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#44 特別じゃない日

幼馴染は登録者30万人のYouTuber 劣等感ぶつけると…

漫画「スタンドバイミー」の一場面。男性は幼馴染に劣等感を抱いていて……。
漫画「スタンドバイミー」の一場面。男性は幼馴染に劣等感を抱いていて……。 出典: 稲空穂さん提供

目次

「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。SNSで発表して注目を集めた漫画「スタンドバイミー」に込めた思いを聞きました。

漫画のあらすじ

独身で実家住まいの40代男性は、経営するコンビニで毎回からんでくる老人客の相手などでストレスの多い日々を送っています。ある日老人客が店を出たとたん「帰ってきてたんかあ! 見てるぞおユーチューブ!」と大声を出したので驚いて外を見ると、バイクで旅するYouTuberとして成功している中学校の同級生・田口がコンビニに入ってきました。

「次の目的地に行くついでにさ、ちょっと寄ってみたんだ」という田口に、しらけた顔で(ついでな、ついで。まーそうだよな)と心の中でつぶやく男性。

「そんだけ知名度ありゃモテるだろ? 彼女できた?」と聞いてみると、田口は「俺のコメント欄、子どもとオッサンばっかだぜ。そっちはなんかあった?」と逆に質問してきます。

変わらない毎日を送る男性は近況を話したくないので、最近できたチェーン店や潰れた映画館の話をしてごまかそうとしますが、「お前は? 3年ぶりなんだから、なんかあんだろ」と再度聞かれてごまかしきれず「なんもねえなあ。色恋沙汰なんて皆無だし、なんならまだ実家暮らし…」とうつむき、中学時代を思い出します。

実家がコンビニになる前に経営していた駄菓子屋で店番をしている男性。同じ中学の男子生徒たちが「そんなに食うとあいつみたいに太るぞお」と小声でからかってきます。そこに現れたのは同級生の田口。

「じゃあこれ、俺が全部買うわ」と田口はレジに出されたお菓子を全部買い、いじわるな男子生徒たちを追い払います。男性の親が法事で一晩いないことを知った田口は、「コーラ飲み放題! お菓子食べ放題!」と喜んで男性の家に泊まりに来ます。

2人で店の賞味期限切れのお菓子を食べながら夜を過ごしていると、テレビで映画『スタンド・バイ・ミー』が始まりました。

男性は登場人物4人の中でリーダー格の少年を見て、「このリーダー格、田口っぽい。行動力あるとことか」とつぶやき、太った少年を見て(俺は…このデブだな。映画とかマンガの太ったキャラってこんな扱いだよなあ…バカにされたり、雑に扱われたり。現実でもそうか…)と、男子生徒たちにからかわれたことを思い出して暗い気持ちになります。

映画が終わり、エンドロールが流れる中(結局よくわからないまま終わったな。デブもダサいまんまだったし)とつまらなそうな顔で見上げると、おどろいたことに隣の田口が涙を流していました。

(そうか、こいつの目線で見ると感動する映画なのか)

「おまえ覚えてる? スタンドバイミー一緒に観たこと。お前あんときから俺と違って…」現在に戻り、自嘲気味に田口と自分の違いを語ろうとした男性に、田口は「覚えてる! 俺、あの映画大っ嫌い」と、意外にも苦々しい顔で答えました。

「は? おまえあんときスゲー感動してたじゃん」
「感動してねーよ! あの映画さあ、あんなに4人仲良かったのに成長したらみんな変わって疎遠になっちまうじゃん? 大人になったらおまえとも会えなくなるのかーって、そう思ったら、悲しかったんだよ」

田口との差にコンプレックスを抱えていた男性でしたが、田口はずっと変わらない友情を抱いていたのです。

「おまえ、あんとき泣いてたもんな」

男性はひさしぶりに田口の前で素になって笑うことができました。

作者・稲空穂さんからのメッセージ

正直なところ、「スタンドバイミー」という作品を初めて見た10代の私は、その良さの半分も分かっていなかったと思っています。

確かに心の琴線に触れる部分もなくはなかったのですが、当時の私にとっては物足りなさを感じていました。

大人になった今、当時のその感情こそが、かけがえのない毎日に気づかないまま過ごす、自分そのものだったのだと思います。

それでも10代の自分が間違っていたとは思いません。

大人になって観返すことができ、果てにはこの映画を自分の作品の中に描けた幸せを噛みしめています。
稲空穂さんのツイッターがこちら

書籍「特別じゃない日」の第1集はこちら

書籍「特別じゃない日」の第2集はこちら

書籍「特別じゃない日」の第3集はこちら

書籍「特別じゃない日」の第4集はこちら

withnewsでは原則毎月第三水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。

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