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#13 withnews10周年

「お悩み相談コンテンツ」にある〝三角関係〟 回答者が意識すること

「甘い」「叱って」リクエストに回答者は

10月19日に開かれたイベントで、「お悩みコンテンツ」について語り合いました
10月19日に開かれたイベントで、「お悩みコンテンツ」について語り合いました

目次

SNSやYouTube、ラジオ、新聞……今、あらゆるメディアでお悩み相談のコンテンツが出されています。朝日新聞の人生相談コーナー「悩みのるつぼ」で回答者を務める清田隆之さんは、コンテンツにおける〝三角関係〟を意識しているそうです。10月に開かれたイベントで、臨床心理士のみたらし加奈さんと語り合いました。

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清田隆之さん
1980年東京都生まれ。文筆業、桃山商事代表。ジェンダー、恋愛、人間関係、カルチャーなどをテーマに様々な媒体で執筆。朝日新聞beの人生相談「悩みのるつぼ」では回答者を務める。

みたらし加奈さん
1993年東京都生まれ。臨床心理士。大学院卒業後、総合病院の精神科に勤務。現在は国際心理支援協会に勤務しながら、朝日新聞デジタルRe:Ronの連載「みたらし加奈の味方でありたい」で回答者を務める。

水野梓(ファシリテーター)
朝日新聞withnews編集長・記者。1985年茨城県生まれ。2008年入社。大分総局、新潟総局、大阪編集センター、科学医療部、メディアデザインセンターを経て現職。

相談者と回答者、読者の〝三角関係〟

清田:「モヤモヤ」のコンテンツで新聞の相談などは、相談者と回答者、それを読んでいる人の三角関係があります。それはすごく意識するんですよ。

例えば、読者のSNSの反応やフィードバックでは、相談者さんに「共感しました」という声もありますが、中には「この人は少し甘いんじゃないか」という声もあります。相談者さんに〝説教〟をしたい人たちもいて、「清田さん、もっと言ったほうがいいよ、叱ってよ」と言われることもあるんです。

確かに相談者さんにも改善の余地があるなと感じるときもあり、その場合は言葉をどう届けるのがいいかと考えますが、悩みごとって個人の問題というより、背景に社会構造が関与している場合も多いように感じるんですよね。

相談者さんにとっては、その人生相談がやっとの思いで手を伸ばした先ということもあります。オーディエンスを意識して回答し過ぎると相談者さんが置き去りになってしまうので、そこはとても注意が必要だなと考えています。

みたらし:私もできるだけ相談者の方の言葉にフォーカスするようにしています。相談者の方の「口を塞がないように」という感じです。

水野:第三者を意識するとどうしても強い言葉になったり、記事の場合は強いタイトルや画像であおってしまったりになりがちですが、相談者の方も「強い言葉」を欲しているのでしょうか?

清田:欲している場合もあるとは思います。相談文に「ズバッと切ってください」「叱ってください」と書かれていることもあるので。

でも、そういうときでも説教みたいなことは書けない。そうではなくて、なんで「ズバッと切ってほしい」と思ってしまうのかにフォーカスしないと問題が前に進まない気がします。

みたらし:私のところにメッセージを送ってくださる方々は、おそらく厳しくというよりは優しくあたたかい空間でお話がしたいみたいな想いをもつ方が多いように感じていて、自分の表現にも合ったものだなと思います。

メディアに出るときは自分の言葉の強いところを見出しにされたり、文章構成も強い感じで書かれたりすることはありますね。

キャッチーに書かれてしまうと、心苦しいのですが修正を入れさせてもらうことはあります。でも、そのほうが多くの人に響くのかなとは考えてしまいますね。
 

メディアとしては読まれたい、けれど

清田:メディア側としては難しいところですよね。読まれたいけど表現は……。

水野:そうなんです。私自身、強い言葉が苦手なので、「強いタイトルで釣って押してほしいんだな…押さないでおこう」と意志を持ってクリックしないというのはあります。

読んでもらいたいと思ってもらえるのはどんなタイトルかは熟慮しますが、そもそもwithnewsとしては炎上ネタをそのまま扱うことはしません。

みたらし:水野さんの話を聞いて私はすごく反省したんですけど、自分はクリックしていましたね。過激な感じの記事とか(笑)。

よくパートナーに「なんでそんな俗っぽい感じのものを読んでるの?」みたいに言われるのですが……読んじゃいますね。(笑)

清田:いや分かります。作り手がいるのでしょうもないと言っては失礼ですが、例えばInstagramで見かけた「世帯年収が低そうに見える子どもの服装10選」とか、本当にひどいじゃないですか。

でも、「お前、気になるだろ?」みたいな感じのタイトルを速攻でクリックしてしまうと、自分の心の嫌な部分を感じますよね。

みたらし:自分の中の悪魔がクリックさせているみたいなね。過激な見出しって「悪魔召喚」なのではないでしょうか。

清田:確かに。「本当は気になってるんだろう?」みたいな。

水野:ささやかれてるわけですね。悪魔に。

清田:最近で言うと、自分たちのメディアとしては過激なことや偏ったことを言えないけど、SNSの声を拾って記事を作るといくらでも過激な声をとって見出しにできるじゃないですか。

ネット上にはいくらでも過激な声があって、人の心を刺激する悪魔的な見出しをいくらでも作れてしまう。メディア側にとっておいしいコメントってたくさんあって、ずるい誘惑ですよね。ネットの声からとったと言えば事実ですからね。

みたらし:悪魔に導かれて開いた記事がひどい内容で、余計に悪魔が増幅するようなパワーを持っているのはダメですよね。タイトルによって召喚されたものの、読み進めるごとに悪魔がふわーっといなくなるみたいな記事だとバランスが取れているのですが。

水野:悪魔を増幅する記事のほうが多い気はしますよね。そこが儲かる仕組みを変えないといけない。

ポッドキャストでも「バズ」を考える?

水野:清田さんはポッドキャストで、聞かれるためにバズらせるということを考えますか?

清田:ポッドキャストって数字になびかない仕組みがあって、視聴回数も出さないのでそれがいいと思います。数字に惑わされない。

水野:ポッドキャストは多くの方が通して聞くので誤解もされづらいですし、炎上もあまりないのがいいところでもあるかなとは思いますね。あと、声では本音を隠しきれないみたいなところもある気がします。

清田:確かに声に出ますよね。重いテーマのときに少し笑っていたり、声のトーンが軽かったりすると、この人ちょっと軽くみてるのかなと思われてしまう。リスナーの方から、「あの時の清田さんの軽はずみな発言はちょっとどうかと思います」というコメントをもらうこともあります。

水野:でも、そう言ってもらえるのはありがたいですね。

清田:本当にありがたいです。

水野:SNSで切り取って炎上させるとかではなくて、その人に直接指摘するのはすごくいい解決方法かなと思います。

みたらし:みなさん先に自分のSNSで書いてしまいますよね。ある種コンテンツにしている人もいるのでしょうけど。

水野:発言を見つけて燃やすというものですね。

清田:友達がLINEで「あれは良くなかったと思うよ」と言ってくれることもありますし、面識ない人がメールをくれることもありますし、本当にありがたいです。
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