ネットの話題
かわいくて食べられない…ワニ大福 誕生の経緯「疲れていた」から?
かわいくて、頭から食べられない――。静岡県にある熱川バナナワニ園で販売されている「ワニ大福」がSNSで話題になっています。ユーモラスな見た目だけでなく、味にもこだわったというこの一品。誕生の経緯を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
熱川バナナワニ園は静岡県東伊豆町の温泉街にあり、16種類のワニや約5000種類の熱帯植物などが見られる動植物園です。
話題になっているのが、園内にあるフルーツパーラーとジューススタンドで販売している「大福ワニ」シリーズです。
ワニを模した大福にバナナやイチゴを挟み込んだ姿は、まるでワニがうれしそうにフルーツをほお張っているように見えます。
昨年の春に販売を始めたところ、土日には1日150個以上売れるほどの人気になっており、SNSの投稿にも「かわいい」「食べるのがもったいない」という反応が寄せられています。
それにしても、どうして大福でワニを作ろうと思ったのでしょうか。
「毎日ワニのことばかり考えていたせいか、和菓子屋で見かけた草大福がワニに見えたんです。友人にその話をしたら『大丈夫?疲れすぎでは?』と心配されました」
園長の神山浩子さん(43)は大福ワニ誕生の経緯をこう話します。
購入した大福を自宅に持ち帰った神山さん。
試行錯誤しながら、お弁当などに使う市販のピックをワニの目に見立て、果物をくわえさせるアイディアを思いつきました。
「バナナの向きは横。縦にすると喉に詰まらせてるみたいでかわいくない」。
調整を重ね、中学2年と小学2年の娘2人に見せたところ「めちゃくちゃかわいい」と太鼓判を押されました。
製品化に向けて協力を得ようと、地元の菓子メーカー・花月製菓に相談したところ「これはいけますよ」とすぐにお墨付きが出たそうです。
花月製菓から仕入れた俵型の大福を、園内のフルーツパーラーで加工して完成となる大福ワニ。
使用するバナナにもこだわりがあるそうです。
園内には20種類の食用バナナがあります。
「園内のバナナを使おうとした時、大福に合わせるには少し甘みが強すぎたことがあったんです。そこで園内のバナナだけでなく、市販品を含めた様々なバナナの中から、その時大福に一番合うバナナを選んでいます」とのこと。
「キャラクター商品にありがちな『見た目はかわいいけど、味はイマイチ』というのは嫌だなって。味にもこだわりたかったんです」と話します。
大福ワニシリーズは通年販売されているバナナの他、季節によって地元特産のイチゴ「紅ほっぺ」など他の果物を使ったものもあるそうです。
1958年に神山さんの祖父が開業したという熱川バナナワニ園。神山さんは4代目の園長です。
「ワニは『怖い』『危険』というイメージを持つ人が多いですが、かわいらしい一面も見てほしい」
ひなたぼっこをしながらだらりと脱力する姿が神山さんのお気に入りだそうです。
園内には、日本ではここにしかいないニシレッサーパンダやアマゾンマナティーなど、ワニ以外にも貴重な動植物がいますが、「園の名前になっているバナナとワニのインパクトが強く、あまり知られていないのが悩み」と神山さん。
近年は、SNSでの情報発信にも力を入れているそうです。
「投稿を見て思わず笑顔になったり、園やワニに興味を持つきっかけにしたりしてくれたら嬉しいです」
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