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#37 親子でつくるミルクスタンド

地滑りや道の崩落…酪農など生業が再びの被災「元に戻ってしまった」

能登の「西出牧場」の牛たち。酪農だけでなく、宿泊や飲食などの生業(なりわい)もふたたび被災してしまいました
能登の「西出牧場」の牛たち。酪農だけでなく、宿泊や飲食などの生業(なりわい)もふたたび被災してしまいました 出典: 木村充慶撮影

能登半島を襲った9月21日の豪雨では、石川県輪島市・珠洲市、能登町で甚大な被害が発生しました。生活の基盤である生業(なりわい)にもさまざまな影響が出ています。正月に発生した地震から9カ月、ようやく復興に向けて進んでいた牧場でも、一時孤立化するなどふたたび被害を受けてしまいました。(木村充慶)

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豪雨でも地滑りが発生

都内でミルクスタンドを運営する筆者は、地震で大きな被害を受けた牧場を支援しています。

被災直後に訪ねた牧場でも、今回の豪雨でまた大きな被害を受けてしまったところがありました。

豪雨被害の1週間後の9月28日ごろ、能登町にある西出牧場を訪れました。地震で牧草地が地割れを起こしてしまった牧場です。

【関連記事】牧草エリアに亀裂、復旧見通せない牧場も…暮らしを支える酪農の被害

西出牧場の西出穣さんによると、豪雨はとても激しいものだったそうです。

そのため、牧草地の一部の地面が滑り落ち、地面に埋まっていた配管なども壊れてしまいました。

地面が谷底に滑ってしまった場所です
地面が谷底に滑ってしまった場所です

「過去にも大雨で牧草地が崩れたことはありましたが、同時に複数の場所で崩落や地滑りが起きたのは初めてです。地震でできた地割れの復旧工事も始まっていない中で起きた大雨だったので、地割れに水が染み込み被害が拡大したものではないでしょうか」と話します。

豪雨で1週間以上孤立した牛舎

地震でも甚大な被害を受けた、珠洲市の山奥にある「松田牧場」は、豪雨被害でひとつの牛舎が一時孤立化のような状態になったそうです。

広大な敷地に4つの牛舎が点在していますが、ひとつの牛舎に行く道が土砂崩れや道路の崩壊で通れなくなりました。筆者が訪問した9月29日もそのような状態のままでした。

土砂崩れで通れなくなった道の復旧方法を考える松田牧場の牧場主松田徹郎さん(右)と専門的な技術を持つ災害ボランティア(左)
土砂崩れで通れなくなった道の復旧方法を考える松田牧場の牧場主松田徹郎さん(右)と専門的な技術を持つ災害ボランティア(左)

トラクターなどで道なき道を進み、牛のための水などは届けていましたが、電気や水道も止まってしまっているため、作業が思うように進められません。

専門的な技術を持つボランティアを中心に倒れた電柱を取り除いたり、土砂崩れを撤去したりしていました。

技術系の災害ボランティアが土砂崩れエリアの復旧にあたっていました
技術系の災害ボランティアが土砂崩れエリアの復旧にあたっていました

訪問の数日後、孤立化は解消されたと報告を聞きました。酪農は電気やたくさんの水などが必要なので、すぐに復旧できない難しさが改めて露呈しました。

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仲間の被災、クラファンのプロジェクトも停滞

能登町にある「寺西牧場」では地震の影響で、出荷先のレストランが倒壊してしまい、ミルクの卸先がなくなってしまいました。

そこで筆者も支援に携わり、ミルクをフリーズドライしてパウダーにした商品の企画を進め、クラウドファンディングを行っていたところでした。幸い山頂の牧場だったため、豪雨による被害はほとんど出ませんでした。

開発中のフリーズドライのミルク「ミルふり」
開発中のフリーズドライのミルク「ミルふり」 出典:被災した牧場のミルクが、おいしいフリーズドライに!「ミルふり」

ただし、周りの道路などで土砂崩れなどが発生して、ミルクの発送が数日間ストップ。

そして、一緒に商品開発をしていた仲間が被災してしまったため、プロジェクトは停滞を余儀なくされました。

地震から復興に向かって進んでいた牧場でも出鼻を挫かれることになりました。改めて、災害とどう向き合うか考える機会になりました。

宿泊業 復興に向けて進んでいたものの…

もちろん、豪雨の影響が出ているのは酪農だけではありません。

輪島市三井町で複数の古民家を活用して宿泊業を営んでいた山本亮さんは、地震で被災後、民間ボランティアの受け入れを行っていました。

災害ボランティアによる復旧作業の様子
災害ボランティアによる復旧作業の様子

宿泊業を一旦ストップし、ボランティアとともに地域の被災住居の復旧作業をサポートしていました。

そして、10月から復興に向けて、被災した古材を活用した家具などの制作や産学連携のプロジェクトなどを行おうとしているところでした。

「ようやく前向きに進もうと思っていた時に今回の豪雨がきました。元に戻ってしまった感じです。また数カ月は復旧作業を行わなくてはいけないと思います」

復活を目指した飲食店もまた被災

輪島のフレンチレストラン「ラトリエ・ドゥ・ノト」のシェフ池端隼也さんは、地震で被災した翌日の1月2日からずっと地域の飲食店の仲間と炊き出しを行ってきました。

8月には炊き出しをやってきた仲間とともに「芽吹」という居酒屋を輪島にオープンさせました。

「ラトリエ・ドゥ・ノト」シェフ池端隼也さん=杉田知洋江撮影
「ラトリエ・ドゥ・ノト」シェフ池端隼也さん=杉田知洋江撮影

池端さんは「観光が復活するためには飲食業が必要」と言います。

「能登は魅力的な食材がたくさんありますが、飲食店がないと観光で来られた方は楽しむことができません。食材を味わえる飲食店は輪島の復興のためには必要なんです」

そして、たくさんの観光客に来てもらえるようにと各地に赴き、PRしてきました。

「震災後、前を向かないといけないと思い、明るく振る舞ってきましたが、今回の豪雨でその気持ちが折れてしまいそうです。被災後、借金をして店を復旧していた仲間の落胆した様子は見ていられません」と話します。

二重被災の被害認定「まだ見えない」

石川県に入り、災害支援の調整を行う全国災害ボランティア支援団体ネットワーク事務局長の明城徹也さんによると、「災害後は行政からの認定で罹災証明をもらいますが、今回は、地震からすぐに起きた豪雨災害のため、その対応が定まっていない」といいます。

豪雨による濁流に飲み込まれてしまった輪島の家屋
豪雨による濁流に飲み込まれてしまった輪島の家屋

例えば、震災後の罹災証明を受けて今回の豪雨でも被害に遭った場合、地震と一体とみなして罹災証明を取り直すことができるのか、別々の災害として罹災証明を受けるのがよいのか、判断が難しい状況です。

二度にわたる大きな被害を受けた能登の方々のことを思うと、先が見通せるように、とにかく早め早めの対策が必要だと思います。

簡単ではありませんが、なんとか復旧に向けて前に進んでもらいたいと思います。

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