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投資額は1700万円! クレーンゲームの達人に学ぶ〝攻略〟の極意
今年は「UFOキャッチャー」が誕生して40年です

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今年は「UFOキャッチャー」が誕生して40年です
6月24日は「UFOキャッチャーの日」。今年は、誕生40年の節目です。とれそうでとれない景品と格闘し、お金を溶かしてしまった経験がある人も少なくないはず。一体どうすればとれるのか。クレーンゲーム歴39年の「達人」にコツを教えてもらいました。(朝日新聞経済部・篠健一郎、デジタル企画報道部・河原夏季)
今年は「UFOキャッチャー」が誕生して40年になります。クレーンゲーム自体は、1960年代には既に存在していました。ただ、当時は横長の箱のような形で、高さはテーブルほど。ガラス張りの天板を上からのぞき込んでクレーンを操作するタイプでした。
そんな中でセガが、1985年に開発したのが「UFOキャッチャー」でした。
透明なケースに入った景品が目線の高さにずらりと並んだUFOキャッチャーは、当時は異色の存在でした。
アニメ「それいけ!アンパンマン」のぬいぐるみを景品としたことで一大ブームに。今ではクレーンゲームの代名詞としても使われています。
訪れたのは、そんなクレーンゲームの専門店「エブリデイとれトレ屋桶川店」(埼玉県桶川市)です。ぬいぐるみやフィギュア、お菓子まで約250台のクレーンゲームがワンフロアにずらりと並んでいます。
教えてくれたのは、日本クレーンゲーム協会から「プロ」の認定を受けたクレーンゲームの達人こと、五十嵐直也さんです。
挑戦したのは、人気キャラクターのフィギュアが景品のクレーンゲーム(1回100円)。景品が入った箱は、2本の棒にまたがるように置かれています。これは「橋渡し」と呼ばれるタイプ。箱を動かして、棒と棒の間に落としたいのですが、幅をみると簡単にいきそうにありません。
「まずは箱の角を狙って、(持ち上げた箱が)どんな動きをするのかを確かめるのがポイントです」と達人。持ち上がった景品は、「ドン」と音を立てて棒の上に落ちました。「瞬間的にドスンと落ちたので、重量がある景品だなということがわかります」
同じ箱型の景品でも、重心によって攻略のポイントが変わるため、まずはこの重心を探ることが大切だと言います。
景品を大きく動かすためのコツとして達人が教えてくれたのが、アームの角張った「ひじ」の部分から垂直に引いた線を、景品の外枠と合わせることです。「寄せが甘いとあまり動かない。箱に対してどれだけ寄せられたかで、(景品をとるまでの)合計の金額が変わります」
そんな話をしながら、景品を持ち上げると、景品がゴロンと転がり、斜めにずれた箱の上部が棒と棒の間に沈み込むような状態に。次の手で上部を持ち上げたところ、一番手前の棒にあたり、その反動で景品が棒の間に落ちていきました。ここまでわずか4回!1分30秒もかからないうちにゲットしていました。
「箱の重量バランスを見ながら操作していきます。箱が斜めになったほうがとりやすいので、真横にならないように気をつけます」
そんな達人がクレーゲームにのめり込むきっかけとなったのは、5歳のときのある体験でした。
親に連れていってもらった遊園地でクレーンゲームに初挑戦。ギュッと握りしめた100円玉1枚を入れ、ボタンでアームを操作したところ、アザラシのぬいぐるみをゲットできました。「100円一枚でたまたまとれてしまったんです。これはすごいなと。成功体験ですね」
学生時代は放課後になるとゲームセンターへ。休日には他県に「遠征」に出かけ、独学で腕を磨きました。目を閉じながら操作ボタンを押し、機械の音を頼りに景品をとる練習をすることも。アームを動かす感覚をひたすら体に染み込ませていきました。
就職後もクレーンゲーム熱は冷めませんでした。そんなときによく通っていたゲームセンターで「うちで働かないか」と声をかけられます。達人は「たくさん景品をとっていたので、マークされていたんでしょうね」と苦笑いします。「スカウト」を受けて、クレーンゲーム専門店を運営する会社に転職しました。
達人によると、これまでにクレーンゲームに使ったお金は「おおよそ1700万円」。大好きな「豆しば三兄弟」のぬいぐるみをはじめフィギュアからロボットまで、ゲットした景品は1000種類以上に上ります。
「景品のとり方に教科書的な答えはありません。どうやったら景品がとれるか、戦略を考えるところがクレーンゲームの面白さです。景品がとれるかとれないかのドキドキ感があり、とれたときには達成感があります」
達人は、そんなクレーンゲームの楽しさやテクニックを、協会が主催する「クレーンゲーム達人検定」やYouTubeを通じて多くの人に伝えています。
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6月24日8:20 記事の一部を修正しました
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