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800ページ増えても厚みが変わらず? 70周年「広辞苑」の秘密を聞く

5月25日は「広辞苑記念日」

左端の広辞苑初版から第六版までの歴代広辞苑=岩波書店提供
左端の広辞苑初版から第六版までの歴代広辞苑=岩波書店提供

目次

5月25日は「広辞苑記念日」。1955年に初版が出版された岩波書店の「広辞苑」は、2025年に出版70年を迎えました。広辞苑はどのように作られているのでしょうか。辞典編集に30年以上関わるベテラン、平木靖成・編集局副部長(56)に裏話を聞きました。

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800ページ増えても変わらぬ厚み

「これ……武器じゃん」。小学校の時、図書館で広辞苑を手にした友人が口にした言葉に、思わず吹き出したのも今となっては懐かしい思い出。
平木さん、失礼な質問で恐縮ですが、広辞苑って分厚すぎません?

「広辞苑の厚さは80mm。これ、製本機械の限界で作っているんですよ。この厚みは初版からほとんど変わっていません。機械で大量に製本することを考えると、現時点ではこれ以上分厚くすることはできません」と、平木さん。

なるほど、ずっと厚み限界で作ってきたんですね。というと、これ以上ページが増えることは無いんでしょうか?

「それは違います。現に2008年刊行の第六版から、2018年に今の第七版に改訂した際も140ページ増やしましたが、製紙会社に広辞苑専用の薄くて裏写りせず、かつ独特の『ぬめり感』を持たせた紙を開発していただき、厚さを変えずに出版しています」

広辞苑に収録された言葉の数は1955年刊行の初版で約20万項目。改訂のたびに新語を増やしたり、逆に削ったりという作業を続けながら、最新の2018年刊行の第七版では約24万項目まで増えているとのこと。総ページ数は、初版で2,370ページだったものが、第七版では3,216ページにまで増えているそうです。

まさか800ページ以上も増えているとは…。初版から第六版まで、ずらっと並んだ広辞苑を見ても、厚みが変わっていないことがわかります。まさか、第八版もさらに増え……?

「技術的には紙をさらに薄くすることが可能だと言われています。まだまだ厚みを変えずに増やせるはずです」と平木さんはニヤリとしました。

執筆・校閲者にはノーベル賞受賞者も

広辞苑の特徴は、様々な専門用語や人名・地名、法律名、動植物名などを含む百科事典の要素と、日本語の言葉としての意味を説明する国語辞典を組み合わせている点にあると平木さんはいいます。

専門用語などについては、編集部だけでは執筆・校閲ができないため、様々な研究者が携わっているそうです。第七版の執筆・校閲者はなんと総勢224人。巻末には第六版以前の執筆・校閲担当者の名前も記載されており、なかにはノーベル賞を受賞した故・湯川秀樹さんの名前も記載されています。70年の歴史の厚みを感じます。

さて、前回の改訂は2018年で、その前の第六版が2008年、第五版は1998年に改訂されています。このペースだと、次の改訂は2028年でしょうか?
「それは決まっていないので、言えません」と、平木さん。

「ただ辞典業界では、次の改訂に向けた作業は刊行の翌日から始まると言われています。私の感覚では刊行の翌日よりもさらに早く、刊行する前から『次の版ではここの出典を見直そう』などと考えています。なので、常に改訂に向けて意識して働いていますという説明になるでしょうか」

なるほど。次の版にも期待しています!

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