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ひきこもりの兄妹、外に出るきっかけをつかめずに…支援のあり方は
ひきこもり状態の人は全国に推計146万人いるとされます。自治体に相談窓口はありますが、対応に失望する当事者や家族もいます。厚生労働省は新しいハンドブックで「自立から自律へ」をうたいますが……。ひきこもりの兄妹を取材した記者が、支援のあり方を考えました。(朝日新聞記者・高橋淳)
自宅に20年間ひきこもっていた兄(42)と妹(40)が昨春、ある施設から「脱出」しました。
その経緯について、デジタル版の連載「#ひきこもりのリアル ジリツ その先へ」で記事にしました。
3人暮らしだった父(82)の死後、地元の市の担当者から、長年暮らした公営住宅を出るよう促された2人。
勧められた救護施設へ入所してみると、知らない人と相部屋になり、日中は内職の仕事を課せられました。
父の残してくれた大切な貯金から毎月70万円もの施設利用料を支払わなければならないこともわかりました。
「ここを出たい」と訴えても、施設は聞き入れてくれません。
「このまま貯金が底をつけば生活保護となり、二度とここから出られなくなる」
4カ月後、2人は勇気を振り絞り、近くの公衆電話から都内のNPOに助けを求めました。
生前の父はひきこもる2人のことを市の窓口に繰り返し相談し、その度に「疲れた」と肩を落としていたといいます。
この先どうしたらいいのか、2人も外に出るきっかけをつかめずにいました。
だが今回の脱出でようやく親身に話を聞いてくれる支援者とつながり、父の貯金を元手に2人での暮らしを始めることができました。
昨秋、久しぶりに2人を訪ねると、妹が台所で楽しそうに料理をしていました。
脱出の直後とは見違えるほど、生き生きとした表情の2人。兄は就労支援機関にも通い始めました。
当事者の意思が尊重され、自分で生き方を決めていける「自律」の大切さは、国の新たな支援指針「ひきこもり支援ハンドブック」でもうたわれています。
これまでの行政の「支援」の在り方も、変わるべきときがきていると思います。