ネットの話題
AI生成ではなく「高齢者生成」 91歳が描いた、LINEスタンプ
「お義父さんだったら『がんばりなさい』と言うと思った」
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「お義父さんだったら『がんばりなさい』と言うと思った」
SNSで「祖父を思い出して心が温まる」などと話題になったLINEスタンプがあります。「(AI生成ではなく)高齢者生成のスタンプ」というタイトルで、なんとも言えない馬の絵が動いて「がんばりなさい」と励ましてくれるもの。
「身体が動かんようになって、人のためになることができなくなった」
もうすぐ91歳になる義理の父がそう嘆く様子を見て、元気づけようと奮起した男性が選んだのは「義父の絵でLINEスタンプをつくる」という方法でした。経緯を聞きました。
話題のLINEスタンプは、動く馬のイラストの上に、手描きの文字で様々なメッセージが書かれています。
二本足で立ち、大きく手を振る「元気でやっとるか」
仰向けに転げて「ハハハハハ」
正座し若干前のめりになっている「ハナシきこか」――。
「3年前から体調が悪く、入退院を繰り返している91歳の義父が『身体が動かんようになって、人のためになることができなくなった』と嘆いていたと妻から聞いたんです」
そう振り返るのは、島根県に住む男性(67)です。
13年ほど前、妻の実家がある島根県に移住し、高齢の妻の両親の近くに住んでいる男性。91歳になる義父は、梅をメインに米などの農作物を作っていました。
しかし3年ほど前に体調を崩し、入退院を繰り返すようになりました。
次第に元気をなくしていく義父を間近で見ていた男性ですが、「人のためになることができなくなった」という言葉を聞き「これはどうにかしないとあかんなと思った」。
前を向いてもらいたいと考えたときに、思いついたのが「LINEスタンプ作り」でした。
実は男性は10年ほど前から、LINEスタンプのクリエイターとして活動しています。そのため、スタンプ作りは手慣れたもの。自分の得意な分野で義父を元気づけたいと考えました。
構想を義父に伝え「絵を描いてほしい」と頼むと、義父は去年の9月ごろから、スタンプの元となるイラストをノートにいくつも描いてくれたといいます。
「ねずみ、猫、馬、ヤギ、犬、ふくろう、タヌキ…たくさん書いてくれた中でも、馬が一番よかった。優しい感じだなと」
義父は入院中に動物図鑑を差し入れに頼み、イラストを描き続けていたのだといい、男性はその姿を見て、義父が「やりがい」を感じているように思ったといいます。
2026年がうま年であることも「ちょうどいい」と考え、義父の絵を元に、様々なポーズやそれにつけるメッセージを男性が考え、動くスタンプに仕上げました。
独特のタッチで描かれた馬の絵に添えられた吹き出しのいくつかは、男性が義父の口癖を思い出しながらつけたものです。
「いつもすまんのお」と頭を下げるスタンプは、義父が体調を崩してから実家を訪れることが多くなった妻に「いつもすまんな」と謝っていた義父を思い出したもの。最初に着手した図柄は「いつもすまんのお」でした。
一番目立つ位置に配置した「がんばりなさい」も、思い入れのあるものです。
男性は「僕が自分で作るスタンプはいつも『がんばれ』にします。でも、お義父さんだったら『がんばりなさい』と言うと思った」。
男性の妻は、三姉妹の長女。つまり義父は、三姉妹の父であり、何人もの孫がいるおじいちゃんでもあります。「『がんばりなさい』という義父の言葉をスタンプとしても残しておいたら、いつかお父さんがいなくなってしまったとき、娘たち孫たちに響くかなと思ったんです」
できあがったスタンプを義父に披露したときには、名前を呼び「さすがやな」「よく作ってくれた」と、満面の笑みを浮かべていたといいます。
そして、昨年末に退院。今年のお正月はみんなで迎えることができました。その際、義父に「原稿料」を渡しました。「自分は要らないから生活の『たし』にしなさい」と断っていたという義父でしたが、最終的には「ありがとう」と喜んで受け取ってくれたそうです。
男性によると、そのとき義父は「お金云々よりも、世の中の役に立っているのがうれしい」と言っていたそうです。
「身体が弱り、いまはもう絵はかけないけど、今後も、スタンプを目にした人の気持ちが動く限りは、お父さんは役に立ち続けると思います」
このスタンプについて、男性の娘がXで「おじいちゃんが描いた馬の絵めっちゃゆるくて可愛いから見て」とつぶやくと、「いいね」は5万件を超えました。
「祖父を思い出して心が温まりました」「がんばれ!…じゃなく、 がんばりなさい がおじいちゃんぽくて好きです!」などの感想が寄せられました。
「(AI生成ではなく)高齢者生成のスタンプ」というタイトルに気付く声もありました。男性は「AIを使ったスタンプも出てきている中で、そうではないという意味を込めた」。
男性は、娘の投稿が拡散されていることは、今回の取材を受けるまで知らなかったそう。ただ、売れ行きが良いことから、「なにかあったな」とは感じていたようです。
「高齢者に向けて、施設などでは様々なレクレーションがありますが、義父の例を見て、こんな方法もいいなと高齢者に関わる人が思ってくれたらいい」と話します。
今後、義父とどのような生活を送りたいかを聞くと「会って笑う生活」と一言で答えました。
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