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お金と仕事

東芝、実は「優等生」だった…経営チェック厳しい「委員会設置会社」

粉飾で揺れる東芝は、経営監視が厳しい「委員会設置会社」でした。企業統治の「優等生」と言われていました。

利益水増し問題で揺れる東芝の本社ビル
利益水増し問題で揺れる東芝の本社ビル 出典: 朝日新聞

目次

 利益水増し問題で揺れる東芝は、「委員会設置会社」という運営体制でした。経営陣が違法なことをしていないか、チェック体制を強化する形として2003年に移行しました。しかし、粉飾事件により、先進的といわれた「委員会設置会社」は機能していなかったことが発覚。大きな衝撃が走っています。「委員会設置会社」とは、どのような体制なのでしょうか?

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チェック役も経営に参加、監視強化

 通常の会社には、経営陣が違法なことをしていないかチェックする監査役がいます。「委員会設置会社」では、監査役を置かないで、経営に直接、関わる取締役から「監査委員」を選びます。意見を言うだけでなく、取締役会の多数決にも参加することで、チェック機能を強化するのが目的です。

 「監査委員」に加え経営陣の給料を決める「報酬委員」、取締役の候補者を選ぶ「指名委員」という、会社の舵取りに直結する3つの委員会を取締役会の中に作ります。委員は3人以上が必要で、過半数を社外の人にしなければなりません。

東芝が1985年に世界で初めてドイツで発売したラップトップ型パソコン。価格は6480マルク(約52万5千円相当)だった
東芝が1985年に世界で初めてドイツで発売したラップトップ型パソコン。価格は6480マルク(約52万5千円相当)だった 出典: 朝日新聞
 Q  東芝は委員会設置会社(いいんかいせっちがいしゃ)だって聞いたけど、それは何なの?
 A 会社を運営するしくみの一つだ。株主から選ばれた取締役が、経営の大まかな方針を決めるところは、ふつうの会社と同じだ。違うのは、経営陣をチェックする監査役(かんさやく)を置かずに、代わりに取締役のなかから「監査委員」を選ぶことだ。意見を言うだけでなく、取締役会の多数決にも参加して、経営をただせるようにしたんだ。
(いちからわかる!)東芝の会社運営ってちょっと違うの?:朝日新聞デジタル
 A 米国にならった制度で、2003年から導入できるようになった。経営陣の報酬(ほうしゅう)を決める「報酬委員」と、取締役の候補者を選ぶ「指名委員」と合わせ、取締役会のなかに3委員会をつくる。これで、株主から高評価も受けやすくなる。
 Q どういうこと?
 A 会社の透明性が高まる。報酬額や取締役候補は、詳しい説明がないまま、社長の独断で決められがちだ。取締役会が決めた経営方針に沿って先頭に立って事業を進める「執行役(しっこうやく)」も別に置く。取締役との兼務もできるけど、なるべくそうせずに、取締役会は経営の監視に専念することが期待されているよ。
 Q でも、身内を厳しくチェックできるのかな?
 A だからこそ、各委員会は3人以上とし、過半数を社外出身にするよう義務づけられている。
(いちからわかる!)東芝の会社運営ってちょっと違うの?:朝日新聞デジタル

導入わずか、「優等生」だった東芝

 社内の生え抜きが取締役になることが多かった日本の企業にとって、人事などを社長の独断でできなくなることから、「委員会設置会社」を採用する会社はあまりいませんでした。東証1部上場企業でも約3%しか導入していません。

 そんな中、社外取締役中心の委員会設置会社に移行した東芝は、企業統治の「優等生」と言われていました。

東芝の株主総会に向かう株主ら=東京都墨田区=2015年6月25日
東芝の株主総会に向かう株主ら=東京都墨田区=2015年6月25日 出典: 朝日新聞
 A 取締役を生え抜きで固めてきた日本の会社の抵抗感は強く、東京証券取引所1部上場企業でも約3%しか導入していない。ハードルを下げ、今年から監査担当の委員会だけ置く新制度もできたよ。
 Q 東芝は進んだ会社だったんだね。
 A そう見られていただけに、今回の問題の衝撃は大きい。「仕組みを整えるだけでは無意味」(金融庁幹部)ということだね。
(いちからわかる!)東芝の会社運営ってちょっと違うの?:朝日新聞デジタル
 企業の「稼ぐ力」を高めようという安倍政権の後押しで、多くの社外取締役が生まれた今年は「企業統治元年」と呼ばれる。矢先に発覚した東芝の利益水増し問題は、何のための企業統治かを問いかけている。
 米エンロンの粉飾決算事件を受けて、不祥事を防ぐ取り組みを見直す機運が高まった12年前、東芝は社外取締役中心の委員会設置会社に移行し、企業統治の「優等生」とされた。
東芝利益水増し1518億円 経営判断と認定 第三者委報告:朝日新聞デジタル

なぜ機能しなかった?

 なぜ、委員会設置会社が機能しなかったのか。東芝の決算を調べてきた第三者委員会(委員長=上田広一・元東京高検検事長)は、東芝の5人の監査委員のうち、ほかの元外交官2人ら社外取締役3人について「財務に十分な知見を有する者がいなかった」と指摘しています。

 だが、第三者委員会の報告書によると、パソコン事業の会計処理をめぐり、会計面をチェックする監査委員会のトップを務める元最高財務責任者に対し、東芝出身の監査委員が精査するように求めたが、取り上げられなかった。
 不都合な情報を隠したがるのは、終身雇用で生え抜きの役員で占められる日本的経営の弱みとされる。「第三者の目」で経営陣を監視するのが社外取締役の役目だが、東芝の5人の監査委員のうち、ほかの元外交官2人ら社外取締役3人について、第三者委は「財務に十分な知見を有する者がいなかった」と指摘した。
東芝利益水増し1518億円 経営判断と認定 第三者委報告:朝日新聞デジタル

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