法定のビラを作ったのは、6人の候補者の中で松浦さんだけでした。

「一部の国籍や民族の人が問題にされているが、それは違う。ルールを守っている人、守っていない人。それを分けるルールさえ存在しないことが、今日の川口の問題。まずは生活のルールを決める。守らない、守れないなら規制する。それだけの話です」

排外主義ではなく「ルールづくり」を

こうした松浦さんの思いの根っこにあるのは、西川口駅近くのクリニックで診療を続けてきたことです。

西川口駅周辺はかつて、関東有数の歓楽街として知られました。2000年代初めに、警察が風俗店を重点的に摘発し、街は「クリーン」になりました。

その後、中国人の居住者が増え、西川口は「リトルチャイナ」と言われるようになりました。

松浦さんは「クリーン作戦のあとの街づくり計画がなかったから、外国人居住区のようになった」と言います。

街頭演説する松浦さん=浅野真撮影
街頭演説する松浦さん=浅野真撮影

クリニックの患者も外国人が多いそうです。

きちんと保険に入って診療費を払う人が多いものの、「保険証は顔写真がないから、使い回すような人たちもいた」と指摘します。

そんな経験から、排外主義でも放置でもなく、「ルールづくり」の大切さを感じるようになったといいます。

強硬な「外国人対策」と訴えた候補者が…

SNSなどで市内の「外国人問題」が現実よりも大きく膨らみ、「争点」となりました。川口市長選に立候補した6人は、それぞれ「課題解決」の道筋を訴えました。

中には「共生社会は無理」「外国人には出て行ってもらう」と主張する陣営もありました。

1日の投開票。ふたをあけると、松浦さんの得票は8431票。当選者のわずか10分の1以下で、最下位でした。

松浦さんが配ったチラシ
松浦さんが配ったチラシ

一方で、かなり強硬な「外国人対策」を主張した2人が合わせて3万6000もの票を集めました。

松浦さんはこう言います。

「数字がすべて。選挙結果は受け入れるしかない。それでも、ルールを作ることで解決はできると思っている。このままの状態では、経済的大恐慌などが起きたら、外国人住民と日本人が殺し合いにならないか。それがとても心配です」

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