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ネットの話題

〝いけず女将〟鬼神のように一心不乱に 「菖蒲打ち」ネットで話題に

「菖蒲打ち」をする〝いけず女将〟こと大西里枝さん=稲田大樹( @usalica )さん撮影・提供
「菖蒲打ち」をする〝いけず女将〟こと大西里枝さん=稲田大樹( @usalica )さん撮影・提供 出典: 稲田大樹( @usalica )さんXアカウント

目次

着物を召した上品な女性が、突如として細長い植物を振り上げ、地面にたたきつける――。そんな「菖蒲打ち」という行事の様子がSNSで話題です。イベントとしてこの菖蒲打ちを開催した“いけず女将”に話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮、朽木誠一郎)
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和服姿とのギャップに衝撃

「エヴァが暴走してるみたい」「体幹しっかりしているし、リズムもいいし、何より和服が全く乱れない」などとして、SNSで話題になっているのが、5月5日の端午の節句にあわせて京都で行われた「菖蒲(しょうぶ)打ち」の様子です。
菖蒲打ちとは、小学館デジタル大辞泉によれば、“端午の節句に行われた男の子の遊び”。“ショウブの葉を編んで縄状にし、地面にたたきつけて大きな音の出たものを勝ち、または切れたほうを負けとした”と説明されています。

それをSNSで呼びかけてイベントとして開催したのが、京都の扇子屋「大西常商店」の代表を務める大西里枝さんです。
 
大西さんは女将業の傍ら、“いけず”(「意地悪」「裏表がある」といった意味の言葉、京都の人の気質を指して表現されることがある)をテーマに、胸元にBUBUZUKEやDAIKON TO OAGE NO TITANなどと書かれた「いけずTシャツ」や、言いづらいことを代弁する「裏がある京都人のいけずステッカー」などの企画に参加しています。

大西さんによれば、菖蒲打ちには、「病気や邪気を払うとされる菖蒲で地面をたたくことで悪魔を封じ、音で邪気祓いをするご利益まであると言われている」そう。

関東育ちの記者は、これまで直接見たことがありませんでした。京都ではよく見られる光景なのでしょうか。

大西さんに聞いてみると「いえ、京都でもやっているところはほとんどないと思います。正直、地面をたたかずにお風呂に入れたり、軒下に飾ったりするだけの家の方が多いです」とのこと。

Xのプロフィール欄で「年中行事ガチ勢」を名乗る大西さん。今年の菖蒲打ちについて、あまりの動きの激しさからか「シンプルに肩と背中が死んでる」とXにコメントしています。そんな大西さんは、これまでにもお店の前などでお盆や正月などに伝統行事を実演・発信してきました。

この菖蒲打ちをイベント化したのは7年ほど前から。「見るだけでなく、みんなで楽しめる参加型の年中行事はないだろうか」と考えたことがきっかけだったと言います。

「私も、菖蒲打ちについては両親から『昔はこんな行事もあったんだよ』と聞いた程度でした。自分で文献を読むなどして詳細を調べ、企画を温めました」

今年の菖蒲打ちには40人ほどの観客が集まり、大西さんを手本に菖蒲打ちをしていく人もいたそうです。

崩れない着物の秘密

創業112年の老舗扇子屋の女将として働く大西さん。

京都をテーマにしたさまざまな企画に女将として参加している理由を聞くと「地域に根付いた文化や風習を伝えていけたらいいなと思っています。私たちにとっては当たり前の日常を、他の地域の人が『知らなかった』『面白い』と思ってくれるのは素敵なことだと思います」。

今回、Xの投稿への反応で目立ったのが「こんなに激しく動いて着崩れないのはすごい」といったもの。

その秘訣はあるのか大西さんに聞くと、少し考えた後、「正しい着方を学ぶのが第一ですが、やはり最後は『慣れ』じゃないでしょうか。帯を締める位置だけでも、人によって最適な位置は微妙に違うんです。この感覚は、毎日着物を着ないとなかなかつかめないと思います」と答えてくれました。

一連の取り組みが反響を呼んだことについて「着物姿とのギャップのせいもあるとは思いますが、興味を持っていただけたことはうれしいです。来年以降もまた続けていきたいです」と話しました。

ちなみに、8月のお盆には、海藻の一種のあらめ(荒布)を炊いてお供えにし、精霊送りのために、そのゆで汁を戸口にまく「追い出しあらめ」という行事をやる予定だそうです。
 

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