ネットの話題
「他社製品もリサイクルします」タイガー魔法瓶の取り組みが話題
他社の製品も含めて、不要になったステンレス製ボトルを回収しています――。魔法瓶や炊飯器などで有名な、タイガー魔法瓶の取り組みがSNSで話題になってます。不燃ごみに出した場合と比べてどう違うのかなど、取り組みの狙いや効果について聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
「メーカー問わず、役目を終えたステンレス製ボトルを回収・再資源化しています」
タイガー魔法瓶のX公式アカウントのこんな投稿が話題になりました。
投稿には、ステンレス製ボトルの回収BOXが置かれている場所の一覧が見られる特設サイトのURLも添付されていました。
全国の量販店を中心に、市役所や公民館などにも設置されているようです。
ユーザーからは「知らなかった」「調べたら近所でも回収していた」といった反応の他、「他社の製品も回収してくれるのはありがたい」といった声もありました。
記者が調べたところ、多くの自治体では、不要になったステンレス製ボトルは「不燃ごみ」に分類され、鍋などの金属類と同様に再資源化される仕組みになっているようです。
なぜ企業が独自に回収BOXを設置したのでしょうか。
タイガー魔法瓶の商品企画第2チーム・マネージャー南村紀史さんによると「多種多様な金属や非金属が混ざる不燃ごみの場合、分別するのに多大なコストがかかります。最初からステンレス製ボトルとして回収することができれば、その手間を省くことができるのです」
ステンレス製ボトルの原材料は、容器部分に使われるステンレスと、フタや栓の部分などに使われるポリプロピレン樹脂の2つに大別されるそうです。
「いずれも、きちんと仕分けられてさえいれば再資源化が可能なため、回収段階での分別が重要になるのです」
また、不燃ごみのリサイクル体制が十分でない自治体もあるため、地域によっては不燃ごみに出してしまうと再資源化が十分に行われない場合もあるそうです。
「弊社のBOXで回収したステンレス製ボトルは、専門業者に再資源化してもらいます」
再資源化されたステンレスは、原料の状態で再び市場に流通するため、ステンレス製ボトル以外に生まれ変わることもあるそうです。
タイガー魔法瓶では、この取り組みを2021年から続けていて、回収したステンレス製ボトルは3年間で9万3千本以上になるそうです。
不要になったステンレス製ボトルの回収を始めた理由について、南村さんは「私たちメーカー側だけではなく、消費者のみなさんと一緒になって取り組む社会貢献活動ができないかと考えたのです」と話します。
タイガー魔法瓶では2020年にSDGsアクションの一環として「4つの約束」を発表したそうです。
「武装勢力の資金源となっている『紛争鉱物』を使わない。環境への負荷が高い『フッ素コート』を使わない。お客様の健康と安心を担保するため、コストがかかっても自社生産する。『マイボトル』の普及推進でプラスチックごみを削減する、の4つです」
記者はこれを聞いて、十分に納得できる内容だと感じましたが、タイガー魔法瓶の社員の間では、ある問いが残ったそうです。
「これはあくまで、私たちのもの作りのポリシーを示すものでしかない。より多くの人に、SDGsを自分事としてとらえてもらう仕組みは作れないだろうか。何か一緒にアクションが出来ないだろうか」
その結果、消費者の協力が必要となるステンレス製ボトルの回収事業を始めたそうです。
実際に回収BOXに入れる前の注意点について聞きました。
「まず、アルミやプラスチック製の水筒が混ざらないよう、ステンレス製であることを確認してください。そのうえでよく洗って乾燥させてください」
フタもポリプロピレン樹脂であれば再資源化できるため、外さなくてよいそうです。
「布製のポーチなどが付属している製品については、ポーチは外してボトルのみを回収に出していただけると助かります」
ラベルがはがれていたり、箱を無くしたりして材質が分からない製品を、ステンレス製かどうか見分けるにはどうすればよいのでしょうか。
「経年劣化の影響もあるので絶対とは言えませんが、時間が経っても中身を温かい・冷たいままに保つ保温・保冷機能がしっかりしている製品は、ステンレス製ボトルが使われている可能性が高いと思います」
また、タイガー魔法瓶の製品にはボトルの底に品番が記されており、公式サイトを見れば材質などの製品情報を確認できるそうです。
「全てのメーカー、製品が品番を記載しているわけではありませんが、もしもボトルに品番があるなら、そのメーカーのホームページなどで確認してみてください」
3年ほど前に始めた取り組みが、今になってSNSで話題になったことについて、南村さんは「企業の社会貢献活動はなかなか目立ちにくいものですが、地道に続けていれば少しずつ浸透していくんだなと嬉しくなりました。一過性のもので終わらせず、続けていくことの重要性を再確認した出来事でした」と話しています。
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