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#99 夜廻り猫

食事は昔からひとりだった「鍋、食べたことない」同僚に… 夜廻り猫

「鍋を食べたことがない」と言う同僚を、自宅の夕食に招いたら…
「鍋を食べたことがない」と言う同僚を、自宅の夕食に招いたら… 出典: 夜廻り猫

「鍋って、食べたことがない」と言う同僚を、自宅の夕食に誘うと――。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、SNSで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、冷え込んできた夜、男性ふたりのエピソードです。

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「すごくうまい、初めてだ…」

冷え込んできた、仕事帰りの夜。

「鍋にでもすっかなー」と言う男性に、同僚が「ひとり暮らしでしょ?」と驚きます。

「俺、食べたことないんだよね」「昔から食事はひとりだったから、鍋って食べ方もわかんない」「もはや手も出しにくい」と同僚は言います。

男性はさらりと「じゃ、ウチ来て食う?」「鎌田家流鍋、食わしてやる」と誘います。

水とだしを入れた鍋に、冷凍の油揚げ・白菜、豚肉を入れて、濃いめに味噌(みそ)をといて煮立ったらできあがり。

「すごくうまい、初めてだ…」と感極まる同僚に、男性は「これまでに絶対食ってるって!これ、ほぼ味噌汁じゃん」と笑います。

「でもシメに雑炊を食うと、鍋食った気がしてくんのよ」と男性。ふたりは笑いあいます。

心の涙の匂いをかぎつける猫の遠藤平蔵は、そのようすを見ながら「うむ」と頷くのでした。

「弱さを見せまい」としがちな男性に…

作者の深谷かほるさんは、「男性同士が笑いながら、肩を押し合ったりしながらしゃべるようすはいいですよね。リラックスした楽しそうな様子というのは、見ていても楽しいものです」と話します。

過去にあった「男は泣くな」「男のくせにおしゃべり」「女のくせにかわいげがない」といったジェンダーへの圧力ですが、「建前からは消えましたが、今も男性が強くあらねばならないというプレッシャーは根深い気がします」と深谷さん。

「男性は人に弱さを見せまいとしがちではないでしょうか。『自力で頑張る』というのは一見立派かもしれませんが、人間関係ではさらりと弱味を出せるというのも大事なことです。私も『できる努力はしているから、装う必要はない』という感じでいたいと思っています」と話しています。

【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞、単行本11巻(講談社)が2024年12月23日に発売予定。講談社「コミックDAYS 編集部ブログ」で月・金曜夜に連載中。スピンオフ「居酒屋ワカル」は講談社「コクリコ」で連載した単行本が11月22日に発売。

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