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悲惨…中国の児童誘拐、IT駆使して救出 写メで顔認証・DNA照合
児童誘拐と人身売買が深刻化する中国。インターネットと最新のテクノロジーを使って解決しようとする動きが出ています。
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児童誘拐と人身売買が深刻化する中国。インターネットと最新のテクノロジーを使って解決しようとする動きが出ています。
中国では、児童誘拐と人身売買が深刻化しています。中国政府は、1年間に誘拐される子どもが年間1万人いると発表しています。無事に見つかって親元に戻る子どもは0.1%という調査結果もあります。そんな中国で、インターネットと最新のテクノロジーを使って児童誘拐・人身売買を解決しようとする動きが出ています。
中国の農村部では、跡継ぎや労働力として男の子を欲しがる家庭が少なくありません。特に一人っ子政策の影響や、養子縁組制度の不備などから、男の子のいない農村部家庭は、人身売買の買い手になるケースが多いと言われています。また、物乞い、売春目的で児童が誘拐され、売られるケースも相次いでいます。
被害にあった親は、あらゆる手を尽くして我が子を探します。その様子をウェブに公開する人もいます。1歳の時に誘拐された我が子を6年間探し続けた親(伍興虎)のウェブサイトは、多くの反響を呼びました。最近では、成長した子どもが自分の生みの親を捜すケースも増えてきました。
ウェブサイトや、中国版ツイッター微博による情報発信は、児童誘拐の深刻さを人々に訴えています。また、微博の力で誘拐された子どもが見つかり、親元に戻ったケースも出ています。
スマートフォンのカメラ機能を使った対策も生まれています。
2011年、中国版ツイッターの微博の浸透に合わせて、中国社会科学院の于建嵘教授が微博で「随手拍」(ついでに写真を撮る)運動を提案しました。誘拐児童と思われる子どもを見たら、写真を撮り「微博」にアップロードするというものです。歌姫のフェイ・ウォン(王菲)や女優の趙薇(ヴィッキー・チャオ)ら、多くの有名人が賛同し、誘拐児童の問題に注目が集まりました。その一方で、アップロードした写真とデータベースの間で照合がうまくいかないケースや、成長した子どもの容姿との違いなど、技術的な問題も浮かび上がりました。
「Missing Children」(失踪的孩子)は、顔認証の技術を使った誘拐児童を探すアプリです。2012年、中国で最大級の誘拐児童支援サイト「宝貝回家」が、日本の広告会社「ワン・トゥ・テン」と協力して開発しました。
撮影された子どもの顔と、「宝貝回家」に登録された画像を自動的に照合させます。年齢による顔の変化もある程度予測し、データベースから類似度の最も高い写真3枚を選び出し、親に送ります。このアプリは1週間で2万ダウンロードを記録し、実際に救出した事例も報告されています。
2015年7月には、「睿介寻子」というアプリを開発するための「クラウドファンディング」が立ち上がりました。「睿介寻子」は精度の高い顔認証技術に加え、指紋・DNAなどの情報も一緒に処理できます。
中国の警察組織公安部も児童誘拐の対策に力を入れています。特に、2009年に設立した「全国誘拐打撃DNAデータベース」は有名です。誘拐児童専用のDNAデータベースは世界でも唯一だと言われています。中国全土に42のDNAを集める施設があり、費用は全て無料です。
子どもを捜す親が自分のDNAを登録し、公安部門が救出した児童たちのDNAと照合させることで、親子を特定します。2015年4月時点で、3600人の誘拐児童が親元に帰ったと報道されています。その中には、26年前に失踪した「子ども」もいたそうです。
「高知能腕時計」はアップルウォッチのようなウェアラブル端末の一種で、腕時計にはGPS機能がついています。子どもが親元を離れてしまった後に、子どもを追跡できます。録音機能もあり、現場の状況を把握することもできます。
IT企業による対策も進んでいます。「中社社会工作発展基金会」は2015年5月、「中国児童失踪予警プラットフォームAPP」を作り、6月にソーシャルメディアのサービスを手がける企業「陌陌」が「失踪児童情報緊急通報システム」を開発しました。
これらのサービスを活用すれば、万が一子どもが「失踪」した場合、即座に子どもの写真などを拡散し、現場付近にいる他のユーザーに発信することができます。目撃情報が集まれば、早い段階で子どもの救出に取りかかることが可能になります。
「宝貝回家」では、全国に散らばるボランティアが、子どもを捜す親と、親を捜す子どもたちを支援しています。すでに1127人をマッチングさせました。しかし、このサイトだけでも、20547人の親と14551の子どもが登録しており、被害の根絶にはなお時間がかかりそうです。
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