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「雲はわたがしで…」 子どもの頃に夢みた〝空想の世界〟を描く作家

仕事を辞めて、イタリアで3カ月スケッチ修業

吉田麻乃さんの作品
吉田麻乃さんの作品 出典: 画像はいずれも吉田麻乃さん提供

目次

子どもの頃、雲はわたがしで食べられると思っていたーー。イラストレーターで絵本作家の吉田麻乃さん=大阪府在住=は、子どもの〝空想力〟を大切にしながら作品を描いています。会社員として働いていましたが、作家になるために退職。一時、イタリアでホームステイをしながら毎日スケッチに明け暮れていたといいます。

「会話のきっかけ」になった絵

絵を描くことが趣味の祖母の影響で、幼い頃から色鉛筆や水彩、油絵の具といった画材は身近な存在でした。当時人気だったキャラクターや母親をモデルに絵を描いて楽しんでいたといいます。

「母親は絵を描かなかったので、『上手に描けてすごいね』と喜んでくれました。それがうれしくて、いつも絵ばかり描いていました」

父親の仕事の都合で中学生になるまでは全国各地を転々としていた吉田さん。新しい学校ですぐに友達ができなかったとき、ひとり遊びの定番は絵を描くことでした。

勉強や運動は得意ではありませんでしたが、唯一、美術には自信がありました。クラスメートに「この絵どうやって描くの?」と言われるなどコミュニケーションのきっかけになっていたといいます。

絵本も大好きで、中学生になると毎日のように本屋へ立ち寄りました。絵本作家に憧れ、中学校では美術部に所属し、高校は美術科で学びました。

一方で「早く自立した生活をしたい」と考え、就職率の高いデザイン専門学校に進学。卒業後はデザイン会社に就職しました。

吉田麻乃さんの作品=本人提供
吉田麻乃さんの作品=本人提供

絵を学びにイタリアへ

働きながら絵を描き続け、小さなギャラリーで友人と個展を開いたこともありました。「個展で油絵を買ってくださった方が『子ども部屋に飾ります』と言ってくれて、『私はこういう仕事をしたかったんだ』と思いました」

しかし、デザイナーの仕事と創作の両立は思うようにいかず、就職から2~3年ほど経った頃に退職を決意。作品作りに専念する道を選びました。

吉田さんは、「当時は想像通りに描く技術が足りていませんでした」と振り返ります。「例えば動物と観覧車を描いても、観覧車の造形を自分のイメージ通りに描けず四苦八苦していました。基礎力の大事さを実感しました」

そこで「芸術の国へ行って街や建物をスケッチしたい」と考え、イタリアで3カ月ホームステイをしながら絵の勉強をすることにしました。

「イタリア語は話せませんでしたが、『トゥルッリ』を描きたいと思っていました」。トゥルッリとは、イタリア南部・アルベロベッロに多く見られる伝統的な石造りの家屋のことです。

「絵本の中に出てくるような建物で、どうしても自分の目で見てみたいと思いました。イタリアでは美術館に入らなくても、街中に描きたい美術の素材があります」

「それと、イタリアでは『ボローニャ国際絵本原画展』という世界最大級の絵本原画のコンクールも開かれていて絵本が有名なイメージがあり、とにかく行ってみたかったんです」

ホームステイ先は計4カ所。ローマやフィレンツェ、ヴェネツィア、アルベロベッロといった地域を回り、毎日絵を描いていました。

「外でスケッチしている人もすごく多くて、子どもから大人まで外国人の私にも『何描いているの?』『その絵ほしい』と話しかけてくれました」

現地ではモザイク画やフレスコ画の制作も体験したそうです。

イタリアでのスケッチや体験は、現在イラストのデザインにも活かしているといいます。

イタリアでのスケッチ=吉田麻乃さん提供
イタリアでのスケッチ=吉田麻乃さん提供
吉田麻乃さんの作品。クジラの上にトゥルッリを描きました=本人提供
吉田麻乃さんの作品。クジラの上にトゥルッリを描きました=本人提供

大切にしているのは〝子どもの空想力〟

帰国後、吉田さんは本格的に作家活動を始めました。個展を開いたり、グッズを販売したりしているほか、生活雑貨専門店「ロフト」や「ハンズ」でも、メッセージブックや手帳などを展開しています。

雲の上に寝転ぶシロクマとペンギン、空を泳ぐクジラ、夜空をかけるバク……。モチーフの多くは動物で、特に多いのは海の生き物です。

吉田さんはイラストを描く上で〝子ども心〟を大切にしています。

「動物に現実ではないものをプラスすることが多いのですが、大元には〝子どもの空想力〟があります。小さい頃、『雲はわたがしでできていて、食べられる』『雲に乗ってみたい』と思っていました。大人になると子どもの頃の気持ちを忘れてしまいがちですが、ずっと大事にしていきたいと思います」

今後は絵本の制作にも力を入れ、「ボローニャ国際絵本原画展」への出品やアートバザーへの参加を考えているそうです。

吉田麻乃さんのInstagram:https://instagram.com/asanoyoshida
吉田麻乃さんの作品=本人提供
吉田麻乃さんの作品=本人提供

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