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桂米朝さん死去 完コピ目指す「米朝アンドロイド」も生んだ人間国宝
人間国宝の落語家、桂米朝さんが19日、死去しました。89歳でした。本人をモデルにした等身大ロボット「米朝アンドロイド」まで開発された、不世出の噺家でした。
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人間国宝の落語家、桂米朝さんが19日、死去しました。89歳でした。本人をモデルにした等身大ロボット「米朝アンドロイド」まで開発された、不世出の噺家でした。
落語家で初めて文化勲章を受章し、上方文化の象徴的存在だった人間国宝の桂米朝さんが19日、死去しました。89歳でした。近年は入退院を繰り返していましたが、本人をモデルにした等身大ロボット「米朝アンドロイド」が開発され、イベントなどで落語を披露していました。人間の動きを再現する先進研究の題材にまでなった、不世出の噺家でした。
「米朝アンドロイド」は、2012年に大阪の劇場運営会社が開発。高座に上がった米朝さんの技の迫力を後世に残したい、との考えからでした。
開発には、ロボット工学者の石黒浩・大阪大教授が携わりました。
50代に語った小噺の音源に合わせて、身ぶり手ぶりも再現しています。動きは、米朝さんの高座を、弟子でもある息子の桂米団治さんがまねた映像をコンピューターで分析。空気圧でなめらかに動くように調整しました。
顔はハリウッドで活躍する特殊メークアーティストが手がけて、表面を特殊なシリコンで再現。中には機械やモーターが入っていて、顔を含めて体全体で32カ所が動くようになっています。制作には数千万円かかりました。
ファッションも忠実な再現を目指し、米朝さん愛用の着物も羽織っています。
開発計画を聞いた米朝さんは当時、「誰がそんなアホなこと、考えてるんや」とあきれていたそうですが、弟子の桂ざこばさんは「内心では出来上がりを楽しみにしてはるやろと思います」と解説していました。
12年7月の劇場でのお披露目では、米朝さん本人が見守る中、高座で落語を演じました。
横からまじまじと見つめていた米朝さんは「部分部分を見たら、確かによう似てるね」と感心しつつ、笑みを浮かべて「嫌やな」とこぼしていました。
14年6月には美術館の催しで、米団治さんが高座に上がり、米朝アンドロイドは昔の音源に合わせて「看板の一」を実演する“親子共演”が実現しています。
米朝アンドロイドは高座以外でも活躍しています。14年11月には、高島屋大阪店に展示され、来店客がタッチパネルで選ぶ人生相談に、身ぶり手ぶりを交えて答えていました。
用意された言葉は約40通り。「良い人と出会うには?」の問いかけには、「自分がええ人になることや」と答えています。
若いころから、消えかけていた落語の復活に努め、数多くのネタを上方噺として再生させ、戦後のスタンダードを築いた米朝さん。
古典芸能の世界だけではなく、ハイテクの世界でも、多大な影響を残したと言えそうです。