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「嫁・主人」と呼んだら男女差別? いい呼び方ありませんか?

自分の妻を「嫁」と呼ぶのは違和感がある──そんな問いかけが話題を呼んでいます。実はこの議論、何十年も前から繰り広げられていました。

結婚記者会見で並ぶ片岡愛之助さん(左)と藤原紀香さん=2016年3月31日
結婚記者会見で並ぶ片岡愛之助さん(左)と藤原紀香さん=2016年3月31日 出典: 朝日新聞

目次

 自分の妻を「嫁」と呼ぶのは違和感がある──そんな問いかけが話題を呼んでいます。女性が他家に嫁ぐような印象を与えることから、戦前の「家制度」を思い出すというのが理由。「今の時代にふさわしい呼び方を考えませんか?」という意見には「こだわりすぎだと思う」「どのように呼んでもよい」という反論も。実はこの議論、何十年も前から繰り広げられていました。

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若い人が口にする「嫁」に違和感

 発端となったのは、「『嫁』『主人』に代わる言葉ないか」というタイトルで5月17日の朝日新聞の投稿欄に載った記事です。若い人が自分の妻を「嫁」と呼ぶことに違和感を感じ、「嫁」「主人」を使わない呼び方を考えてほしいという、というものでした。

今ではめったに見られなくなった「ちゃぶ台返し」。大分県豊後高田市であったちゃぶ台返し大会では、参加者が日ごろの憂さを晴らしていた=2015年4月
今ではめったに見られなくなった「ちゃぶ台返し」。大分県豊後高田市であったちゃぶ台返し大会では、参加者が日ごろの憂さを晴らしていた=2015年4月 出典: 朝日新聞
 タレントを含めて若い人が、妻を「嫁」と言うことに違和感を感じる。40年ほど前に結婚した私たちは「嫁」や「主人」という言葉は使うまいと決めた。戦前の「家制度」を思い起こすからだ。現憲法では結婚は個人と個人のものであり、女性が他家に嫁ぐことではない。

 ではどう呼ぶか。「妻」や「夫」は自分たち夫婦の呼称には使えても、相手に「あなたの妻」とは言いにくいし、「奥さん」「だんな」も問題があろう。「お連れ合い」と言い換えても、なかなかしっくりしない。

 若い人には「嫁」や「主人」などを使わずに、何と呼ぶべきか模索してほしい。そして言葉ひとつに、その言葉を使う人や使わない人の世界観が込められていることを理解してほしい。
(声 どう思いますか)5月17日付掲載の投稿『「嫁」「主人」に代わる言葉ないか』:朝日新聞デジタル

「どのように呼んでもよい」「いい気分はしない」

 これに対し、7月8日の投稿欄に反響が紹介されました。

 「戦前の『家制度』を思い起こすからと書いておられるが、こだわりすぎだと思う」
 「お互いの信頼の上に成り立つ呼び方ならば、どのように呼んでもよい」
 「『嫁』は下に見られているようでいい気分はしない」

 賛成派も反対派も、それぞれ持論を述べる展開に。この「嫁・主人」論争、古くて新しいテーマでした。

NHK朝の連続テレビドラマ「マッサン」でおしどり夫婦を演じた玉山鉄二さん(左)とシャーロット・ケイト・フォックスさん=2014年6月、余市町
NHK朝の連続テレビドラマ「マッサン」でおしどり夫婦を演じた玉山鉄二さん(左)とシャーロット・ケイト・フォックスさん=2014年6月、余市町 出典: 朝日新聞
「嫁」「主人」は使わないという投稿者に「なぜ?」と問いたい。戦前の「家制度」を思い起こすからと書いておられるが、こだわりすぎだと思う。また結婚は個人と個人のものとおっしゃるが、互いの家同士の結びつきが生まれるのは素晴らしいことではないか。
(声 どう思いますか)5月17日付掲載の投稿『「嫁」「主人」に代わる言葉ないか』:朝日新聞デジタル
結婚して6年が経つが、「嫁」「主人」には違和感がある。男性も女性も同じように働くご時世に「主人」は合わない気がするし、「嫁」は下に見られているようでいい気分はしない。「家内」「女房」も同様だ。残るは「夫」「妻」しかない。私はこれを使用しているが、どれもしっくりこない。
(声 どう思いますか)5月17日付掲載の投稿『「嫁」「主人」に代わる言葉ないか』:朝日新聞デジタル

何十年前からあった議論

 日本語研究家の遠藤織枝・文教大元教授は「同じような議論は何十年も前からされています」と指摘します。遠藤氏によると、嫁の本来の意味は「男性のもとに嫁ぎ、婚家の跡取りを生み、その家のために働く女性に対する呼称」。「主人」は「家のぬし」で「使用人が雇い主を呼ぶ主従関係を示す言葉」でした。

 戦前は主人のほかに、「夫・やど・亭主・だんな・あるじ・うちの人」などの呼び名もあり、一般的な呼び名として定着したのは戦後からだと言われています。

 遠藤氏は「抵抗がある場合は使わないことです。代わる呼び方を考えて下さい」と提案。「言葉は生きています。使われなくなれば、消えていきます。自分の気持ちを表すのにいちばん合っていると思う言葉を使うようにしませんか」と話しています。

いい夫婦の日にちなんで、振る舞われたぜんざいを食べる家族連れ=2011年11月、大阪市中央区
いい夫婦の日にちなんで、振る舞われたぜんざいを食べる家族連れ=2011年11月、大阪市中央区 出典: 朝日新聞
同じような議論は何十年も前からされています。「嫁」は文字通り男性のもとに嫁ぎ、婚家の跡取りを生み、その家のために働く女性に対する呼称でした。「主人」は本来は「家のぬし」であり、使用人が雇い主を呼ぶ主従関係を示す言葉。妻から夫を呼ぶ言葉としては戦前は「夫・やど・亭主・だんな・あるじ・うちの人」などのひとつにすぎなかったのです。標準的な呼称であるかのように思われるようになったのは戦後のことです。
(声 どう思いますか)5月17日付掲載の投稿『「嫁」「主人」に代わる言葉ないか』:朝日新聞デジタル

呼ばれたくない呼び方、1位は…

 未婚の女性が、結婚相手から絶対呼んでほしくない呼ばれ方は? 週刊誌AERAが2007年2月にネット上で実施したアンケート、1位は「ハニー、ダーリン」でした。次に多かったのは「おかあさん」に。

 呼び方によって、夫婦関係やその人の考え方など、色々なものが見えてきそうです。

■あなたの夫があなたについて第三者に話す時、絶対呼んでほしくない呼ばれ方は?(複数選択可)
 妻:3人
 家内:15
 女房:17
 かみさん:17
 嫁、嫁さん:19
 連れ、連れ合い:3
 おかあさん:34
 うちの(やつ、など):23
 ワイフ:27
 奥さん:12
 パートナー:15
 彼女:9
 あなたの旧姓:14
 あなたの名前:3
 あだ名:14
 ハニー、ダーリン:35

 ■今週のvote
 あなたの夫があなたについて第三者に話す時、絶対呼んでほしくない呼ばれ方は?
 (複数選択可)
 妻           3人
 家内         15
 女房         17
 かみさん       17
 嫁、嫁さん      19
 連れ、連れ合い     3
 おかあさん      34
 うちの(やつ、など) 23
 ワイフ        27
 奥さん        12
 パートナー      15
 彼女          9
 あなたの旧姓     14
 あなたの名前      3
 あだ名        14
 ハニー、ダーリン   35
2007年2月26日:(AERA-net.jp)夫の呼び方・妻の呼び方:1 絶対いやよ「ワイフ」だけは:AERA

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