MENU CLOSE

話題

バウンダリー、知ってる? SNSで「平気で踏み越えがち」識者の指摘

〈あなたはあなた、わたしはわたし〉

ソーシャルワーカーの鴻巣麻里香さん=東京都中央区築地、吉村千彰撮影
ソーシャルワーカーの鴻巣麻里香さん=東京都中央区築地、吉村千彰撮影

目次

 「バウンダリー」という言葉を聞いたことがありますか? 自分と他人との心の境界線を示す言葉です。記者の同僚は、小学生の子どもにあれこれ質問した際、「バウンダリーの侵害だよ」と注意されたとか。児童に限らず、学校や職場や家庭でも、人間関係に苦しんだことのあるすべての人に必要な言葉かもしれません。(朝日新聞リロン編集部・吉村千彰)

朝日新聞の言論サイトRe:Ronでは、社会課題を可視化する「時代のことば」シリーズの一つとして「バウンダリー」を取り上げました。ソーシャルワーカーでスクールカウンセラーの鴻巣(こうのす)麻里香さんへのインタビューです。この記事は、それを元に、抜粋して構成しました。

   ◇
【全文はこちら】私を守る「バウンダリー」 自分にだめ出しせず「境界線」を引き直す

「周りの期待や願い、心配をくみ取って…」

 自分と他人との目には見えない心の境界線を表す「バウンダリー」。多くの相談者を支援してきた、ソーシャルワーカーでスクールカウンセラーの鴻巣(こうのす)麻里香さんは、学校での指導者と生徒、家庭での親子や夫婦、恋人同士、また職場での上司と部下という関係といった人間関係だけでなく、SNSなど相手の顔が見えない場合、受け手としても発信者としてもより深刻な状況で「わたしはわたし、あなたはあなた、という軸が揺らいでしまっている例が多い」と言います。

 自分と他者の境界線が揺らぐのはなぜでしょう。例えばある相談者は、「周りの期待や願いや心配をくみ取って、自分の本当の願いに気付いていなかった」そうです。

 これは不登校の子どもの話ですが、思い当たる節はありませんか。

バウンダリー踏み越えがちなSNS

鴻巣さんは、バウンダリー侵害にはトラウマ体験という過去の影響も大きいと指摘。またSNSも、「相手の姿も自分の姿も見えないから、平気でバウンダリーを踏み越えがち」と注意を呼びかけます。

「あなたが悪いのではない、弱いのではない、あなたが無力なのではなくて、自分を否定する言葉や行動をずっと浴び続けたからだよ、ということをまず頭で理解してもらう。そうして、小さなことから自己主張の練習をしていく」

「ある程度安全な関係性の中であれば、あなたはそう思うかもしれないけど私はこう思う、と自分の意見を通す練習をしていく」

「そうして、自分と相手の抱えている苦しみに対処できるようになっていく。上下関係や距離が近すぎる友達にも応用できます」

「強い人の意見=正解」の危うさ

このように具体的な対処方法を鴻巣さんに聞くなかで、記者は「私たちは不安が嫌い」という指摘にハッとしました。
「なぜなら不安を抱えていると体感が悪いから。そわそわ、モヤモヤ、落ち着きがない、眠れない。さっさと手放したくなる」

不安を解消するために、バウンダリーを侵害する側は、誰かを支配したり否定したりすることで、自分は大丈夫という手応えを得ようとする。

また、逆に、早く不安をなくそうと、「強い人」の意見を「正解」として採り入れ、それを自分の考えだと思ってしまう。バウンダリーが揺らいでいる状況です。

鴻巣さんは、「子育てやパートナー間では虐待や支配の関係になってしまう。もっと大きな枠組みだと、我々が不安なのは敵がいるからだ、追い出す力が我々にはあるんだと排斥運動などになってしまう」と心配します。

しかし、「自分で考えて意見を表現するということは、自然にできるものではなく、聞いてくれる人がいて初めて成り立ちます。実は私たちは、あまりやってきていないことです」と指摘。

「子どものころ、意見が違ってもちゃんと聞いてくれる大人がどれだけいたでしょう。調べてみない?って視野を広げる手伝いをしてくれた大人はいましたか。考える=正解を導き出すということになってしまっていないでしょうか。そうすると、〝強い人〟が正解となってしまう。そして、それが自分の考えだと思ってしまう」とも話します。

Bits and Splits/stock.adobe.com
Bits and Splits/stock.adobe.com

疑うことは、自分の力にも

鴻巣さんは「大事なのは〈あなたはあなた、わたしはわたし〉というバウンダリーを引き直すことです」。「疑ってみるということも自分の力になります」とも。

自分自身を守るためだけでなく、他人を傷つけることを防ぐためにも、「バウンダリー」を意識することは大切だと鴻巣さんは伝えています。

鴻巣さんへの取材を通じて、安易に人の意見に飛びついてはいけないということ、影響を受けることは良い面も悪い面もあるということを改めて肝に銘じ、SNSの世界も含め、バウンダリーを意識的に引き直すことの大切を考えさせられました。ちょっと大げさかもしれませんが、自分も含め一人ひとりの尊厳を守ることにつながることだと思っています。

朝日新聞の言論サイトRe:Ronでは、社会課題を可視化する「時代のことば」シリーズの一つとして「バウンダリー」を取り上げました。ソーシャルワーカーでスクールカウンセラーの鴻巣(こうのす)麻里香さんへのインタビューです。この記事は、それを元に、抜粋して構成しました。

   ◇
【全文はこちら】私を守る「バウンダリー」 自分にだめ出しせず「境界線」を引き直す

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます