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#35 #就活しんどかったけど…

就活の〝ES動画〟「どう撮影するか悩んだ」 4割の学生が「面倒」

企業が導入する狙いとは?

エントリー時に動画の提出を求められることも(画像はイメージです)
エントリー時に動画の提出を求められることも(画像はイメージです) 出典: Getty Images

目次

採用選考で、エントリーシート(ES)だけでなく動画を提出させる企業があります。希望の職業に就くためとはいえ、学生としては戸惑いもあるようです。客室乗務員(CA)に内定した女性は、20本ほどエントリー動画を撮影しました。「1人暮らしなので、どう撮影するか悩んだ」と体験を語ります。

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就活しんどかったけど…

エントリー動画を20本撮影

「動画編集の経験はありませんが、ネットで調べて撮りました」。航空系を中心に就職活動をしていた大学4年生の女性は、そう話します。

女性はCAや空港グランドスタッフを目指し、3年生の終わりから本格的に就活を始めました。エントリーした企業の多くはESを出す際に動画の提出も必須で、20本ほど撮ったそうです。

就活を始める際、CAとして働く大学の先輩に動画の提出が必要なことは聞いていましたが、撮影の具体的なイメージまでは持てていませんでした。

提出する動画は企業によってテーマが様々でした。

「志望動機や自己紹介を提出するものもあれば、CAが搭乗ゲートに立っているシチュエーションで、お客様に『おはようございます。ご搭乗ありがとうございます』と言うだけのものもありました」

就活用のマイページから送信するケースや動画提出専用のアプリを使うケースなど、送信方法も企業によって異なります。

「一発撮りしか許されなかったり、事前に撮影しても編集してはいけなかったり、会社によってお題も違うので使いまわしはできません。ESよりも面倒でした」

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画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images

「評価基準が分からない」

撮影方法も悩んだという女性。「1人暮らしなのでどう撮影するか迷いました」と話します。友だちに撮ってもらうと絶対に笑ってしまうので、結局1人で撮りました」

目の前に面接官がいないからこその緊張もあったといいます。

「面接では相手の反応が分かりますが、動画ではどこを見られているのか、何が良くて何が悪いのかといった評価基準が分かりません。『何をしたらいいのかな?』からスタートしました」

撮影には三脚があると便利ですが、「エントリー動画を撮るためだけにしか使わないから」と購入しませんでした。

代わりに家にあった物干し竿と100円ショップで買ったプラスチックの箱を組み合わせてスマホを固定し、撮影に臨んだといいます。

部屋の明るさには気を使い、オンライン面接用に買ったライトを使用したそうです。

苦労した動画でしたが、「面接で直接動画の中身について聞かれることはなかった」と振り返りました。

画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images

動画の提出「面倒」が43.9%

就職情報会社「マイナビ」が行った、2024年卒業予定の全国の大学4年生と大学院2年生を対象にした調査によると、動画の提出を求められて提出したことがある学生の割合は38.9%(前年比5.3ポイント減)でした。

動画についてどう思うかを尋ねたところ、「良いと思う」「どちらかと言えば良いと思う」の合計は33.2%(前年比5.1ポイント増)だった一方、「良いとは思わない」「どちらかと言えば良いとは思わない」は計66.8%だったといいます。

動画の提出を求められた際に思ったこと(複数回答)では「面倒だ」が43.9%で最も高く、「動画を撮ることそのものが嫌だ・苦痛だ」が31.5%、「評価基準が分からない」が31.4%、「動画ではなく面接で評価してほしい」が30.5%と続きました。

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画像はイメージです 出典: Getty Images

「ESや面接対策と同じだと思って」

マイナビの調査によると、動画ESや動画選考を導入する企業は、コロナ禍で一時的に増えたようです。2021年卒の就活では導入していた企業は1.6%(n=1081)でしたが、22年卒は3.2%(n=2086)に増加。その後、23年卒は3.1%(n=2510)、24年卒では1.6%(n=1927)に減少しました。

マイナビキャリアリサーチラボ主任研究員の井出翔子さんは、エントリー時に動画を提出させる狙いの1つとして、「応募者が多く、企業側がESでの選考が膨大になる場合、応募時点でハードルを上げて本気度の高い学生に絞る目的がある」と解説します。

動画を提出するタイミングとしてはエントリー時が多く、またほとんどの企業では文章のESにプラスで動画の提出を求めているそうです。動画の主なテーマは、「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」や「自己PR」「志望動機」だといいます。

井出さんは、求められる動画には大きく分けて「ESに近いタイプ」と「面接の代替」の二つがあると分析します。その上で次の4パターンに分けられるそうです。

1.質問が開示されている・撮り直し可能
2.質問が開示されている・撮り直し不可
3.質問が開示されていない・撮り直し可能
4.質問が開示されていない・撮り直し不可


ESに近いタイプが「1.質問が開示されている・撮り直し可能」で、提出時のハードルを高めたい企業が用いる傾向にあるといいます。一方、「4.質問が開示されていない・撮り直し不可」は面接に近いタイプで、面接よりも短い時間でとっさの受け答えなど適応力や応用力、人間性を見るために導入されているといいます。

web面接も浸透したことから動画での選考を見送る企業もありますが、井出さんは「『生成AI対策』として導入する企業もある」と話します。「AIの活用が悪いわけではありませんが、AIに頼ったESではなく『自分の言葉で語ってほしい』という理由から動画を導入する動きもあります」

多くの学生が「面倒」と感じていても、一部の企業では引き続き導入されている動画の提出。学生はエントリー動画へどのような対策をすればよいのでしょうか?

井出さんは、「基本的にはESを書くとき、面接を受けるときと同じ対策で構いません」と話します。

「動画制作のスキルを見たいという企業もありますが、一般的な企業は特殊なスキルを見ているわけではありません。自己PRや熱意を伝える努力をしていただければよいと思います。動画撮影の際も、web面接を受ける際と同様の環境を整えて準備をきちんとすることが大切です。万が一送信エラーなどトラブルがあったら、企業に問い合わせてください」
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