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「これレンタル品なの!?」 お酒が入ったあの箱、実は要返却だった
酒屋さんなどで見かける、酒びんを入れるのに使うプラスチック製の箱。一般家庭などで台のかわりにしたり、入れ物にしたりしている例も見かけますが、実はこの箱、返さなきゃいけないものだと知っていましたか?SNSでたびたび話題になるこの問題、業界でも注意を呼びかけています。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
話題になっていたのは「P箱」と呼ばれる樹脂製の箱です。
ビールや日本酒などのびんを収納・運搬するのに使われているものです。
一升びん用のP箱を取り扱う新日本流通株式会社の担当者は「実はあの箱は、弊社を含むレンタル業者や酒造メーカーの所有物なのです」と話します。
P箱の原材料は高密度ポリエチレンで、「P」はプラスチックの頭文字を取ったものだそうです。
「業界では『P箱』と呼ぶことが多いですが、プラスチックコンテナーなどと呼ばれることもあります」
担当者によると、日本酒や焼酎などの場合、メーカーが商品を出荷するためのP箱を専門業者から調達する仕組みになっているそうです。
P箱に詰められた状態で出荷されたお酒は、問屋を通して小売店、そして消費者の元へやってきます。
複数本のお酒をまとめて購入するなどした際には、商品がP箱ごと各家庭へと届けられる場合もあり、その時は、空になったP箱は小売店を通して回収される仕組みだそうです。
ちなみに、ビールびんの場合は、各ビールメーカーが独自に所有するP箱を使用しているそうですが、これも小売店などを通じて回収・再利用される仕組みになっているそうです。
「近年、こうしたP箱が回収されずに家庭などに置いたままになってしまうことがあり、困っているのです」
担当者によると、最近は小売店などを通さずネット通販などで各家庭に届いたP箱が、回収されないままになってしまう例も増えているそうです。
SNSでは「え、これレンタル品なの?」といった驚きのほか、「家庭ごみで出されていた」「メルカリで売られていた」といった「目撃情報」も寄せられていました。
また、「居酒屋でイスになっていた」「野球部のバットケースにされていた」と別の用途に転用されていたという投稿もありました。
回収されたP箱は再び酒造メーカーなどへと納入され、繰り返し再利用されます。
「P箱は古くなったり傷ついたりして使えなくなっても、リサイクルされて新しいP箱に生まれ変わります」
新日本流通によると、同社のものだけでも3600万箱以上のP箱が市場に流通しているそうです。
P箱を再利用する仕組みが生まれたのは1973年だそうです。
「かつては、サザエさんに登場する三河屋さんのような、町の酒屋さんがたくさんありました。そうした小売店が減少したのも、P箱の回収が難しくなる一因になっています」
新日本流通を含む、レンタル業者3社で作る「日本P箱レンタル協議会」では、ホームページでP箱の回収を呼びかけるなど、P箱に関する情報の発信に努めているそうです。
「もしも自宅などにP箱があれば、まずは近くの酒屋さんへ。近所に酒屋さんがなければ、集荷協力店の回収拠点に持ってきていただければ」
新日本流通のホームページでは各都道府県の回収拠点の場所を確認できるほか、自分で運ぶのが難しい人のために、回収依頼のフォームも設けているそうです。
「環境保護やSDGsの重要性が広く知られる前から、50年以上続いている仕組みを今後も守り続けたいと思っています。ご協力いただけると幸いです」
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