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「日本の人、教えて」つわりの妻のため外国人夫はTikTokで聞いた
届いたアドバイスは1700超、初めて作った日本食は
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届いたアドバイスは1700超、初めて作った日本食は
「日本のみなさん、ぼくは困っているよ」「気持ち悪くても、食べれるものは何ですか」。異国の地で出産する妻を支えるため、外国人の夫が、慣れない日本語で必死に質問する動画がTikTokで拡散されています。1700超のアドバイスが寄せられ、夫が作った初めての日本食。妻は驚いてーー。投稿者に話を聞きました。
《日本のみなさん、ぼくは困っているよ》
《おしえてください。僕はインドネシア人のアルフレッドよ》
《ぼくのおくさんは日本人で、いまおなかのなかに、あかちゃんいる》
手元にあるメモを、たどたどしくも必死に読み上げます。表情には緊迫感があります。
《きのう、おくさんがおなかすいた。けど、ぼくがごはんつくれなくて、いっぱいおこった。
ぼくの、おくさんおこったら、超こわいよ》
《日本の人、教えてほしい。ぼくが、おくさんに何をつくって食べさせたらいいですか? おなかあかちゃん、きもちわるくても、食べれるものはなんですか。ありがと》
約1分半の動画で質問したアルフレッドさん。
コメント欄では「これぞ正しいSNSの使い方だよね」「日本人の奥さんだから日本の食を、っていう優しさに泣いた」などと称賛が寄せられました。
また「うどんがおすすめです!」「そうめんはどう?」「においが つらいかもしれないから あたたかいより つめたい たべものが いい と おもうよ!」「せなかをやさしくさすってあげてね」など、難しい言葉を使わない「やさしい日本語」や、英語などでアドバイスをする人もあり、1700件超のコメントが連なりました。
「コメント欄が平和で泣いている」という人も現れるほど、あたたかい言葉があふれました。
@altandayo たすけて日本みなさんボクはこまてるよ。ぼくのおくさんはお腹すいた。#日本人#インドネシア#妊娠#にんぷさん#ぼくにほんごわからない #おくさんちょこわいだよ ♬ original sound - Alfred
インドネシアのバリ島に住むアルフレッドさん(28歳)に、ZOOMで、インドネシア語で話を聞きました。
バリ島で出会い、恋に落ちた日本人女性との間に赤ちゃんを授かったと分かったのは今年1月。「二人にとって初めての妊娠でした。とてもうれしかったです」
彼女は、自然豊かなバリの環境にほれこみ、愛するアルフレッドさんのいるバリ島で出産することを希望していました。
でも、しばらくすると、つわりが始まり、それまで好んで食べていたインドネシア料理さえ、まったく体が受け付けなくなってしまっていました。しかも、おなかがすくと気持ち悪くなるタイプの「食べづわり」。
なるべく気持ちが悪くならないよう、「何が食べたい?」と聞くのがアルフレッドさんの習慣になりました。
ところが、連日のその質問が妻を苦しめます。
何を食べても気持ちが悪くなり、何を食べたら良いのか自分自身でも分からなくなっていたタイミング。
つわりで気持ちの余裕がなくなり、「どうせ私が作るんだし、もう聞いてくれなくて大丈夫だから!」と、つい怒ってしまいます。
でも、アルフレッドさんはここで落胆したり、逆ギレなどしたりしません。「だったら、食べられるものを作ってあげよう」
そして「日本の文化で育った人には、日本の食事が一番良いはず」と考えます。ただ、日本食のことを聞こうにも、アルフレッドさんにとって初めて出会った日本人が、妻。ほかに日本の友人もいません。
「こんなとき、日本の人は、いったい何を食べるんだろう」
インドネシアなら、気持ち悪い時の定番はスープや鶏肉入りのおかゆです。でもどちらも「あぶらっこい」。
そこで、TikTokで聞いてみることにしました。それまでアルフレッドさんはインドネシア国内向けに犬の動画をあげた経験はありましたが、日本向けに改めてアカウントを作り直しました。
日本語はほぼ話せません。セリフは、対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」とGoogle翻訳を活用して作りました。
「10件でも返信がくれば十分」と思って動画を作り、妻に承諾を得てTikTokに投稿したアルフレッドさん。またたく間に動画が拡散して、びっくりしてしまいます。
ついたコメントはGoogle翻訳を使って、読みました。Google翻訳でもうまく解読できないものがあると、妻に読んでもらいました。
わざわざGoogle翻訳を使いインドネシア語でアドバイスをくれた人もいて、感激しました。
そして、コメントにもあった「うどん」を作ろうと決意します。うどんは、妻が元気だった時に作ってくれたものを食べたことがあり、「形」はイメージできました。「麺をゆでるだけだから、インスタントラーメンみたいなもんだよな」
料理経験は、インスタント麺を作るぐらいだったアルフレッドさんにとって、入りやすい日本食でした。
ところが、中心部の日本食スーパーに行ってびっくり。麺コーナーには、うどん、そば、そうめんと、多種多様な麺があったからです。「インドネシアは、麺は麺(ミー)だけですから」
味付けにも悩みました。日本食の定番のしょうゆ。そして妻のことを考え、「つわりで酸っぱいものを好んでるから」と、酢も入れてみました。もっとおいしくなるように、コチュジャンと砂糖、ごま油も混ぜ、インドネシアで定番の「甘辛」味に。
できたうどんに、妻は「酸っぱくて、辛くて、韓国っぽくて、アジアンな感じ」と驚きつつ、料理をしたことがないアルフレッドさんの手料理に感激。つわりで食べることが厳しかったゆで卵を除き、すべて平らげました。
次の日は、アドバイスにもあった「つめたいうどん」に挑戦しました。
「麺を冷たくする」という経験はありませんでしたが、韓国レストランで見た冷麺を参考にして、氷を入れてみました。「氷を麺に入れるなんて不思議な経験でした」
「大根おろし」の大根はインドネシアにも似た野菜がありますが、「生」で食べた経験はありません。「うへぇ、不思議な味っ」。ココナツの実を削る調理器具で、すりおろしました。
今回はシンプルにしょうゆで味付けし、盛りつけは妻にも手伝ってもらって、わかめと梅干しを添えました。妻は「めちゃくちゃおいしい!」と、完食しました。
「台所に立つと、いつも新しい発見があります」と、アルフレッドさんも未知の日本食作りを楽しんでいるそう。最新作は「みそスープ」。腕は格段に上がっています。
うれしいことに、妻のつわりも落ち着いてきたそうです。
初投稿から約1週間で、すでに約5000人のフォロワーがいるアルフレッドさん。これからも、TikTokを活用しながら「バリで生きていく僕たち家族の日々を、発信していきたいと思います」。
日本語を練習しつつ、日本からのコメントに返信できるようになること、より多様な料理を作ってあげられるようになることが目標です。
10月には待望の新しい家族を迎えます。「子どもの手本となるような父親になり、末永く家族を幸せにしていきたいです」と抱負を語ってくれました。
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